膵臓がんの早期発見の鍵が便の中に隠されていることが、ハイデルベルク大学病院(ドイツ)のEce Kartal氏らの研究で示唆された。この研究では、糞便検体から検出された複数の種類の微生物が膵臓がんに強く関連していることを確認。糞便の検査によって発見が難しい膵臓がんの発症リスクの高さを予測できる可能性が示された。この研究結果は、「Gut」に3月8日発表された。

 Kartal氏らは、136人のスペイン人から採取した唾液と糞便の検体を用いて、細菌叢の機能を調べるショットガンメタゲノム解析と、菌種を推定する16S rRNA解析を行った。136人のうち57人には膵管腺がん(PDAC)、29人には慢性膵炎があり、残りの50人は健康な人であった。

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 その結果、糞便検体から、PDAC患者に特徴的な27種類の微生物が特定され、これらの微生物パネルを用いることによって84%の精度でPDAC患者を検出できることが示された。このパネルに、PDAC進行のモニタリングに使用されている腫瘍マーカーである糖鎖抗原19-9(CA19-9)を組み合わせると、PDACの検出精度は94%まで上昇した。

 さらに、この微生物パネルを、44人のPDAC患者と32人の非PDAC患者で構成された76人のドイツ人の集団で検証するとともに、5,792人分の検体に基づく25件の研究から得られた公表データを用いた検証も行った。これらの検証においても、この微生物パネルが正確にPDACを検出する方法となり得ることが確認された。

 ただしKartal氏は、「慢性膵炎や2型糖尿病などのPDACのリスク因子を有する集団や、肝臓病や他の種類のがんなどが関連する症状を呈する集団などでは、われわれのモデルによってPDACを誤りなく予測することはできない」としている。

 米国がん協会(ACS)によると、膵臓がんはがんの中では比較的まれで、全てのがんに占める割合は約3%である。また、そのほとんど(約95%)をPDACが占めている。非営利団体PanCAN(Pancreatic Cancer Action Network)のチーフ・サイエンス・オフィサーを務めるLynn Matrisian氏は、「現時点では、膵臓がんを早期発見する手立てはない。そのため、多くはがんが進行してから初めて発見され、そのときには治療選択肢が限られてしまっていて、生存率も低い。膵臓がん患者には時間的な余裕はないため、膵臓がんを発見するための新規で優れた方法につながる革新的な研究は、どのようなものでもわれわれに勇気を与えてくれる」と期待を示す。

 一方、Kartal氏は、「糞便検査による膵臓がん検診の実現に向け第一歩となる結果ではあるが、確固たる検診あるいは診断の方法に結び付けるには、さらなる検討が必要」と述べる。また、この方法の利点として、非侵襲的かつ迅速に行うことができ、費用も比較的低く抑えられることを挙げている。

 ACSのチーフ・メディカル・アンド・サイエンティフィック・オフィサーであるWilliam Cance氏は、今回の報告について、「極めて革新的な知見だ。また、膵臓がんの早期診断の実現への希望を与えてくれる研究結果だ」と評価する。

 一方、Kartal氏らの研究に関する付随論評の執筆者の一人で、米フロリダ大学のChristian Jobin氏は、「膵臓がんを発見するための強力なツールを生み出すには、この微生物パネルに他の方法を組み合わせる必要がある」と話している。

[HealthDay News 2022年3月9日]

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