新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の猛威が止まりません。日本でも刻一刻と感染が広がり、感染者の爆発的急増が危ぶまれていますが、世界の各企業・研究機関は目前の課題に優先的に取り組みつつ、未来を見据えた研究も開始しています。ベルギーの製薬会社が北米・欧州とコンソーシアムを結成し、将来の遺伝子変異を想定した、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)全体をターゲットとする新たなワクチン開発に取り組んでいます。ここではCOVID-19だけでなく、未来の新種ウイルスにも使用できる新ワクチン作りが目標です。その他にも、未来のパンデミック用に備蓄できる積み重ね可能なコンテナ式仮設住居や、新型コロナの外出規制解除後の生活の中で重要となる感染検出ヘルメット、地球環境に優しい微生物から作るサステナブルな新タンパク質開発など、未来も視野に入れた取り組みが進んでいます。


以下では、2020年3月30日~4月3日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)等が配信したプレスリリースの中から、編集部がピックアップしたものを【ビジネス】【プロダクト/サービス】【要素技術】に分類しました。各項目をクリックすると、それぞれのプレスリリース(ウェブサイトやPDFなど)に移動します。

【ビジネス】

  • ・病床不足を解消する鉄カーゴ式コンテナ式仮設住居
  •  米国ではCOVID-19が猛威を振るい、患者の入院ベッドと身元不明の死体公示所の数が追い付いていない。仮設テントが設置され、臨時の絆創膏のような役割を果たす中、深刻な病室不足問題を解決すべく、デトロイト市にある貨物コンテナ企業Three squared社が、最新の鉄カーゴコンテナ式住居の提供を開始した。このコンテナ式住居は入院ベッドや死体公示所だけでなく、患者のそばで看病を続ける医師や看護師の寝泊まりする仮設住居としても利用が広がりそうだ。

    最新の鉄カーゴコンテナ式住居(出所:Three squaredプレスリリース)

     Three squared社CEOのレズリー・ホーン氏は「新型コロナ危機の最中、今までの居住用のコンテナ活用から、病室不足の危機を救う方向へと事業の方向性を変えることに決めた。現場の問題を肌で感じている医師たちからヒアリングを行い、貨物コンテナ業界の仲間と協力し、病室が抱える課題を突き止め、解決策となるコンテナの利用法を見つけた」と胸を張る。

     Three Squaredコンテナの特徴は、モバイルカーゴユニットをトラックで配送できる点だ。各ユニットは水道と電気設備に簡易的につなげることができ、仮設の土台とテントの屋根がある。2つの離れた部屋に医療用ベッドが1台ずつ設置され、中央には水洗トイレとシャワーがある。医師たちの意見を参考にし、医師が病室での診察のあと、シャワー室でしっかりと体を消毒してから外へ出られるような設計にした。

     さらに、患者の入院部屋としてだけでなく、医師や看護師が重篤な患者のそばで治療を続けつつ、適度な距離を保つことのできる一時休憩室として活用することもできる。それぞれのカーゴユニットを近隣に設置することで、隔離と治療の効果が高まる。パンデミックが終息し、病院での使用が終了したら、コンテナは全て撤去し、別な場所に難なく搬送できる。その後は、ホームレスや退役軍人、災害時の被災者のための仮設住居、大学寮、農業利用など、様々な活用が可能だ。簡単にスタックして収納することもでき、次なる危機においても持続的に利用できる。
    Three Squared Adapts Residential Shipping Containers to Help End COVID-19 Hospital Housing Shortage

  • ・鼻腔内投与型のmRNAワクチンで未来のウイルスも予防
  •  ワクチンと免疫治療薬を開発するベルギーのeTheRNA Immunotherapeis nv社は、北米と欧州のパートナーとコンソーシアムを結成し、SARS-Cov-2の新たなmRNAワクチンの臨床前研究を開始した。中国企業もこれから参入予定だ。

     このワクチンは鼻腔内に投与するタイプのもので、主に医療スタッフや、ウイルス感染が認められる患者の家族など、感染リスクの高いグループに適用される予定だ。今回の研究では、SARS-CoV-2ゲノム全体のエピトープをターゲットとすることで、COVID-19だけでなく、未来の新種ウイルスにも使用できるワクチンを目指す。eTheRNA社とパートナーを組むEpiVax社、Nexelis社、EPROCELL社、CEV社はmRNAワクチンの分野に関する豊富な知見を活用し、2021年初めには臨床試験で実際の人への投与を始める計画だ。

     CEOのスチーブン・パウエル氏は「今までとは異なるウイルスの亜種が大流行した場合、既存のワクチンと治療薬が効かないケースが発生する。現在の、そして未来のコロナウイルスやその他の呼吸器系感染症のパンデミックを予防するワクチンには、ゲノムの変異にマルチに対応し、新たなウイルスターゲットにも迅速に適用できる素質が求められる。また、投与方法が簡単で安全であり、スケーラブルで備蓄可能でなければならない。これらの全ての側面を考慮し、パートナー企業との革新的なワクチンプログラムを推進していく」と意気込みを語る。

     これまで、ワクチンはターゲットとするウイルスタンパク質の表面に対して抗体反応を生成するものであった。しかし、ウイルスが変異するとこのアプローチが効かなくなる。例えば、今回のSARS-Cov-2の表面のスパイクタンパク質は、SARS-Cov-1と40%しか一致していない。さらに、最適レベルに達しないワクチンを使用することによって、余計に感染しやすくなったり、症状が悪化したりするケースも報告されている。

     ワクチンを鼻腔内から投与する理由は、上気道の粘膜が免疫系の主たる防御線であるからだ。鼻腔内T細胞の刺激記憶反応が、ウイルスの複製、肺のコロナイゼーションを予防する効果を高める。目の前のウイルスは言うまでもなく、未来のウイルスとの闘いの準備も既に始まっている。
    eTheRNA Launches an International Consortium and Starts Development of Cross-strain Protective CoV-2 mRNA Vaccine for High Risk Populations

  • ・COVID-19に胎盤造血幹細胞から作るNK細胞新薬
  •  米Celularity社の新医薬品候補が米食品医薬品局(FDA)に承認された。この新薬は「CYNK-001」と呼ばれ、COVID-19に感染した成人に投与する薬だ。Celularity社はCOVID-19に感染した86人に対して第1相と第2相の臨床試験を開始。CYNK-001は、FDAに承認された初の免疫治療薬となる。

     同社のCEOのロバート・ハリーリ博士は「CYNK-001がCOVID-19の増殖曲線を直線に抑える可能性がある。臨床研究では、CYNK-001が難易度の高いがんに効果があることが分かっており、COVID-19へ応用が期待できる」と語る。CYNK-001は胎盤の造血幹細胞を活用する、既存のナチュラルキラー(NK)細胞治療薬である。現在、血液がんや固形腫瘍の治療代替案としても注目されているものだ。

     ウイルス感染すると、それがどのウイルスタイプであっても、NK細胞が爆発的に活性化することが多くの研究で実証されている。CYNK-001はNK細胞と同様の様々な作用を誘導し、ウイルスに感染した細胞のストレス結合基やウイルス抗原と結合するNKG2D、DNAM-1、自然細胞障害性受容体NKp30、NKp44とNKp46などの受容体を活性化することが分かっている。また、感染した細胞をやっつける細胞溶解分子であるパーフォリンとグランザイムBの役割も担う。SARS-CoV-2の感染拡大阻止実現に向け、免疫治療薬CYNK-001の臨床試験の結果が待たれる。
    Celularity Announces FDA Clearance of IND Application for CYNK-001 in Coronavirus, First in Cellular Therapy

  • ・COVID-19の遠隔診断用画像ソフトウェア
  •  ドイツのLeica Biosystems社は、病理学における生検から診断までのワークフローソリューションを提供するグローバルリーダーだ。今回、Aperio AT2 DXスキャナーで取得するAperio ImageScope DXビューアーの画像ソフトウェアが米食品医薬品局(FDA)の承認を受け、緊急時に遠隔診断用に使用できるようになった。COVID-19パンデミック時に、この機器を使って病理医が患者を遠隔診断することが可能になれば、診断の臨床現場を一変させることができる。

     新型コロナウイルスの猛威は医療機関に大きな重圧を課しており、遠隔診断技術の使用が許可される意義は大きい。同社のシニアメディカルディレクターのキース・ワートン博士は「Aperio ImageScope DXビューアーでデジタル病理学ワークフローを使用した遠隔診断ができれば、診断の品質を落とさずに、より安全な診断が行える」と語る。同社は100以上の国に拠点を構え、生検と診断のバリアを取り払う自動ワークフローソリューションをグローバルに展開中だ。
    Leica Biosystems Receives FDA's Enforcement Discretion For Use Of Aperio ImageScope DX Viewing Software For Remote Diagnosis During COVID-19 Emergency

  • ・人工呼吸器を設置する医療用カートを増産
  •  新型コロナウイルスの拡大により、各国のヘルスケアシステムが悲鳴を上げている。米Midwest Products & Engineering(MPE)社は米国のトランプ大統領が、国防産業法(Defence Production Act)を発令したことを受け、既存の多目的医療用カートの増産を始めた。

    多目的医療用カート(出所:idwest Products & Engineering社プレスリリース)

     COVID-19が急増している地域では、緊急集中治療センターの円滑な機能が求められている。ポータブルな医療用カートに直ちに人工呼吸器を設置し、稼働できる体制が準備されていなければ、必要な時に機器を正しく機能させることができない。

     MPE社のCEOのハン・コール氏は「医療デバイス製造会社として、我が社はたとえ緊急事態宣言が発令され、国レベルで外出禁止令が出されたとしても、重要産業としてのオペレーションを継続するつもりだ。人工呼吸器の世界的な需要が高まる中、医療用カート製造を拡大していく」と述べた。同社の200人の従業員は業務時間を延長し、新型コロナウイルスとの闘いに全力で挑んでいる。
    As The COVID-19 Pandemic Increases MPE Ramps Up Production Of Medical Carts For Ventilators