男性の乳がん患者には心疾患危険因子が多く存在し、心不全リスクも高いことを示唆する小規模な研究データが、米国心臓病学会(ACC)主催のバーチャル講座「Advancing the Cardiovascular Care of the Oncology Patient(がん患者の心血管ケアの進歩)」の中で、1月25日発表された。報告した研究者らは、患者数が少ないために不明点の多い男性乳がん関連疾患について、心臓病専門医とがん治療専門医が一致して研究を推進する必要性を指摘している。

 このデータは、米ジョージタウン大学医学部生のMichael Ibrahim氏らによって報告された。同氏らは、男性乳がん患者24人の医療記録を遡及的に解析した。解析対象患者は年齢が38~79歳で、42%がアフリカ系アメリカ人、29%が白人、4%がヒスパニック、25%がその他の人種/民族であり、半数に乳がんの家族歴があった。

 患者の大半(79%)が、乳がんでは最も一般的とされる浸潤性乳管がんで占められていた。これは、乳管に発生したがんが周囲の乳房組織に拡がった状態を指す。治療としては、対象者全員に乳房切除術が施行されており、かつ、71%にホルモン療法、16%に放射線療法、8%に分子標的療法(抗HER2薬療法)、4%にアントラサイクリン系薬による化学療法が施行されていた。

 これらの患者の88%が肥満または過体重であり、58%が高血圧で、54%が高コレステロール血症だった。また、頻脈性不整脈もしくは心拍数の異常高値が、がん治療開始時点で8%に見られ、がん治療中に13%がこれらのいずれかを新規発症した。2人の患者には心臓の駆出率低下が認められ、がん治療終了後に慢性心不全(心臓のポンプ機能低下のために全身の血液の循環が滞っている慢性状態)に移行した。

 Ibrahim氏は、「男性の乳がんはまれであるため、大規模な臨床試験が実施されていない。よって、その心疾患リスクに関するデータもほとんどない」と、この領域の研究が遅れている現状を指摘。さらに、「男性と女性の乳がんがどれほど類似しているのか、または全く異なるものなのかも良く分かっていない。男性乳がんの治療に必要な情報は、現状では女性患者から得られたデータを参照しているが、男性患者の年齢中央値は女性患者よりも高い。高齢であれば心血管系の併存疾患が多く、併存疾患が多ければ、より包括的かつ慎重なモニタリングが必要となる」と解説する。

 また、男性乳がん治療には、がん治療に伴う一般的なリスクの他に、心臓に対する毒性などの潜在的なリスクも存在する可能性があるため、心臓病専門医とがん専門医が協力して治療に関与する必要性を指摘する声もある。Ibrahim氏も、「Cardio-oncology(心臓腫瘍学)は、心臓専門医とがん専門医の緊密な協力によって成立する。最善のがん治療と、心血管系のリスク評価・治療を同時に進めなければならない。乳がんと診断された男性は、その時点で既に非常に驚き困惑しており、そこに心疾患が重なって困惑がさらに増すような負担は最小限にすべきだ」と語っている。

 なお、学会発表された研究結果は、一般に査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。

[HealthDay News 2021年1月26日]

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