カナダ・アルバータ州カムローズ市で32年間現職の市長を務めているNorman Mayerさん(86歳)は、2015年後半の一過性脳虚血発作(TIA)の発症後に、不整脈の一種である心房細動を検出するために、植込み型心電図記録計(ICM)を胸に植え込む手術を受けた。Mayerさんは、「ICMが自分の体内にあるという実感はなく、日々の暮らしの中で煩わしさを感じたことはない」と話す。それどころか、ICMのおかげで、以前よりも、医師たちによるMayerさんの心臓モニタリングの精度が上がり、心臓の状態に合わせて脳卒中の再発予防用の薬剤を調節することが可能になったという。このようなICMの有効性を検証した2件の臨床試験の結果が、「JAMA」に6月1日発表された。Mayerさんはそのうちの1件の参加者だ。

 脳卒中患者では通常、トランプのカードとほぼ同じサイズの携帯型モニター(体外式ループレコーダー)で30日間、心臓のモニタリングが行われる。体外式ループレコーダーでは、心臓のリズムを記録するモニターに接続された電極を胸に貼る必要がある。しかし、今回の2件の臨床試験のうちの1件を率いた、アルバータ大学(カナダ)のBrian Buck氏は、「1カ月間のモニタリング期間は、心房細動の検出には短すぎる。また、モニタリング中は常に体外式ループレコーダーを携帯しなければならず、運動や仕事にも大いに支障をきたすなど、患者は大きな負担を強いられる」という。

 このような状況の中、2つの研究グループが、心臓のリズムを最長で3年間モニタリングできるICMを用いることで、モニタリングの精度が向上するかどうかを臨床試験で検証した。

 1件目の研究は、Buck氏らが過去6カ月の間に脳卒中を発症した300人の患者(年齢中央値64.1歳、女性40.3%)を対象に実施したもの。12カ月間に及ぶ追跡期間中に2分以上続く心房細動またはほぼ確実な心房細動が検出された患者の割合は、体外式ループレコーダー使用患者で4.7%(7/150人)、ICM使用患者では15.3%(23/150人)であり、両群間には統計的な有意差が認められた。

 2件目の研究は、米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部のRichard Bernstein氏らが、492人(平均年齢67.1±9.4歳、女性37.6%)の脳卒中患者を対象に実施したもの。12カ月にわたる追跡期間中に心房細動が検出された患者の割合は、体外式ループレコーダー使用患者で1.8%であったのに対して、ICM使用患者で12.1%と有意に高かった。

 米疾病対策センター(CDC)によると、心房細動は脳卒中リスクを4~5倍に高める一方で、心房細動を原因とする脳卒中の割合は全体の7分の1以上を占める。心房細動により心臓のリズムが乱れると、血液の流れがよどんで心房の中に血栓ができやすくなる。その血栓が脳に運ばれると脳卒中の発症につながる。ただし、米ミシガン大学神経学分野のDawn Kleindorfer氏によると、「抗凝固薬で心房細動を治療すれば、脳卒中リスクを約80%低下させることができる」という。

 問題は、心房細動がいつ生じるかを予測できないことだ。Buck氏は、「心臓のリズムに異常が生じるのは1カ月間に数分間だけで、その後数カ月間は何も起こらず、その後また数時間だけ続いた後に消失するというケースもある」と説明する。

 Kleindorfer氏は、ICMの課題として保険やコストの問題を指摘しながらも、「体外式ループレコーダーと比べてICMの方がより多くの心房細動を検出できることは明らかだ」と話す。また、今回発表されたいずれの臨床試験でも、ICMの使用による脳卒中の予防効果が確認されていないことに言及し、今後さらなる研究で検証する必要があるとの見解を示している。

[HealthDay News 2021年6月9日]

Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.

(タイトル部のImage:Romolo Tavani -stock.adobe.com)