小児期に、目的意識が高く、思考や行動、感情をうまくコントロールできていた人では、老化の速度が遅く、中年期の脳や身体が生物学的に若いとする研究結果が報告された。米ミシガン大学アナーバー校のLeah Richmond-Rakerd氏らによるこの研究論文は、「Proceedings of the National Academy of Sciences」に1月19日掲載された。

 この研究は、1972年4月から1973年3月の間に生まれた1,037人を対象にしたもの。小児期のセルフコントロール力については、対象者の3、5、7、9、11歳時に、教師や親、子ども自身の報告や、子どもに実施したテスト結果に基づき評価した。老化速度については、対象者の26、32、38、45歳時に、BMIやHbA1c、血圧、VO2MAX(最大酸素摂取量)、各種コレステロール値など19種類のバイオマーカーを測定することで評価した。さらに、45歳時には3T-MRI装置を使って、脳の老化に関連する構造的特徴を調べた。

 その結果、小児期にセルフコントロール力の高かった人では、身体能力や認知能力、脳の構造的な老化も含めた総合的な老化の速度が遅いことが明らかになった。これらの人では、歩く速度が速く、45歳時の顔は実年齢より若く見えたという。この結果は、生まれ育った家庭の社会的地位と小児のIQで調整しても変わらなかった。また、小児期にセルフコントロール力の強かった人では、健康や財政に関してより多くの実際的な知識を持ち、人生に対する満足度も高いなど、中年期以降の健康管理や経済・社会面での備えがしっかりできていることも明らかになった。

 では、小児期のセルフコントロール力の高さが、なぜ中年期の老化速度の遅さに関連するのか。Richmond-Rakerd氏らは、それには、人生に対処するためのより優れた感情制御が関係しているものと考えている。そして、「セルフコントロール力の高い人は、危機や困難をあまり経験せずに済むよう計画的に行動し、実際に危機が訪れた際にも、冷静で思慮深い対応を取ることができる」と説明している。

 今回の研究には関与していない、米ジョージメイソン大学Center for the Advancement of Well-BeingのJames Maddux氏は、「こうした結果を生み出した要因は、若者ながらに身に付けた満足遅延耐性(より大きな報酬を得るために目先の欲求をがまんできる能力)にあるのではないか」との考えを示す。そして、健康状態の悪化に寄与する行動の多く、──例えば喫煙や暴飲暴食、危険な性行為、新型コロナウイルス感染症パンデミック最中のパーティーへの参加などは、目先の欲求を遅らせることができないことの結果だと説明する。

 このほか、この研究では、小児期のセルフコントロール力が、変化しない老化速度の予測因子であるのかどうかも検討された。その結果、一部の小児では成人期にセルフコントロール力のレベルが変化したことが判明した。このことは、セルフコントロール力が介入により変えられる可能性のあることを示唆する。さらに、中年期にセルフコントロール力が高い人では、小児期のセルフコントロール力で調整しても、老化速度が遅く、中年期以降の経済・社会面や健康に対する備えができていた。

 Richmond-Rakerd氏は、この結果に重要な意味を見出す。そして、「これは、幼い頃のセルフコントロール力が十分でなかったとしても、それを養い、40〜50代になっても老化に備えていくことができる可能性があることを意味する。つまり、中年期からでも手遅れではないということだ」と説明する。

 Maddux氏もRichmond-Rakerd氏に同意を示し、「ほぼ全ての人格と同様、セルフコントロール力もDNAによって部分的に定められているとするエビデンスは存在する。その一方で、セルフコントロール力、すなわち自制心は、他のさまざまなスキルと同様、特定のスキルセットで構成されており、習得して実践することが可能であることを示したエビデンスも数多くある」と述べている。

[HealthDay News 2021年1月7日]

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