適切な身体活動は年を取っても自宅で自立した生活を続ける助けとなるかもしれない。筋肉量が減少して身体が衰えた「サルコペニア」と呼ばれる状態の高齢者でも、身体活動や食事の習慣を変えるプログラムによって移動機能障害の発生が減少したとする研究結果がこのほど明らかになった。この研究の詳細は、サクロ・クオーレ・カトリック大学付属アゴスティーノ・ジェメッリ総合病院(イタリア)のEmanuele Marzetti氏らが、「The BMJ」に5月11日報告した。

 この研究は、ヨーロッパ11カ国、16施設で登録された、身体的フレイル(フレイルとは、加齢に伴い心身の機能が衰えた状態のこと)とサルコペニアを有するが移動機能障害はない、70歳以上の男女1,519人(平均年齢78.9歳、女性71.6%)を対象に実施された。対象者の半数(760人)は身体活動をベースとした介入プログラムに参加する群(介入群)、残る半数(759人)は健康的に年を重ねることに関する教育を毎月受ける群(対照群)にランダムに割り付けられた。身体機能については、Short Physical Performance Battery(SPPB)での評価(0〜12点、点数が低いほど身体機能が低い)で3〜9点を身体的なフレイルとサルコペニアを有するものとみなした。また、移動機能障害については、400mを15分未満で、自力で歩けるか否かで評価した。

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 介入群が受けたプログラムの内容は、中等度の強度の身体活動を施設で週に2回、自宅で最大4回行うとともに、食事の栄養に関するカウンセリングを受けるというものだった。研究参加者の身体活動は、太ももに装着した活動量計で測定した。ランダム化からの追跡期間は平均26.4カ月(最長36カ月)間だった。

 対象者のうち、SPPBスコアが3〜7点だったのは、介入群605人、対照群600人だった。これらの人のうち、ランダム化から36カ月後までに介入群の46.8%(283/605人)、対照群の52.7%(316/600人)に移動機能障害が生じた(ハザード比0.78、P=0.005)。また、SPPBで評価した身体機能については、24カ月後と36カ月後の両時点で、介入群で対照群と比べて改善が認められた(SPPBスコアの群間差は24カ月時点で0.8点、36カ月時点で1.0点)。また、介入群の女性では、対照群の女性と比べて24カ月後の時点で筋力の低下度と筋肉量の減少度が抑えられていた。一方、男性では介入群と対照群の間に筋肉量あるいは筋力の差は認められなかった。なお、SPPBスコアが8〜9点の対象者で移動機能障害が生じたのは、介入群で29.7%(46/115人)、対照群で23.9%(38/159人)だった(ハザード比1.25、P=0.34)。

 Marzetti氏らの研究について付随論評を執筆した米イェール大学老年医学教授のThomas Gill氏は、「フレイルの高齢者においては、特定の目的達成のために計画された身体活動が自立した移動の維持に有効なことが追認された」と評価している。

 Marzetti氏は、高齢者の過剰診断や過剰治療が懸念されることもあるが、処方される治療が運動であれば心配はないと話す。また、同氏によると、ガイドラインでは既にフレイルの高齢者に対して身体活動を処方する方法が示されているが、医学教育ではあまり重視されていない傾向にあるという。

 一方、Gill氏は社会全体で高齢者が歩きやすい環境を整えることが、高齢者の地域での移動の妨げを取り除くことにつながると指摘する。また、自立した移動が失われるリスクのある高齢者を見つけ出す簡便な方法として、歩行速度の評価のみを実施することを提案。その評価結果に基づき高リスク者と判定された高齢者には、地域で行われている身体活動プログラムを紹介することが望ましいとの見解を示している。

[HealthDay News 2022年5月19日]

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