元海兵隊員のClaudia Mitchellさんは、バナナやミネラルウォーターのボトルを押し潰すことなく左手に持ち、そのボトルの蓋を開けることができる。また、パイ用の桃を左手で押さえながら切ることもできる。誰かの手を握る時も、過度に握りしめるようなことはない。化粧ポーチを親指と人差し指でつまむこともできる。

 2004年5月にバイク事故で腕を失い、それ以来、義手を使用しているMitchellさんは、このように手を動かせる日が来るとは思っていなかった。Mitchellさんは2006年以降、米クリーブランド・クリニックのPaul Marasco氏らの研究に関わってきた。同氏らは、Mitchellさんの義手の性能を高めるために、新たな技術を取り入れるなど、定期的に改良を重ねてきた。今回の研究では、最先端の技術を使って、Mitchellさんの義手を本物の手のように思い通りに動かせ、感じることができるものに変えた。

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 数々のセンサーとロボットモーターが使われたMitchellさんのバイオニックアーム(筋電義手)からは、何かを、どの程度の強さで、どの指を使って掴んでいるのか、どの程度の速さで義手を動かしているのか、といった情報のフィードバックが得られる。そのため、Mitchellさんは義手を見なくても、こうしたことを把握できる。このバイオニックアームに関するMarasco氏らの論文は、「Science Robotics」9月1日号に掲載された。

 Mitchellさんは、「どんなに義手が素晴らしいものであっても、目で確認しないと義手の動きを意識できないのであれば、何らかの機能が失われていることに変わりはない」と指摘する。そして、「クリーブランド・クリニックの研究グループは、以前の義手では得ることのできなかったフィードバックを再び得られるようにしてくれた。それにより、義手はただの腕に取り付けられた機械ではなく、体の一部になった」と話す。

 Marasco氏によると、Mitchellさんのバイオニックアームには、長年の研究者らの取り組みによって進歩した技術を組み合わせたシステムが搭載されている。これは残存する腕の神経につないだインターフェースを使用し、3つの運動と感覚の機能(直感的な運動コントロール、触って掴むときの運動感覚、手の開閉感覚)を同時に働かせることのできる初の義手システムだという。

 この義手の持ち主は、それを使いたいとき、あるいは動かしたいときに、脳からの神経インパルスを義手に伝達することができる。また、義手が何かに触れたときには、神経を介してその情報が脳に伝達される。

 バイオニックアームと脳の間で相互に交わされる情報の伝達は、切断面の筋肉と皮膚の神経を介して行われる。これらの神経は、Mitchellさんが事故で腕を失った後も生き残っていたものだ。「これらの神経は皮膚や筋肉へと伸びていき、再び接続が確立される」とMarasco氏は説明する。

 バイオニックアームを動かそうとするときには、筋肉がさまざまな形でわずかに振動する。この振動をバイオニックアームに搭載されたセンサーが検出して動きに変換する。また、皮膚に接している部分には複数のロボットモーターがあり、これらのモーターの動きや振動によって、脳内で何かを触ったり動かしたりしたときの感覚が作り出されるのだという。

 Marasco氏は、「過去20年間に成し遂げられた義手の技術の向上は、義手を必要とする人々がより良い身体機能を獲得して自立した生活を送る助けとなった。そのような技術の向上が、Mitchellさんのバイオニックアームの開発につながった」と話している。

[HealthDay News 2021年9月3日]

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(タイトル部のImage:Romolo Tavani -stock.adobe.com)