ネアンデルタール人と現代人(新人、ホモ・サピエンス)の背骨の形状の比較から、腰痛の原因は生活習慣にあるとする研究結果が報告された。産業革命以前の現代人の背骨はネアンデルタール人に似ていたが、産業革命以後に人々の生活習慣が大きく変わった影響で背骨の形状が変化し、21世紀を生きる我々に腰痛を引き起こしている可能性があるとのことだ。米ニューヨーク大学(NYU)のScott Williams氏らの研究によるもので、詳細は「PNAS Nexus」3月号に掲載された。

 Williams氏らはこの研究で、背骨を構成している椎体の形状の変化に着目した。その解析結果から同氏は、「人類の椎体の形状は長い歴史とともに徐々に変化してきた。しかし、19世紀後半に工業化が加速した後、現在暮らす人々の椎体の形状に近づく急な変化が起きたようだ。この変化が、腰痛を含む筋骨格系のトラブルの増加に関係しているのではないか」と推察している。

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 現代人の椎体の形状は、旧人類であるネアンデルタール人とは大きく異なると考えられている。しかしWilliams氏によると、その知見は19世紀後半以後の現代人の骨格との対比研究から得られたものであり、歴史的な見方をすれば、椎体の形状は最近になって変化したと言える可能性があるという。そこで同氏らは、米国自然史博物館など複数の博物館や研究施設に収蔵されている、世界各地から集められた、産業革命以前の現代人も含めて椎体の形状を詳細に計測し、それをネアンデルタール人の椎体と比較するという研究を行った。

 検討の対象とした標本数は、産業革命以後の現代人の椎体が254(男性と女性が127ずつ)、産業革命以前の現代人の椎体が78(女性31、男性47)。それら現代人の標本は全て成人のもので、北米、南米、アフリカ、アジア太平洋地域など、多数の地域から収集されていた。

 一方、ネアンデルタール人の標本は、イラクのシャニダール洞窟とイスラエルのケバラ洞窟で発見された2体の完全な状態の骨格に加え、部分的な状態で発見された骨格を加えた計25の椎体を解析対象とした。なお、完全な状態で発見されたネアンデルタール人は、2体とも男性と推定されるという。

 椎体の形状は、腰椎にあたるL1~L5という部分の椎体のくさび角度の合計(ΣWA)と、下関節突起の角度の合計(ΣAP)という二つの指標で評価。その結果、現代人に関しては、ΣWAは産業革命前の男性、同女性、産業革命以後の男性、同女性の順に小さくなるという差異が認められた。反対にΣAPは、前記の順に大きくなるという差異が認められた。

 ネアンデルタール人のΣWAとΣAPの値はいずれも、産業革命以前の男性の95%信頼区間内にあり、有意差がなかった(ΣWAはP=0.128、ΣAPはP=0.266)。また、産業革命以後の女性を除く現代人3群の分布の範囲内に収まっていた。つまり、ネアンデルタール人の椎体は、産業革命以降の現代人とはやや異なるものの、産業革命以前の現代人には近い形状であることが分かった。このような傾向は、現代人の居住地域にかかわりなく認められた。

 Williams氏は、「これまでの研究からは、腰痛の発生率が高いのは都市部の住民であり、特に前傾姿勢で腰掛けるといった姿勢がリスク因子であると報告されている」と解説。「工業化に伴う生活習慣の変化の中でも、とりわけ身体活動レベルの低下や姿勢の悪化などによって時間の経過とともに、椎体が腰痛などを起こしやすい形状に変化したのではないか」との考察を加えている。

[HealthDay News 2022年3月8日]

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写真:ネアンデルタール人(下)と産業革命以後の現代人の腰椎。Photo Credit: S. Willliams/NYU

(タイトル部のImage:Romolo Tavani -stock.adobe.com)