11歳小児に対する、肺の内部を生理食塩水で洗浄する処置「全肺洗浄」の安全性を、3Dプリンターを用いて検証する。そんな研究がこのたび報告された。米国ミネソタ大学などの研究グループが、医療機器の専門誌『Journal of Medical Systems』で2021年1月に発表した。

事前シミュレーションのメリットは3点

 研究の対象となった11歳小児は、遺伝子異常による酵素欠損から起こるニーマン・ピック病B型と肺胞蛋白症という肺の病気をかかえていた。この病気では、造血幹細胞移植が行われ、その前に肺機能を改善させる「全肺洗浄」と呼ばれる、肺の内部を生理食塩水で洗浄する処置が行われる。

イメージ画像(出所:Getty Images)

 全肺洗浄では、片方の肺の内部に生理食塩水を出し入れしつつ、もう片方の肺ではガス交換を続ける処置を行う。このために左右の肺を隔離するための「ダブルルーメン気管内挿入チューブ」と呼ばれる人工的な医療機器を挿入することになる。左右の肺が隔離できなければ、呼吸困難となってしまう。

 小児の気道の内部はサイズが小さく、チューブを安全に挿入した上で、左右の肺を確実に隔離するのは難易度が高い処置になる。そこで、この処置を安全に行えるのかを3Dプリンターを用いて事前に確かめることにした。

 研究グループは、本人の胸部を撮影した画像データから3Dプリンターでモデルを作成。モデルを使ったシミュレーションで検証した上で、処置を行った。研究グループによると、こうした事前のシミュレーションを行うメリットは3点あるとする。処置を行うスタッフの心理的な負担を軽減すること、気道損傷のリスクを低減すること、気道確保できずに手術中止となるリスクも減らせること、である。