ブロックチェーン技術のヘルスケア分野への応用研究が活発になっている。ノルウェー科学技術大学の研究グループが、医療情報の専門誌『International Journal of Medical Informatics』で2020年に報告した内容によれば、特に、電子健康記録(EHR)や個人健康記録(PHR)の情報共有に向けた活用の研究が多いという。

ブロックチェーン技術の特性はヘルスケア情報の管理にも役立つ

 ブロックチェーン技術は、ビットコインに代表される暗号通貨の分野で、実用に堪える技術と認識されるようになった。同技術の要諦は、データが集中的に中央サーバーなどに蓄積されるのではなく、「ノード」と呼ばれる端末にデータが分散して管理されて、端末すべてが同じ情報を保有する点だ。このため端末一つの情報を書き換えても、他の端末と整合性が取れなければ書き換えは無効になり、データの改ざんができない。

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 これはデータの信頼性の高さにつながる。さらに、多数の端末でデータが保管されるので、データ消失の恐れがないのもポイントだ。堅固なセキュリティーを安価に実現できるのもメリットになる。こうしたブロックチェーン技術の持つ特性は、ヘルスケア情報の管理にも役立つと目されている。

 このたび研究グループは、過去に報告されたブロックチェーン関連の研究をレビュー。2016~2018年にかけて報告された研究を対象として品質評価を行った上で38の研究に絞り込み、ヘルスケア分野でのブロックチェーン技術の応用の現状や課題を分析した。ブロックチェーン技術がどのような用途で用いられようとしているのか、今後の方向性についてどのような展望が示されているのかなどを調べた。

全体の6割近くがEHRおよびPHRをターゲットに

 そこで確認されたのが、EHRおよびPHRの情報共有を改善、簡素化していく手段としてブロックチェーン技術の研究が特に盛んになっていることだ。全体の6割近くがEHRおよびPHRをターゲットとした研究で、内訳は43%がEHR、15%がPHRだったという。

 用途として典型的なのは、臨床チーム内、または臨床医と研究者の間でのデータ共有にブロックチェーン技術を応用するような研究だ。さらに、国境を越えたケアの継続性の担保、異なる医療システムでの情報共有などで研究が進んでいる。

 この他、臨床試験のシステムをターゲットにした研究も5%ほど確認された。薬剤開発においては複数の関係者間での情報共有が頻繁に行われている。情報の信頼性は生命線で、データの改ざんは致命的となる。ブロックチェーン技術は信頼性向上の手段として存在感を増す可能性はありそうだ。

 さらに、画像保管共有システム、IoTデータマネジメント、自動診断サービス、総務システムなどの分野でもブロックチェーン技術活用の研究が進められている。モバイルヘルスの領域でも利用が模索されている。センサーデータの収集、保存、共有や遠隔ケア、遠隔患者モニタリングなどで研究が広がりそうだ。

新型コロナも研究加速の後押しに?

 研究グループは、ブロックチェーン技術は「問題駆動型」「データ集約型」「労働集約型」という特徴を持つ業務の改善に有効性が高いと見る。ヘルスケア分野でも、健康問題の解決のため、多様なデータが取得され、複数の医療従事者間で共有して仕事が進められる。ここにブロックチェーン技術はぴたりとはまる側面があるようだ。

 一方で、研究グループは多くの用途において未開拓な状態にあるとも指摘している。新型コロナウイルス感染症の影響もあり、ヘルスケア分野では情報共有が一層意味を持つようになっている。ブロックチェーン技術の研究は国内外でさらに進んでいきそうだ。


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