光で遺伝子をコントロールする「光遺伝学(オプトジェネティクス)」と呼ばれる原理を活用して、食欲を抑制する技術が開発された。米国テキサスA&M大学の研究グループが、主要科学誌の一つ、『Nature Communications』で2021年1月に発表した。病的な肥満の治療への応用が考えられている。

電池不要の小型デバイス

 肥満の治療は、生活習慣や運動の指導がまず行われる。欧米など重度の肥満が問題となっている地域においては、改善が困難な場合に手術療法が行われることもある。食道、胃、腸という食べ物の通過するルートを人工的に変えて食事の摂取量や栄養吸収を減らすものだ。しかし、大がかりな手術となるので体への負担が大きく、回復まで時間を要してしまうことがあった。

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 今回、研究グループが開発したのは、胃に存在する神経に光を当てて、この刺激により満腹感を人工的に引き出そうというアプローチだ。冒頭の通り、光遺伝学と呼ばれるもので、この10年近く研究が活発になっている。

 研究グループがターゲットにしたのは、脳と臓器を直接つなぐ脳神経の一つ「迷走神経」。満腹感を胃から脳へと伝える働きがある。かねて迷走神経をターゲットに光で刺激する医療機器の開発が試みられたが、サイズなどが課題だった。研究グループは電池の埋め込みを不要にするなどの工夫で、小型化できないか検討を進めてきた。

 こうして生み出されたのが、ミリメートル単位に収まるほどの小型デバイスだ。直径5.5mm、薄さ1mmの円盤状のパーツから、幅0.4mm、薄さ0.1mmのひもが延びる形になっている。ひもの途中にごく小さな発光ダイオード(μLED)が挟み込まれ、ここから光が出る。円盤状の部分にラジオ波を照射すると発電できるようになっている。