米食品医薬品局(FDA)は6月7日、迅速承認制度により、アルツハイマー病の治療薬Aduhelm(一般名アデュカヌマブ)を承認したことを発表した。迅速承認制度とは、重篤な、あるいは生命に関わる疾患に用いる新薬を対象とした制度で、臨床的ベネフィットが予測できるような代替評価項目に基づき承認が与えられる。承認後は、臨床試験を実施してその実際の効果を確認する必要がある。

 ただし、FDAの独立諮問委員会では、アデュカヌマブの承認に対して全会一致の賛同は得られなかったという。このことを踏まえてFDAは、アデュカヌマブの製造元である米Biogen社に対して、承認後にランダム化臨床試験を実施して、期待される臨床的ベネフィットを明確にすることを求めている。万一、そのベネフィットが確認できなかった場合には、FDAは今回の迅速承認を取り下げることができる。

 米国のアルツハイマー病患者数は、現在600万人を超えており、人口の高齢化に伴い、患者数は今後増加することが見込まれている。アルツハイマー病の原因は完全には解明されていないが、アルツハイマー病では、タンパク質の一種であるアミロイドβのプラーク形成(老人斑)、過剰にリン酸化されたタウタンパク質が凝集した神経原線維変化、神経細胞死(脳萎縮)などの特徴的な変化が脳に生じる。このような変化が、人の記憶力と思考力に影響を与えていると考えられている。

 アデュカヌマブは、2003年以来18年ぶりにアルツハイマー病に対して承認された治療薬である。また、脳内のアミロイドβを標的にした最初の治療薬であり、アミロイドβの除去によりアルツハイマー病の進行を防ぐことが期待されている。

 同薬の有効性は、アミロイドβプラークと、軽度認知障害または軽度認知症が確認されたアルツハイマー病患者を対象とした2件の第3相プラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験の結果で評価された。また、同薬の効果については、アミロイドβプラークと、認知症の発症前段階または軽度認知症のアルツハイマー病患者を対象にした1件のプラセボ対照二重盲検ランダム化用量設定試験の結果で評価された。これらの試験では、アデュカヌマブ投与群において、用量依存的かつ投与期間依存的に、アミロイドβプラークの有意な減少(59~71%)が認められたのに対して、対照群では、プラークの減少は確認されなかった。

 アデュカヌマブの添付文書には、アミロイド関連画像異常(ARIA)に関する警告が含まれている。ARIAは通常、脳領域の一時的な腫れとしてMRI画像上で認められる異常で、時間の経過とともに解消して症状が現れることはない。ただし、人によっては、頭痛、錯乱、めまい、視力の変化、または吐き気などの症状が現れる。添付文書には、血管浮腫や蕁麻疹などの過敏症のリスクに関する警告も含まれている。アデュカヌマブで最もよく生じる副作用は、ARIA、頭痛、転倒、下痢、および錯乱/せん妄/精神変容/見当識障害である。

 FDA医薬品評価研究センター長のPatrizia Cavazzoni氏は、「アルツハイマー病に対して現在利用可能な治療法は、症状を治療するだけだ。アデュカヌマブは、アルツハイマー病の根底にある疾患プロセスを標的とし、影響を与えることのできる初めての治療薬である。がんとの闘いから学んだように、迅速承認制度は、より多くの研究と革新を促進しながら、患者に優れた治療法をより迅速に提供することができる」と述べている。

[HealthDay News 2021年6月7日]

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