「高気圧酸素治療」で脳機能・認知能力アップ

【要素技術】

  • ・「がんの温度計」46カ国語に翻訳、患者の心に寄り添う
  •  米国のがんセンターを統括する全米総合がんセンターネットワーク(NCCN)が、「がんの温度計」として使用できるチェックシートを46カ国語に翻訳し、無料公開する。医療スタッフがこのチェックシートを元に、がん患者が直面する様々な悩みや苦痛を計測して見える化することで理解を深め、患者に寄り添う手助けとなる。

    「がんの温度計」として使用できるチェックシート(出所:NCCNプレスリリース)

     NCCNが定義する「苦難」とは、精神的、身体的、社会的、または感覚的に感じる苦痛が、その人の考え方や受け取り方、行動面に与える影響を指す。がんの闘病中、精神的な苦難を感じることが病気の症状や治療をより困難にしてしまうことがある。NCCNのがんの温度計を使用すると、心理的な問題を医師に話しやすくなり、患者1人ひとりに目が向けやすくなるという利点がある。 NCCNのCEOロバート・W・カールソン医学博士は「がん治療に苦難が伴わないわけがない。このシートを使って患者が、苦しい状況にどれほどうまく耐えられているか、もしくは助けを必要としているかを医師に分かりやすく示すことができる」と語る。評価スコアを用い、例えばスコアが4以上になった患者は、検査や介入が必要だという指標となる。評価シートでストレス要因との関連付けをし、家族、精神状態、宗教関連、身体的な問題などに要因を分類して、問題解決を探る足掛かりとする。

     治療中に患者の精神的な苦痛を正しく把握して緩和することは、体の痛みを取り除くことと同じくらい重要である。特にがん患者は不安やうつ症状に陥りやすい状態にあり、精神状態が治療の回復や生活の質の向上を大きく左右する。がんの温度計のような視覚化ツールを使ったアプローチで、病気が精神に与える影響を客観的に管理し、サポートすることが大切だ。
    Translated Tool from NCCN Measures Mental Health "Temperature" of People with Cancer

  • ・「高気圧酸素治療」で脳機能・認知能力アップ
  •  脳の機能を改善し、認知能力を向上したい人へ朗報。脳の働きを良くする新たな治療法「高気圧酸素治療(HBOT)」に関する研究が発表された。イスラエルのシャミール医療センターのサゴル高気圧医療研究センターとテルアビブ大学が、初めて人に対して行った高気圧酸素治療の臨床試験で、高齢者の認知能力を大きく改善することが実証された。

     臨床試験は、サゴルセンターが10年間かけて開発したHBOT療法を用い、64歳以上の健康な被検者63人を二つのグループに分けて実施された。コンピューターを使った認知機能検査と、最先端の磁気共鳴イメージング技術を使った脳血流検査で評価をしたところ、HBOT治療を取り入れたグループは、集中力、情報処理能力、実行能力をはじめとする全体的な認知機能の改善が認められた。これらは、どれも年齢とともに自然に衰える機能だ。また、特定の脳部位における認知力と、脳の血流の促進との間に、明らかな相関関係があることも分かった。

     HBOT治療を受ける患者は、通常の2倍の空気圧に高めた加圧室に入り、普通に空気を吸うだけ。これにより、全身を流れる血液中の酸素溶解度が高まる。体の中に増加した酸素は治癒を促進する成長因子や幹細胞を放出するため、現在は創傷治療に多く用いられている療法だ。HBOTが脳の血流を増加させて認知機能の改善に役立つことが実証され、次は他の臓器の老化抑制効果に着目した研究も開始される。
    New Study Finds Novel Hyperbaric Oxygen Therapy Protocol Can Improve Cognitive Function of Healthy Older Adults

  • ・慢性心不全患者の在宅ケアにクラシック音楽が効く
  •  日々の生活の中で、ふと耳にした音楽に心を揺さぶられた経験がある人は多いと聞く。音楽には慢性心不全患者の生活の質を向上させる効果があることが、米国の医学誌『Journal of Cardiac Failure』に発表された。イタリアの4つの心血管研究機関で行われた研究で、159人の慢性心不全患者が2つのグループに分かれ、1つのグループは家で通常の治療に加えて3カ月間毎日、クラシック音楽を30分聴き、もう一方のグループは通常の治療のみで音楽は聴かずに、違いを比べた。

     その結果、音楽を聴いたグループは生活の質、睡眠、不安やうつ症状、認知機能の全てが向上した。研究を実施したイタリアのサッサリ大学病院のフランセスコ・ブライ博士は「良質な在宅治療に、クラシック音楽を聴くという侵襲性の全くない、安価で手軽な方法を取り入れることで、患者の生活の質を向上させることができることが分かった。今後、音楽療法が、運動による心臓への負荷の耐性力をアップし、酸素消費などの体の機能向上や、うっ血の緩和などにどのように作用するかを、臨床試験やバイオマーカー(生体組織の検査)で検証することが重要だ」と述べた。

     米国立衛生研究所は、ソプラノ歌手のレネ・フレミング氏と共同で「サウンドヘルス(音楽療法)」と呼ばれる音楽をベースとした医療への取り組みを支援している。クラシック音楽を聴くと、患者の呼吸が長く、深くなり、ストレスレベルが改善するなど、体への効能が研究で注目されている。音楽の種類や、聞く時間がどのように体へ作用するかなど、音楽が心臓に及ぼす生理学的・生物学的効果を調べる研究は続く。
    Listening to Recorded Classical Music Shown to Improve Quality of Life in Patients with Heart Failure

(タイトル部のImage:Photobank -stock.adobe.com)