人工知能(AI)を用いた新たなアプローチによって、心疾患患者が心臓突然死に至る可能性とその時期を医師よりもはるかに正確に予測できることを示した研究結果がこのほど明らかになった。開発者である米ジョンズ・ホプキンス大学のNatalia Trayanova氏らは、「このアプローチは、心疾患患者の生存率の向上につながり得る」としている。研究の詳細は、「Nature Cardiovascular Research」4月7日号に発表された。

 Trayanova氏によると、世界の全死亡例の20%を不整脈による心臓突然死が占めている。しかし、なぜ心臓突然死が起こるのか、また、どんな人でそのリスクが高いのかについては、ほとんど解明されていないという。同氏は、「そのため、心臓突然死のリスクが低い患者に対して不要かもしれない除細動器による心肺蘇生が施される一方、リスクが高いにもかかわらず救命処置が行われない場合がある」と指摘する。

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 Trayanova氏らは今回、ディープラーニング(深層学習)技術を用いて、今後10年間の心臓突然死のリスクと、それが起こる可能性が最も高い時期を患者ごとに予測するモデルを作成した。ディープラーニングとは、人間の脳神経の仕組みを応用して作る機械学習の手法だ。アルゴリズムのトレーニングに使われたデータには、何百人もの心疾患患者から収集された、心臓の瘢痕の分布が分かるMRIの画像データと、年齢や体重、人種、処方薬の使用などのデータが含まれていた。

 Trayanova氏の研究室の一員で、論文の筆頭著者であるDan Popescu氏は、「こうした画像データには、これまで医師たちがアクセスできなかった重要な情報が含まれている。心臓の瘢痕の分布の仕方は患者ごとに異なり、そうした違いからその患者の生存の可能性をうかがい知ることができる。つまり、画像データには隠された情報が含まれているということだ」と話す。

 このAIを用いたアプローチをテストしたところ、その予測は、全ての指標において医師による予測よりも正確であることが明らかになった。さらに、米国の60カ所の保健センターから抽出された、心疾患歴や画像データの異なる患者コホートを用いて検証した場合でも、このアプローチが有効であることが示された。

 Trayanova氏は、「われわれが開発したこのアルゴリズムを使えば、どの患者に心臓突然死のリスクがあるのか、また、それがいつ起こるのかを判定することができる。その結果に基づいて、医師は何をすべきなのかを正確に見極めることができる」と話す。

 その上でTrayanova氏はこのアプローチについて、「不整脈のリスクに関する臨床的意思決定に大きな影響を与える可能性がある。また、AIを使って患者の経過を予測するための重要なステップとなるものだ」と述べている。同氏らは現在、他の心疾患を検出するためのアルゴリズムの開発に取り組んでいるという。

[HealthDay News 2022年4月11日]

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