移植のための人工臓器を3Dプリンターで作り出す研究開発が進んでいる。このたび実際の人に近い微細な気道を印刷によって作成することに、スウェーデンのルンド大学などの国際研究グループが成功した。材料科学の専門誌『Advanced Materials』で2021年1月に発表した。

肺移植のための人工肺を作り出す

 論文によると、肺が機能不全を起こしてしまう慢性肺疾患は、世界の死因の3位となるが、重症化すると治療の選択肢が限られ、最終的には肺移植に頼るしかない。移植には肺のドナーを確保する必要があるが、ドナーの不足により治療ができないケースも少なくない。

イメージ画像(出所:Getty Images)
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 このたびルンド大学の研究グループは、移植肺の代替になる人工的な肺の作成を目指して、3Dプリンターによる人工的な気道の開発を進めた。気道は細かい構造になっており、血管も入り組むので、印刷で作るのはハードルの高い臓器だ。研究グループが考えたのは、気道の大元になる幹細胞をインクに混ぜて、そのまま印刷するプロセス。幹細胞が印刷された足場で成熟して、微小な構造も人工的に作成可能と想定した。

 課題は、通常のインクでは細胞を含めた印刷は難しいこと。そこで、海藻に含まれている天然のポリマーであるアルギン酸と、肺の組織の周囲にある「組織外マトリックス」を組み合わせるバイオインクを作り出した。

細胞を含んだまま印刷できる

 新たに作り出したバイオインクと3Dプリンターの組み合わせによって、そのまま気道を印刷により作り出すことが可能となった。印刷後にバイオインクで作られた足場の中で細胞が成熟し、適度な弾力性も手伝って組織の成熟に適切であると考えられた。印刷では複数のタイプの細胞を使うのではなく幹細胞だけを使うので、印刷のノズルを単純化できたという。

 今後は、単純な気道だけではなく、ガス交換の場となる肺胞も作り出す計画。さらに印刷の解像度を高める必要があるという。将来的には移植可能なより大きな組織の作成につなげたい考えだ。


(タイトル部のImage:Romolo Tavani -stock.adobe.com)