たとえ80歳代の高齢者でも、認知活動を活発に行うことで、アルツハイマー病の発症を最長5年遅らせることができる可能性のあることが、新たな研究で報告された。米ラッシュ大学医療センター神経科学部門教授のRobert Wilson氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に7月14日掲載された。

 この研究は、研究開始時点に認知症を発症していなかった1,903人(平均年齢80歳)を対象に、活発な認知活動とアルツハイマー病発症との関連を検討したもの。対象者は研究登録時に、読書やボードゲームなど7種類の認知活動を行う頻度を5段階で評価するとともに、小児期と若年成人期、中年期の認知活動に関する質問票についても回答した。その後は、年に1回、認知症の臨床検査が行われた。また、死亡者については、死後の脳の神経病理学的検査により、アルツハイマー病やその他の認知症のマーカー(アミロイドβやタウタンパク質の沈着など)と試験開始時の認知活動との関連を検討した。認知活動については、週に数回行っている場合を「認知活動を活発に行っている」、年に数回しか行っていない場合を「認知活動をあまり行っていない」とした。

 平均6.8年間に及ぶ追跡期間中に457人がアルツハイマー病の診断を受けた。診断時の平均年齢は88.6歳(64.1〜106.5歳)だった。解析の結果、アルツハイマー病発症時の平均年齢は、認知活動を最も活発に行っていた人では93.6歳であったのに対して、認知活動をあまり行っていなかった人では88.6歳であり、認知活動レベルの高さがアルツハイマー病の発症年齢の遅さと関連することが明らかになった。この結果は、アルツハイマー病の発症リスクに影響を与える可能性がある、教育レベルや性別などの因子を調整した後でも変わらなかった。

 さらにWilson氏らは、低い認知活動がアルツハイマー病やその他の認知症の初期兆候である可能性があるのか否かを調べるために、研究期間中に死亡した695人の脳を観察した。その結果、認知活動とアルツハイマー病やその他の認知症の脳内のマーカーとの関連は認められなかった。

 Wilson氏は、「この結果は、因果関係を証明するものではない。しかし、認知機能を刺激する活動を頻繁に行うことで、アルツハイマー病の発症年齢を遅らせることができる可能性があることを示唆している。たとえ80歳代からでも、読書やパズル、ゲームなどの手軽に楽しめる認知活動を始めることで、このようなベネフィットが得られるかもしれない」と述べている。

 この研究には関与していない、米マウント・サイナイ・アルツハイマー病研究センターの副所長であるSam Gandy氏は、「ライフスタイルを変えることは、アルツハイマー病の発症予防に有効な手段の1つであると考えられている。この研究結果は、この点についての新たなエビデンスとなるものだ」と話す。その上で、「この研究で得られた知見は、何十年にもわたる基礎科学の流れに見事に沿うだけではない。医師が、患者や一般の人々に“処方箋”として提供できる認知活動の具体例となり得る」と述べている。Wilson氏も、「脳の健康を促進するようにライフスタイルを変えることは、アルツハイマー病の発症リスクに多大な影響を与える可能性がある」と付け加えている。

[HealthDay News 2021年7月15日]

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