もし目の前で誰かが心停止の状態に陥ったとしても、近くに自動体外式除細動器(AED)があれば命を救える確率が高まる。そのAEDをいち早く入手する方法として、ドローンを活用できる可能性があることが、スウェーデンで実施された予備的研究で示された。カロリンスカ大学病院(スウェーデン)のSofia Schierbeck氏らによるこの研究結果は、欧州心臓病学会(ESC 2021、8月27~30日、オンライン開催)で発表され、「European Heart Journal」に8月26日掲載された。

 心停止では、心臓の正常なリズムが突然停止し、血液や酸素が全身に運ばれなくなる。心停止が起こると数秒以内に意識を失い、近くに居合わせた人(バイスタンダー)が救急隊員の到着まで胸骨圧迫を行ったりAEDを使用したりしない限り、数分以内に死に至る可能性がある。

 AEDは、心臓にショックを与えて正常なリズムに戻すために病院で使われている除細動器を持ち運び可能にしたもので、自動で患者の心臓リズムの解析を行う。AEDは学校や空港、スポーツ施設、店やオフィスビルなどの公共施設に設置されていることが多いが、Schierbeck氏によると、ほとんどの心停止は家庭で発生しているという。

 そこで、Schierbeck氏らが着目したのがドローンの活用だ。今回の研究では、AEDを搭載した3機のドローンを用意し、スウェーデンの約8万人の住民をカバーする地域医療システムで、救急サービスに心停止が疑われる報告があった場合には、救急車に加えて可能な範囲でドローンも出動させた。

 研究開始後3カ月間で、心停止が疑われる患者のための救急要請が53件あった。このうち12件では救急車に加えてドローンも出動した。それ以外のケースでは、雨や強風などの悪天候や暗闇のため、あるいは高層ビルの近くなど飛行禁止空域であったことなどを理由に、ドローンを出動させることができなかった。ドローンを出動させることができた12件のうちの11件(92%)で、ドローンが現場に無事に到着していた。また、出動したドローンの64%は、救急車よりも早く現場に到着しており、その時間差は1分52秒だった。

 Schierbeck氏は、ESCのプレスリリースの中で、天候などのロジスティクス面での問題がドローンの活用を妨げることになった点を認めた上で、「2022年までには暗闇や雨の中でも飛行可能なドローンが製品化されるだろう。バッテリーの持続時間が延びれば飛行範囲も広がり、ドローン1機でカバーできる住民の数も増えるはずだ」と述べている。

 この研究には関与していない、米国心臓病学会(ACC)ヘルスケア・イノベーション委員会の委員であるJennifer Silva氏は、「この研究では、ドローンによりAEDを運べることが示されたが、それが心停止患者の予後に影響するのかどうかは不明である」と指摘している。

 一方、パリ大学(フランス)のNicole Karam氏らは、付随論評の中で別の問題を指摘している。それは、この研究では、ドローンで運ばれたAEDが実際に使用されたケースがなかったという問題だ。この点を踏まえて同氏は、「われわれは、バイスタンダーがAEDを使用できるようにするための教育にも取り組む必要がある」と主張している。

 Silva氏も、今回の研究でAEDが到着した後に何が起こるかという重要な問題については検討されていないことに同意を示し、「“救命の連鎖”には、人々がAEDを使えるようになることが欠かせない」と話している。

[HealthDay News 2021年8月30日]

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