高齢者では、体重変化が少ないことが、ベースライン時のBMIにかかわりなく、認知機能の維持にとって有利である可能性を示唆するデータが報告された。米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のMichal Schnaider Beeri氏らの研究によるもので、「Alzheimer's & Dementia」に1月20日掲載された。

 中年期のBMIの高さが、高齢期に入ってからの認知機能の低下リスクと関連があることは、複数の研究結果として示されている。しかし、高齢期のBMIと認知機能の関連については、中年期と同様の関連を示した研究もあるが、BMIと認知機能は関連がないとする研究や、BMI低値の場合、またはBMIが経年的に低下した場合には、認知機能低下リスクがむしろ高いとする研究報告もある。そこでBeeri氏らは、高齢期に入ってからの体重変化と認知機能低下との関連を検討する研究を行った。

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 この研究には、米国立加齢研究所(NIA)の資金提供により、同国内のアルツハイマー病センターで登録が行われているレジストリデータが用いられた。解析対象者は、ベースライン時に60歳以上であり認知症と診断されていなかった1万5,977人。ベースライン時の平均年齢は73.5±7.6歳、女性59.2%、BMI27.2±5.0、認知機能を表すMMSEスコア(30点満点で23点以下は認知症が疑われる)は28.4±2.0で、15.8%は軽度認知障害(MCI)に該当していた。

 平均5.2±3.1年の追跡で、神経心理学的検査で評価した包括的認知機能は、平均0.16点低下していた。ところが、ベースライン時のBMIに比べて追跡終了時のBMIが5%以上増加した群では0.26点とより大きく低下し、またBMIが5%以上低下した群でも0.27点低下していた。

 BMIの変化が5%未満の群に比較して、BMIが5%以上増加した群は62%、BMIが5%以上低下した群は64%速いスピードで、認知機能が低下していたと計算された。また、追跡期間中のBMIの最大値と最小値の差で検討した結果も同様に、変化が大きい群では認知機能の低下幅が大きかった。

 既知のリスク因子〔年齢、性別、人種/民族、教育歴、糖尿病、アルツハイマー病のリスクに関連する遺伝子(ApoE4)、処方薬数(併存疾患数)など〕を調整後も、BMIの変化が大きい群ほど認知機能低下速度が速いという有意な関連が保たれていた。また、ベースライン時のBMIで層別化して解析した結果も同様だった。

 これらのデータを基にBeeri氏は、「高齢になってからはBMIが安定していることが、認知機能に対して保護的に働く可能性がある。高齢者のBMIを毎年評価することで、認知機能低下の高リスク者を抽出し、早期介入に結び付けられるのではないか」と述べている。また同氏は、「今後はBMIの変化が、どのように脳の健康に影響を及ぼすのかを明らかにする必要がある」としている。

 この研究報告に関連して、米ラッシュ・アルツハイマー病センターのAna Capuano氏は、「死後の解剖所見で認められる脳のアミロイド斑の沈着も、生前のBMIの不安定性と関係していることが示唆されている」と述べている。アミロイド斑は認知症の最も一般的なタイプである、アルツハイマー病で特徴的な所見だ。

 「このような脳の病理的な変化が、どの段階からスタートするのかは不明だ。しかし、それがかなり長いプロセスであることは分かっている。経年的なBMIの変化が認められる場合、医師はその人の認知機能を評価し、生活習慣の改善を促すべきかもしれない」とCapuano氏は述べている。また同氏は認知機能低下を抑制する生活習慣として、「健康的な食事を取り、運動を継続することは、脳を含む全身にとって良いことだ」とも語っている。

[HealthDay News 2022年1月25日]

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