脳の損傷した部分を3Dプリンター作製の人工材料で埋め、脳の神経ネットワーク回復を促す新たな技術が開発された。中国の徐州医科大学、米国ネブラスカ大学の研究グループが、医科材料工学の専門誌『ACS Biomaterials Science & Engineering』で2021年2月に発表した。

水分を豊富に含むハイドロゲルを使った神経細胞の足場を作製

 脳卒中や外傷などにより脳にダメージが加わり、脳の機能が損なわれることがある。神経細胞のネットワークは一度破壊されると回復は難しい。この場合、脳内部では細胞死が急速に進み、神経細胞の足場である「細胞外マトリックス」が分解。脳病変部に空洞が形成される。結果、神経学的な障害が長期化および永続する。

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 脳の損傷に対しては、再生医療の適用が有望視されている。神経幹細胞や神経前駆細胞と呼ばれる、神経へと分化可能な細胞を活用するものだ。重要なのは、移植した細胞が脳の損傷部であらためて神経細胞のネットワークを作り直すこと。特に脳損傷が起こりやすい脳表面の大脳皮質では高度なネットワークが重要になる。その上で、再生した神経細胞のネットワークを損傷を受けていない脳のネットワークに統合していく必要がある。

 このたび研究グループは、3Dプリンターによって水分を豊富に含むハイドロゲルを使った神経細胞の足場を作製した。素材の内部には、神経幹細胞がネットワークを作るための微小な通り道「マイクロチャネル」が存在している。この生体材料に神経幹細胞を配置して、脳の神経ネットワーク回復が可能かを検証した。

神経幹細胞のネットワークを確認

 その結果、3Dプリンターで作られた人工の生体材料の内部で、神経幹細胞が神経のネットワークを形成することを確認したという。ハイドロゲルの足場の内部にあるマイクロチャネルに神経細胞が配列され、神経細胞から突起が伸びてネットワークが形作られることを確認した。

 現在はまだ、基礎研究の段階だが、この生体材料を脳の損傷部に移植することで、損傷後の脳組織再生のために使える可能性があるとしている。

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