脳卒中の発症後に手や腕の機能を取り戻すためのリハビリテーション(以下、リハビリ)を集中的に行うのに最適な時期は、発症から60〜90日後であるとする第2相ランダム化比較試験の結果が報告された。この研究では、発症から30日未満で行うリハビリにも多少のベネフィットはあるが、6カ月以上を経た後では遅すぎる可能性があることも判明したという。米ジョージタウン大学メディカルセンター、リハビリテーション医学・神経学分野のElissa Newport氏らによるこの研究の詳細は、「PNAS」9月28日号に掲載された。

 米国では、毎年75万人が脳卒中を発症する。脳卒中患者のほぼ3分の2では、手と腕の機能が完全に回復せず、日常生活動作が大きく制限される可能性があるという。

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 Newport氏らの研究は、脳卒中の発症後3週間以内に試験に登録された72人の患者を対象にしたもの。対象者は、通常のリハビリ療法のみを受ける群(対照群、19人)と、脳卒中発症後に3種類のタイミングで、通常のリハビリ療法に加えて、対象者が選択した課題特異的な運動療法を20時間追加で行う群にランダムに割り付けられた。3種類のタイミングとは、脳卒中発症から30日後(急性期群、16人)、60〜90日後(亜急性期群、17人)、または6カ月以降(慢性期群、20人)である。対象者の腕の機能障害をAction Research Arm Test(ARAT)で最大5回評価し、急性期群、亜急性期群、慢性期群における1年間での回復の程度を対照群と比較した。

 その結果、亜急性期群と急性期群では対照群に比べて、1年後までに腕の運動機能が有意に改善していることが明らかになった。対照群とのARATスコア差は、亜急性期群で+6.87±2.63点(P=0.009)、急性期群で+5.25±2.59点(P=0.043)だった。研究チームによると、こうした改善は、対象者自身も自覚するほど大きかったという。これに対して、慢性期群と対照群との間には、ARATスコアに有意差は認められなかった。

 Newport氏は、「この結果は、脳卒中患者には、発症から60〜90日後の時点で、現行のリハビリよりも集中的な運動リハビリを行うべきことを示唆するものだ」と主張する。また同氏は、「発達段階にある若年者の脳は、他の年齢期の脳に比べて可塑性が高いことは周知の事実だ。それと同じように、脳卒中患者では、脳卒中発症後の特定の時期に神経の可塑性が高まるのかもしれない」との見方を示している。

 米ウィスコンシン大学マディソン校のキネシオロジーおよび内科学教授であるDorothy Edwards氏は、ジョージタウン大学のニュースリリースの中で、「われわれの取った手法から、脳卒中患者は、自分で選んだ運動療法の内容であれば、従来よりも強度の高いトレーニングに耐えられる可能性のあることが明らかになった。回復にとって重要な時期というものがあるかもしれないことを踏まえれば、回復についての理解を深め、それを促すためのテクニックは他にもいろいろと考えられるだろう」と話している。

 Newport氏らは今後、大規模な臨床試験を実施してこの結果を検証し、最適なリハビリの量を見極めていく予定だとしている。

[HealthDay News 2021年9月21日]

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