日本でも新型コロナウイルス感染者が日ごとに増大し、医療体制の崩壊が危惧されています。韓国では、ソウル国立大学病院が、新型コロナウイルスに感染したが軽症にとどまっている患者の宿泊施設として、もともと訓練センターとして使用していた建物の活用を始めました。軽症患者でも容体が急変する可能性があるため、ここでは医療スタッフが遠隔で一人ひとりの患者の心電図や血圧、酸素飽和度、心拍数、呼吸数などのバイタルサインをリアルタイムでモニタリングし、1日2回オンライン診療を行って安否を確認しています。建物には100人が宿泊できます。患者を重篤度によって分類して管理し、重症患者の治療を優先させて医療崩壊を防ぐ試みです。


以下では、2020年4月6~10日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)等が配信したプレスリリースの中から、編集部がピックアップしたものを【ビジネス】【プロダクト/サービス】【要素技術】に分類しました。各項目をクリックすると、それぞれのプレスリリース(ウェブサイトやPDFなど)に移動します。

【ビジネス】

  • ・新型コロナ軽症者が安心して療養できる施設
  • SNUH(上)にいるスタッフが「Life Treatment Center」に宿泊している患者の状態をビデオ通話でチェック(出所:SNUHプレスリリース)

     韓国のソウル国立大学病院(SNUH)では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者のうち軽症者を「Life Treatment Center」と呼ばれる施設に隔離して、遠隔医療サポートを行っている。韓国内で感染患者数が2月末から急増したことを受け、COVID-19以外の重篤疾患や難治性疾患の患者に対する治療の場を確保するために取られた措置だ。キョンサンプクト区のムンギョンにあるこの施設の建物は100部屋あり、もともとは訓練センターとして使用されていた。新型コロナに罹患したものの入院を必要としない軽症患者は、ここで隔離されつつ、遠隔モニタリングを受けながら回復を待つことができる。

     医療スタッフは100マイル離れた場所から、1日2回のオンライン診察を行う。心電図や血圧、酸素飽和度、心拍数、呼吸数などのバイタルサインをリアルタイムに測定し、患者の安否を常時確認できる。韓国では、軽症患者を受け入れる同様の施設が16カ所運営されている。SNUHのCEOは、「韓国でCOVID-19の感染者が9千人近くに上るにもかかわらず医療システムが崩壊していないのは、患者を重症度に分けて管理し、適切な治療を提供できているからだ」と語る。医療システムを守る取り組みのモデルケースの一つだ。
    SNUH Provides Appropriate Medical Care to Secure South Korea Medical System in COVID-19 Crisis

  • ・通常の生活に戻るベストタイミングを血液検査で判定
  •  新型コロナウイルスの感染状況を調べるため、米国ロサンゼルス市に住む1000人の居住者に対して血液検査を行う取り組みが始まった。何人の市民が現在感染しているか、もしくは今までに感染したかを正確に把握することで、いつになったら「いつも通りの生活」に戻して大丈夫かを突き止める地道な調査だ。マーケティングサービスを提供する米LRW社が、南カリフォルニア大学のプライススクール公共政策学部とロサンゼルス郡公衆衛生局と共同で始めたプロジェクトだ。

     マーケティング企業であるLRW社が担うのは、研究に参加する被検者を特定して募集する役割だ。健康な人と病気に罹患している人の両方が参加し、新型コロナウイルスがどれほど地域の中に入り込んでいるか調べるサービスを、今回同社が無償で提供する。LRW社COOのジェフ・レイノルズ氏は「LRW社では企業が顧客の嗜好を把握し、ビジネス活動に反映する支援を行っている。このサンプリングと分析技術を、新型コロナウイルスの拡大の調査に活用し、貢献したい」と語る。

     最初の検査は4月10日から2日間実施され、何百人もの地域の被検者がロサンゼルス市内の6カ所の検査所へ車で行き、車に乗ったまま採血を受ける。検査はこれから2週間ごとにロサンゼルスの各施設にてローテーションで行われる計画だ。通常のCOVID-19検査では鼻の奥の検体を採取するが、今回は「血清学的試験」と呼ばれる血液の中の抗体を調べる検査スタイルを取る。この検査では、被検者の今の感染状況だけでなく、過去にウイルスに感染したことがあるかどうかも判定できる。地域の人の何パーセントがウイルスに感染中で、何人が抗体を持っているかを特定できれば、地方政府と外出規制の効果を検証して、今後の政策に反映できる。いつも通りの生活に戻る最適なタイミングを突き止めるリアルな研究活動が注目される。
    LRW Group Partners with USC and Los Angeles County to Discover the True Spread of COVID-19 Across L.A.

  • ・COVID-19から回復した患者の血漿を使った治療薬
  •  米国ニュージャージー州最大の医療ネットワークHackensack Meridian Healthの研究者と医療専門家が、COVID-19から回復した患者の血液を採取し、特効薬の開発に使えるかどうかを調べる研究を開始した。回復した患者のリンパ液の中の抗体を徹底的に調べることで、感染症を解明し、新たな治療薬を開発する試みだ。

     Hackensackでは、独自の検査技術の開発や感染症治療薬の臨床試験を最前線で行ってきた。今回は、先進的な抗体開発の指揮を取り、COVID-19治療のブレイクスルーを狙う。病気から快復した人の血漿(けっしょう:血液から血球成分を取り除いた残り)はconvalescent plasma(回復期血漿)と呼ばれ、この中には体の免疫系が生産したウイルスへの抗体が存在している。この治療法は実は古くから実施されており、1918年にスペインかぜが流行した際にも同様の治療法が使用されたほか、エボラ出血熱の治療や、COVID-19の“親戚”であるSARS(重症急性呼吸器症候群)が2002年~2003年に大流行した時にも、回復期血漿療法が使用されてきた。

     今回の研究では、まず感染回復後14日経過した有志の患者から少量の血液サンプルを採取し、ウイルスの抗体が最も多いグループを特定する。その後、そのグループから再度血漿を提供してもらい、COVID-19の重症患者に投与して結果を確認する。Hackensack大学医療センターの幹細胞移植と細胞治療のチーフであるミシェル・ドナト博士は「まさに時間との闘いだ。目の前で感染症が広がっており、医師たちは日夜働き、できる限りの命を救おうと奔走している」と語る。リアルタイムで命をつなぐための応用科学の効果が注目される。
    Hackensack Meridian Health Studying the Blood of COVID-19 Survivors

  • ・米INOVIO社のCOVID-19ワクチン候補薬の治験開始
  •  いよいよ今週、米INOVIO社の新型コロナウイルスワクチン候補薬「INO-4800」のヒトへの第1相試験が始まる。試験では、健康な40人の成人ボランティアに対し、2回に分けて4週間の間隔を空けてワクチンが投与される。免疫反応と安全性に関する研究結果が出るのは夏の終わりごろだそうだ。既に行われた臨床前の研究データでは、複数の動物実験において高い免疫反応が確認されている。

     INOVIO社CEOのJ.ジョセフ・キム博士は「効果的なワクチンが開発されない限り、COVID-19は人々の生活と命を脅かし続けることになる。1月初めにウイルスの遺伝子シーケンスが発表されて以来、INOVIOのパートナーとスタッフが総力を挙げてトライアルへ向けて取り組んでいる」と語る。

     INOVIO社のDNA(デオキシリボ核酸)ワクチンは、「CELLECTRA」と呼ばれるスマートデバイスで筋肉か静脈経由で直接細胞に最適なプラスミド(細菌の中に存在する染色体とは別の環状二本鎖DNA)を投与する。CELLECTRAは短い電気パルスを用いて細胞内の小さな孔を可逆的に開き、プラスミドを注入する。細胞に入ると、プラスミドはコード化された抗原を生成して免疫反応を刺激する。このスマートデバイスの利点は、DNA医薬品を体内の細胞に直接送り込み、免疫反応を即座に発現させる点だ。もちろん、その際個人のDNAに干渉したり変化させたりする心配はない。

     INOVIO社のDNA医薬品プラットフォームは迅速に医薬品を構築・製造し、保管や輸送時に凍結を必要としない製品の安定性に定評がある。今回、ファンディングから10週間で最初の臨床試験が行われることは、INOVIO社にとって大きなマイルストーンとなる。既にその間何千個ものワクチンを試験用に製造してきたが、これから製造能力を拡大し、年末には100万個のワクチンを試験と緊急利用に向けて製造予定だ。
    INOVIO Initiates Phase 1 Clinical Trial Of Its COVID-19 Vaccine and Plans First Dose Today