デジタルヘルスを発展させていく上で立ちはだかる課題は何か。挑戦していくべきポイントは、大きく5つに整理できるという。独アウグスブルク大学などの研究グループが、デジタルヘルス専門誌『frontiers in Digital Health』で2021年1月に報告した。

技術が進歩しても受容されなければ無力

 周知の通り、医療関連データのデジタル化が1990年代ころから世界的に進められ、デジタル技術の活用による医療の変革は加速した。ウエアラブル端末やIoT(モノのインターネット)などの利用で、個別化や予防はそれまでよりも容易になった。

 足下では、新型コロナウイルス感染症の拡大により、医療機関などでは感染リスクから対面診察が避けられ、オンラインの活用が進もうとしている。こうした中、研究グループは技術の進展と背中合わせに存在する5つの課題について順番に紹介している。

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 第1として、技術の進展を考えていくと同時に社会の課題解決にも取り組むことが重要だと強調する。いくら新しい技術が登場しても、それを活用するための法整備が遅れていたり、製造販売者の説明責任が明確に果たされていなかったりすれば受容されないとしている。

 つまり、社会的に受容してもらうための努力が必須というわけだ。社会に浸透して初めて効果にもつながる。新型コロナウイルス感染症の影響もあり、医療従事者や患者など幅広い人たちが等しくシステムを活用できる必要性は増している。デジタルデバイドを解消し、デジタル受容度の底上げにつながる対応が求められるとしている。

第2、第3の課題は…

 第2に、倫理の課題に取り組む必要があると指摘する。モバイルやIoTデバイスの普及で健康データを収集、保存、分析するサービスは増加傾向にある。そのため、プライバシーの保護、データ保護、インフォームドコンセントに関連した問題に配慮する必要があるというわけだ。

 ソーシャルメディアやウエアラブルでも同様だ。研究グループは、一般向けのアプリの技術が進んで、医療機器と非医療機器の境界が曖昧になり、問題の裾野も広がっていると指摘する。グローバル化により、国境に関係なくサービスは普及している。そこでの倫理的な課題にも目を向ける必要があるとする。

 第3は、患者とデバイス、医療従事者の間のつながりが高まることに伴う安全性やセキュリティーの課題だ。互いにつながることで情報はタイムリーに共有可能になり、対応は容易になる。しかし、技術が進みデジタルヘルスが普及する一方で、その内実として品質や根拠に基づく研究に欠けている場合は改善が必要だ。

 IoTデバイスなどによるデータ収集に伴って、セキュリティーやプライバシーの課題も生じる。患者の同意を得られているのかという透明性は重要だ。新型コロナ対応では行動履歴のモニター技術なども出てきている。ここでもセキュリティーやプライバシーの課題は重要になるとする。

AIや遺伝情報の活用が進む中で…

 第4として、人工知能(AI)の安全性、説明可能性、公平性の課題を挙げる。AIの活用が本当に有効で、リスクの検証が十分なのかは重要な視点だろう。もちろん安全性の担保も重要だ。

 AIモデルを構築する上で、どのようなトレーニングセットにより作られたかという説明責任も求められる。偏ったトレーニングセットでAIが作られている場合には、一般化できないシステムの公平性を高めていく必要性もある。ブラックボックスの状態からいかに信頼性を高められるかの検討が必要だ。

 第5は、遺伝情報の活用に課題があるとしている。遺伝情報は膨大で、利用の需要と供給は増えている。にもかかわらず、希少疾患やがんのような一握りの用途を除くと、日常的な医療に統合されていないと研究グループは指摘する。今後、新型コロナ関連のウイルス遺伝情報や感染を受けるヒトの遺伝情報の活用においても重要になると強調する。

(タイトル部のImage:Romolo Tavani -stock.adobe.com)