流行のピークは過ぎたとはいえ、まだ予断は許されない新型コロナウイルスパンデミック。無人の検温・消毒設備や受付窓口のタッチレススクリーンなど、緊急事態宣言が解除された後もソーシャルディスタンスを確保したり社内感染を防ぐことで全員出社や職場復帰を支援する製品やサービスの需要が伸びています。新型コロナウイルスに万一感染してしまった場合のために、自宅でも使える携帯式酸素濃度管理デバイスや、病院から退院後にダメージを受けた肺の回復を促進するリモート肺機能リハビリテーションプログラムなども登場しています。社会不安が高まるなか、ストレスや不安の根源を教育によって絶つ3日間オンライン講座や、自作可能なストラップレスマスクにも注目です。


以下では、2020年5月18〜22日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)等が配信したプレスリリースの中から、編集部がピックアップしたものを【ビジネス】【プロダクト/サービス】【要素技術】に分類しました。各項目をクリックすると、それぞれのプレスリリース(ウェブサイトやPDFなど)に移動します。

【ビジネス】

  • ・無人の検温・消毒キオスクやタッチレススクリーン
  •  ソーシャルディスタンスの次の注目ワードは、「バック・トゥ・ワーク (back to work:職場に戻る)」。企業活動が徐々に再開される中、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の再流行を抑えるためには、職場に何らかの感染チェックシステムの導入が求められる。米Kiosk Manufacturer Association(KMA)は世界中のキオスク端末(セルフ注文・決済端末)やセルフサービス技術を運営する400以上の企業が加盟する団体。検温などのための新たなテクノロジーやリソースを提供しており、小売りやテーマパーク、ヘルスケアなど様々な業界が無事に活動を再開できるよう支援する。

    検温キオスク(出所:米Kiosk Manufacturer Associationプレスリリース)

     KMAは25種類以上のソフトウェアやハードウェアなどのソリューションを無償もしくは割引価格で提供する。検温キオスクや消毒キオスク、新たなタッチレス・ノータッチスクリーン、UVC(紫外線C波)やCOVID-19関連ソフトなど様々だ。KMAマネジャーのクレイグ・キーフナ―氏は「無人サービスを取り入れたいという要望が増加し、建物などの受付窓口に人と機械がやり取りするための装置(HMI:ヒューマン・マシン・インターフェイス)を多くの企業が選ぶようになってきている。今は人と人の接触を可能な限り最小限にとどめることを最優先する必要がある」と話す。
    New Options for Temperature Check Verification and No-Touch Touchless Touchscreen Technologies and Resources Available From Kiosk Manufacturer Association

  • ・携帯式酸素濃度管理デバイス、米国で4300%の需要増
  •  新型コロナウイルスのパンデミックの最中、需要が急増している製品がある。米Oxygen Plus社が開発した携帯式酸素濃度管理デバイスだ。デバイス名は社名と同じ「Oxygen Plus」。3月から4月にかけて4300%需要が伸びている。COVID-19は呼吸器を攻撃する感染症であり、息苦しさや酸素欠乏などの症状が表れる。

    「Oxygen Plus」(出所:Oxygen Plus社プレスリリース)

     Oxygen Plusは、健康な人の最適な酸素濃度の値を示してくれるレジャー用(医療用ではない)デバイスだ。健康な人の血中酸素濃度(SpO2)は96〜99%といわれており、Oxygen Plusが提供する純度99.5%の酸素を3〜5回ほど目いっぱい吸い込むと、体の中の酸素レベルを適切な値に調整することができる。需要が伸びたのは、このデバイスを使って体の酸素欠乏を検知して管理したいと考える人が増えたためだ。同社COOのローレン・カールストロム氏は「Oxygen Plusは医療用ではないが、侵襲性のないワイヤレスのオンライン携帯式酸素濃度計と一緒に提供し、Oxygen Plusの酸素をどれくらい吸入すればよいかをモニタリングできる。適切な酸素濃度を維持すると体と心の健康につながることを、多くの人が意識するようになってきている」と述べている。
    Oxygen Plus, The Pioneer Of Portable Recreational Oxygen In The USA, Sees Increased Demand Due To The COVID-19 Pandemic

  • ・脳がストレス時代を生き抜くための3日間オンライン講座
  •  世界の人々が突然かつてないほどの孤立感、うつ症状、不安に陥った今、ストレスを緩和して生産性を高め、イノベーションを起こすクリエイティブなソリューションが求められている。そんな中、脳に求められるのは、適応性だ。しかし、逆に心が不安定になる人が急増している。

     米国のニラジ・ニジャワン医師は、ストレスや不安の根源を教育によって絶つ「Life Ecology Organization(LEO)」というプログラムを立ち上げ、何千人もの患者の治療に当たってきた。このたび、この3日間のオンライン教育プログラムを米BankersHub社が配信することが決まった。プログラムの参加者は、人間が「脳をハッキングされる」事例について学習しながら、回復力やリーダーシップを身に付ける。その結果、思考力を改善して不安を軽減し、将来を楽観視できるようになったと報告されている。

     ニジャワン医師は「全ての人の脳には、ピンチの際にすぐに落ち着いて進む方向を変更しようとする能力を有している」と語る。LEOはプログラムの中で人の脳の作用と、なぜ現在の世界的な課題に対応する準備ができていないのかを解説してくれる。解説によると、私たちの脳の下の部位(lower brain)は日々の生存機能をつかさどり、上の部位(higher brain)はより高い意識や精神の安定、喜び、つながり、イノベーションの様々な能力をつかさどるという。いかにしてhigher brainを活性化させることができるかをプログラムの中で学び、脳のコンディションを整えて難局を乗り切ろう。
    BankersHub and Life Ecology Organization (LEO) Launch Online Training to Help People Manage Stressful Times

COVID-19完治後に始めるリモート肺機能リハビリプログラム

【プロダクト/サービス】

  • ・テーピングブランド発、DIYシール式ストラップレスマスク
  •  カナダのトロントにあるSpiderTech社が、DIY(自分で作る)のストラップレスマスクを開発した。もともとCOVID-19が広まる前から、SpiderTechは筋肉疲労や痛みを緩和するカット済みのスポーツテーピングブランドとして世界中のアスリートたちに愛用されてきた。その後、医療スタッフ用の、より安全で付け心地のよいマスク開発へビジネススコープを広げ、今回ついに消費者向けに日常使いできるDIYマスクが誕生した運びだ。

    ストラップレスマスク(出所:SpiderTech社プレスリリース)

     この新型マスクは、呼吸可能な素材をフィルターとして利用し、口と鼻を完全に密閉する。マスクは伸縮性のある使い捨てタイプ。肌に直接張り付くため、耳や頭に装着するストラップが要らない。マスクは激しい運動をしても外れることがなく、完全に感染を予防できる。カット済みのタイプと、テープをロールごと販売するタイプがある。テープは5.25カナダドル(約403円)で30個までマスクを作ることが可能だ。つまり、マスク1枚が17セント(13円)となる。色は7色から選べる。

     2020年初めにはSpiderTech社は医療スタッフが長時間マスクやゴーグルを使用することで顔の皮膚が擦りむけるのを防ぐための顔保護テープも発売している。今後しばらくマスク需要が続く中、付け心地や価格に焦点を置く様々なマスク関連製品が市場を賑わせそうだ。
    Canada's own SpiderTech launches comfortable and strapless DIY Face Masks as Canadian Government Calls for More Mask Use

  • ・COVID-19完治後に始めるリモート肺機能リハビリプログラム
  •  デジタルセラピーを提供する米SWORD Health社が、リモートで参加できる肺リハビリテーションプログラムを開始した。COVID-19感染から回復した患者が受けられる、適切なリハビリプログラムが不足している現状を打破する狙い。プログラムでは理学療法士による医療用ウエアラブルテクノロジーの活用が紹介され、患者が家から安全に、リラックスした状態でプログラムに参加して、体の回復を促進させることができる。

    SWORD Health社の肺リハビリテーションプログラム(出所:SWORD Health社プレスリリース)

     COVID-19患者は病院から退院後も、呼吸しづらい状況が続く。特に中等度〜重症の患者は、その後慢性肺疾患を患うリスクがあり、リハビリが必要だ。肺のリハビリは体の機能を改善し、生活の質と精神の健康を向上させるために効果的であるものの、米国ではリハビリ施設が少なく、高額だ。しかも、需要は急増しており、実際にリハビリを受けることが難しい状況だ。

     新型肺炎が完治した後、後遺症に悩まされることなく、誰もが元の生活に完全に戻れるようにする体制が必要だ。SWORD社のリハビリプログラムは、これから企業から従業員に適宜無料で提供される予定だ。腰痛、関節痛、筋肉痛に対する独自の筋骨格系治療ソリューションを拡張したこの新プログラムは、対面治療よりも30%以上効果的で、より高い定着率(54%以上)があると実証されている。高度にパーソナライズされた治療法に、患者の血中酸素と心拍数のモニタリングを組み込む。社会経済活動を順調に軌道修正するため、一人ひとりの肺機能の回復に焦点を当て、リモート肺リハビリプログラムがパンデミック後の生活を支える。
    SWORD Health launches remote pulmonary rehabilitation to help COVID-19 survivors breathe easy again

  • ・鼻の中を99.99%消毒するアルコールフリー消毒剤
  •  臨床用バイオ医薬品会社、米BlueWillow Biologics社は「NanoBio Protect」という製品をAmazonで発売する。NanoBio Protectはアルコールフリーの、肌に優しい消毒剤。鼻の孔の中と周辺に綿棒で塗布し、病原体を99.99%殺してウイルス感染を予防する。

     外出の際、手洗い、マスク、ソーシャルディスタンス(人と人の距離を2m以上離す)に加え、ウイルスをシャットアウトするためにNanoBio Protectを4〜8時間置きに鼻に塗布することが奨励されている。無刺激、無香料で、塗布後の残留物もなく使用感もよい。有効成分はベンザルコニウムクロライド(BZK)で、75年以上前から市販品で使用されている米食品医薬品局(FDA)承認の外用消毒剤だ。1本24.95ドル(約2684円)で購入可能。

     BlueWillow社CEOのデイビッド・ぺラルタ氏は「外出規制が緩和される中、1人ひとりの安全を何より最優先し、感染リスクを劇的に削減する保護措置が必要だ。人々の間で緊張感や懸念が高まる中、なんとか支援したいと考える。Amazonで当社の製品をすぐに購入できるようにし、感染リスクを減らして普通の生活に自信を持って戻る手助けになれば」と語る。
    Reducing Risk: NanoBio® Protect Nasal Antiseptic Now Available on Amazon

  • ・腸の健康を守る消化酵素と善玉菌ブレンドサプリ10種類
  •  米国の「FRISKA」という新しいウエルネスブランドが10種類の革新的な栄養補助サプリを発売する。焦点を当てたのは、健康の大元である「腸」だ。体の免疫細胞の70〜80%は腸に存在するといわれており、FRISKAは消化酵素と体に良い働きをするプロバイオティクス(善玉菌)をブレンドして効果を高める。

    新発売の10種類の栄養補助サプリ(出所:FRISKA社プレスリリース)

     善玉菌に比べると影の薄い消化酵素だが、実は消化酵素は重要な機能を持つ。食べ物の分解、解毒作用、さらには筋肉を作り出す機能もある。炭水化物をエネルギーに変える働きもあるが、年齢とともに体の中の酵素は弱まっていくことが分かっている。「シアトルの腸博士」として知られるグレゴリー・バーンスタイン医師もFRISKAの開発に加わっており、「かつてないほど、腸が健康において果たす役割に注目が集まっている。消化が良好だと、気分が良いだけでなく、免疫力も高まり様々な感染症対策にもなる。腸を健康にすることで、糖尿病からうつ病まで、様々な病気予防となる」と語る。

     FRISKAの10種類のサプリにはそれぞれ固有の効能がある。免疫、気分、エネルギー、睡眠、乳製品の分解、炭水化物の分解、消化促進、グルテンの分解、女性向け、男性向け、と目的に合わせて好きなタイプのサプリを選ぶのも楽しい。
    Your Belly's New BFF - Meet FRISKA, A Health and Wellness Brand Delivering Improved Gut Health Through Digestive Enzyme Blends

抜け毛治療に毛包再生、酸素を使わない超音波手術

【要素技術】

  • ・世紀の発見、バターに含まれる健康に不可欠な活性飽和脂肪酸
  •  体に有益な脂肪酸と微量栄養素の開発で世界の健康を推進する米国のSeraphina Therapeutics社が、「ペンタデカン酸」という活性飽和脂肪酸が健康に高い効能があることを複数の研究で発見し、話題を呼んでいる。というのも、健康に良い飽和脂肪酸が発見されたのは、実に90年ぶりなのだ。

     ペンタデカン酸とはC15:0とも表記される、バターに含まれる少量の奇数鎖脂肪酸である。3年間にわたって行われた研究において、このペンタデカン酸がヒト細胞と生体内細胞の完全性と機能を促進させる効果を発揮した。研究では、ペンタデカン酸が細胞の恒常性とミトコンドリアの機能を助けて代謝を調整し、細胞の健康を促進する受容体を活性化することで心血管代謝と肝臓を健康に保つ作用もあることが実証された。

     40年ほど前から、飽和脂肪酸の摂取を減らすためになるべく乳製品を取らない食生活が奨励されてきた。しかし実はその間、肥満、2型糖尿病、脂肪肝の数は増加するばかりであった。今回、ペンタデカン酸が、健康を守るために必要な必須脂肪酸として証明されたことで、飽和脂肪酸の摂取が改めて見直されることになりそうだ。Seraphina Therapeutics社はシリーズA投資ラウンドで550万ドル(約5.9億円)を獲得し、今後ペンタデカン酸を使った健康サプリや栄養補助食品の開発を進める計画だ。ヴィーガン対応サプリは2020年秋より、栄養補助食品は2021年初めからの発売を目指す。
    Seraphina Therapeutics Introduces Newly Discovered Potential Essential Saturated Fatty Acid Present In Butter

  • ・抜け毛治療に毛包再生、酸素を使わない超音波手術
  •  バイオメディカル(生体医療)超音波を開発する韓国のMEDI FUTURES社が、韓国政府により「グローバルICTのFuture Unicorn」(巨額の利益をもたらす可能性のある企業)に指定された。Future Unicornは韓国科学技術情報通信部が運営するプログラムであり、グローバルに活用できる技術と市場における潜在性の高い企業を選抜し、成長を支援している。

     MEDI FUTURES社の酸素を使わない超音波法による脂肪由来幹細胞分離技術は副作用がなく、体に無害な生体材料を再建手術に利用する。最近では、組織や細胞の再生だけでなく、抜け毛に悩む人の毛包再生の研究にも利用されている。同社の超音波成形技術を使った医療用吸収性有刺鉄線縫合糸「DAVINCI COG」は高精度で安全性が高く、発売後1年で日本や欧州などで200万ドル(約2.15億円)の売上を達成した。CEOのキム・ジミン氏は「超音波手術は安全に組織を切断して融合させ、医師と患者の安全性を大幅に向上できる。当社はマイクロメートル単位の医療機器開発技術を保有し、今後は手術や美容以外にも、眼科や歯科などの医療分野にも応用できるよう取り組みを続ける」と語る。今年欧州CEマークを取得し、欧州と米国への手術器具の輸出を推し進める。
    MEDI FUTURES designated as "Global ICT Future Unicorn"

  • ・最先端研究施設、バイオエンジニアリング再生医療が躍進
  •  米国のNPO、Terasaki Instituteが新たに5万平方フィート(約4645m2)の広さの二階建ての研究棟を入手した。もともとこのロサンゼルスの施設は、ボディビルダーの父といわれるジョー・ウィダーがウィダーヘルス&フィットネスセンターとして建設したもので、今回Terasaki Instituteが新しいオーナーとなった。

     Terasaki Instituteの新たな研究棟には、生体組織の改造や再生、3Dプリンティングを使ったバイオファブリケーション、ナノ・ミクロレベルの工学、幹細胞、チップ上の人工臓器など最先端のテクノロジー開発環境が整えられている。これからの時代を引っ張る複数の研究チームがここで、バイオエンジニアリングを活用した革新的なシステムやデバイスを開発し、バイオメディカル(生体医療)が大きく前進すると期待される。Terasaki Instituteの研究で得られた知見が、様々な疾患、障害、損傷の治療に幅広い応用性を与え、細胞やインプラントなどを使った個別の診断や治療法を可能にする。
    Terasaki Institute for Biomedical Innovation Announces Its New Facility in Los Angeles

(タイトル部のImage:Photobank -stock.adobe.com)