保護猫を自宅に引き取って家族の一員とすることで、自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもの分離不安を軽減し、共感性を改善できる可能性のあることが、小規模研究で示された。米ミズーリ大学Research Center for Human-Animal InteractionのGretchen Carlisle氏らによるこの研究は、「Journal of Pediatric Nursing」に2020年12月6日掲載された。

 ASDは脳機能障害で、社会的スキル、コミュニケーション能力、衝動制御などにおける問題を特徴とする。米疾病対策センター(CDC)によると、米国では54人に1人がASDと診断されているという。

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 Carlisle氏らは今回、6〜14歳のASDの子どもがいる11家族を、18週にわたり保護猫を家に迎え入れる家庭(介入群)と、猫による介入を行わない家庭(対照群)にランダムに割り付けた。その後、介入群と対照群を入れ替え、さらに18週間追跡した。

 その結果、介入を受けた家庭の親は、保護猫を迎え入れてからすぐに子どもが猫と絆を築き、その絆は介入期間が終わるまで続いたことを報告した。また、介入期間中には、子どもの共感力が向上した一方で、分離不安が軽減したほか、外在化問題行動やいじめ、多動や不注意といった問題行動が減ったことも明らかになった。研究終了後、大半の家庭は、その後も保護猫を飼い続けることにしたという。

 Carlisle氏によると、犬より猫の方がペットとして良いというわけではないが、ASDの子どもとその家族にとっては、犬より猫の方が適している可能性があるという。その理由として同氏は、「ASDの子どもは感覚過敏であることが多い。そのため、犬が目の前で吠えたりすると、圧倒されてしまう可能性がある。その点、猫は傍でただ静かにしていることが多く、感覚に与える影響は犬ほど威圧的ではない」と説明する。

 またCarlisle氏は、「ASDの子どもの親は、既に子どもの世話だけで手がいっぱいでストレスが溜まっているかもしれない」として、猫の世話の方が犬の世話よりもはるかに楽であることも理由の一つとして挙げている。

 米NYUランゴン・ヘルスのハッセンフェルド小児病院で自閉症スペクトラム障害研究および臨床プログラムのディレクターを務めるMelissa Nishawala氏は、「この研究結果は、小規模研究による予備的なものであるとはいえ、有望だ。私が実際に目にしてきたものとも一致する」と評価する。そして、「この研究は、サービスアニマルやセラピーアニマルではなく、家庭で家族として扱うペット(コンパニオンアニマル)に関するものだ。それゆえ、結果に興味を抱いた家庭が実際に試してみることは可能だ。その際は、この研究がロードマップとなってくれることだろう」と話している。

 米エール発達障害クリニックのディレクターであるJames McPartland氏も、ペットはASDの子どもの気持ちを落ち着かせ、責任感を養わせるのに役立つと話す。ただし、ペットを飼うことには大きな責任が伴う点を注意点として指摘する。同氏は、「実際にペットを飼ってみて、思っていた以上に大変だと感じる人は多い。それゆえ、保護動物を引き取る前に、自分の家庭で本当にペットの面倒をきちんと見ることができるのかをよく考える必要がある」と述べている。

[HealthDay News 2021年1月19日]

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(タイトル部のImage:Romolo Tavani -stock.adobe.com)