患者の搬送や治療を行う「病院船」。その歴史は古く、古代ローマ時代にも医療活動を行う船が存在したとされ、日本でも氷川丸が病院船として稼働した実績があります。特に海に囲まれている日本のような場所では、災害時に道路が寸断された時などに災害現場に駆け付けられるという利点もあります。

 今週はGlobal Mercy号という世界最大級のNGO病院船が完成した記事を紹介します。VR/ARラボなどの最先端技術を搭載し、今後15万人の命を救う使命を負った病院船とは、どんなものでしょうか。


以下では、2020年10月5~9日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)等が配信したプレスリリースの中から、編集部がピックアップしたものを【ビジネス】【プロダクト/サービス】【要素技術】に分類しました。各項目をクリックすると、それぞれのプレスリリース(ウェブサイトやPDFなど)にリンクいたします。

【プロダクト/サービス】

  • ・最先端VR/ARトレーニングラボを備える、世界最大級の病院船
  • (出所:Mercy Shipsプレスリリース)
    (出所:Mercy Shipsプレスリリース)
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     世界で毎年1600万人以上が手術を受けられずに命を落としている。この世界的な課題に挑むのは、慈善ボランティア団体であるMercy Shipsだ。Mercy Shipsは40年以上に渡り、外科治療を必要としている世界中の人々に無料で高品質の治療を提供している。このほど「Global Mercy号」と名付けられた世界最大級のNGO病院船が完成し、お披露目された。

     Global Mercy号はカスタマイズした機器、最先端技術、高度な訓練を受けた人材が強みだ。医師や医療スタッフはVR(仮想現実)やAR(拡張現実)のトレーニングツールを備えたシミュレーションラボで、船上の特殊な環境でのベストプラクティスを学ぶことができる。174m、3万7000トンのこの船には6つの手術室があり、外科医、船員、調理師、教師、電気技師やスタッフが600人以上ボランティアで集まっている。講堂や体育館、プール、カフェ、図書館などがあり、最大950人の乗組員が収容できる設計だ。

     特にサハラ以南のアフリカでは、人口の93%以上が安全な手術を必要な時に受けることができない。COVID-19が医療システムを脅かす今、基本的な救命ケアがこれまで以上に必要とされている。Global Mercy号は安全で清潔な環境を提供し、これから50年の間に15万人以上の命を船上で救うための航海に乗り出す。
    Mercy Ships Announces the Global Mercy, World's Largest NGO Hospital Ship

  • ・「無菌スマートホーム」、ワンランク上のライフスタイルを演出
  •  家庭における感染対策と衛生管理に未だかつてないほど関心が高まっている。昨今のトレンドに応えるため、香港の2社Pricerite社とHKBN(Hong Kong Broadband Network Limited)社が提携し、モバイルアプリで実現する「無菌スマートホーム」の提供を開始した。

     インストールも操作も簡単な遠隔制御システムを使って、家の中からウイルスをシャットアウトし、ライフスタイルをグレードアップできるというものだ。この無菌スマートホームとはどんなものかを実際にユーザーが肌で体験できるよう、2社は九龍にあるMegaBox New Retail Concept Storeにショールームをオープンした。ユーザーは広東語の音声コマンドでモバイルアプリを操作し、玄関における消毒、24時間体制の空調管理から、洗練された日常生活の環境づくり、娯楽までを楽しむことができる。

    (出所:Pricerite社プレスリリース)
    (出所:Pricerite社プレスリリース)
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     どんな機能かみてみよう。まず、玄関の天井には埋め込み型空気清浄機が設置され、非接触式赤外線温度計で来客者の体温チェックができる。靴はUV-C LEDライト殺菌装置を装備した引き出しに入れて病原菌を99.99%除去、部屋に入る前に非接触式除菌スプレーで手を消毒するのはもはや当たり前だ。スマート空気品質モニターが常時PM.2.5、VOC、ホルムアルデヒド、CO2、温度、湿度をチェックして、自動調整する。スマート掃除機が自動で家中を掃除し、UV-C除菌機能付きのスマートダニロボットVCを起動すれば、マットレスを洗浄して細菌やダニを除去できる。

     家の様々なデバイスを自由に操作できる音声コマンドは、忙しい生活にちょっとしたゆとりを生み出してくれる。夏の暑い夜は音声でアロマ加湿器と扇風機をオンにし、ベッドから離れずにLEDフロアライトをオフにすれば、ぐっすり眠れること間違いない。朝が来たら音声でブラインドを開け、接続されたスマート家電から自動的に用意されるコーヒーやトーストの香りで目を覚ます。家事はホームオートメーションに任せ、生活を満喫できる。

     リビングをシアターモードにすれば、オーディオシステムとRGB照明で、ゲーム体験をより盛り上げることができる。ドアや窓のセンサーがセキュリティを強化し、高画質のライブビューで家の外の異常を検知するとすぐに通知を送信して知らせてくれるので安心だ。

     この総合型スマートホームソリューションはカスタマイズ可能で、価格も手頃。異なるブランドの家電製品であっても、HKBN Homeのモバイルアプリで一元管理できてしまう所がすごい。一部の富裕層をターゲットにしているわけではなく、誰もがスマートホームを利用できることを目指す、画期的な試みだ。
    Pricerite x HKBN Proudly Pioneer Germ-free Smart Homes

  • ・セキュリティチェックポイントで、金属と一緒にウイルス検出
  •  セキュリティ金属探知機プロバイダーである米CEIA USA社が、COVID-19に対応する新セキュリティチェックポイント機器「CEIA 02PN20v3」を発表した。新型コロナウイルスの拡大により、マスク着用とソーシャルディスタンスと同じくらい重要な習慣となったのが検温だ。空港や重要な施設の入り口には、検温機能を搭載したセキュリティシステムを設置することが求められている。セキュリティシステムにとって重要なのが、誤検知の数を最小限に抑えることだ。誤検知により二次検査やスタッフとの接触、待ち時間が発生するのを防がねばならない。

    (出所:CEIA USA社プレスリリース)
    (出所:CEIA USA社プレスリリース)
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     O2PN20v3は最新の誘導型検出技術でセキュリティレベルの設定に応じて金属を検出し、二次検査の回数を削減することができる。高精度に複数の対象物をスクリーニングし、スピードアップを実現。可視・赤外線マルチスペクトルシステムを組み合わせた体表温度測定法を用い、最大値を自動的に表示して、基準を超えるとアラームを発する。データストレージも充実しており、10万件以上のトランジット情報を動画で保存できる。金属だけでなく、身体に潜むウイルスをセキュリティチェックポイントで検出できる時代の到来だ。
    CEIA USA Advances Screening Operations With New Security Checkpoint Solution

タイ王国で建設進むイノベーションセンターとは…

【ビジネス】

  • ・ポストコロナ時代のグローバルフード・イノベーションハブ
  •  タイ王国のハイテク東西経済回廊(EEC)に、最先端の研究開発を行うイノベーションセンターが建設されている。2021年にオープン予定のこのサイエンスパークはバイオテクノロジー研究を行う「バイオポリス」と、巨大多国籍企業やスタートアップがコラボできる「フードイノポリス」、自動化やロボティクスに特化する「アリポリス」の3つの要素を組み合わせ、世界中に食と栄養を提供する革新的な食品インキュベーターとして、ポストコロナ時代のアジアのゲートウェイとしての存在感を強化する。

    (出所:ハイテク東西経済回廊(EEC)プレスリリース)
    (出所:ハイテク東西経済回廊(EEC)プレスリリース)
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     肥沃な農地と豊富な魚介類資源が武器であるタイ王国は、自国の消費量をはるかに上回る食料を生産できる数少ない国の一つ。「世界の台所」とも呼ばれ、高品質な米から惣菜、トロピカルフルーツに至るまで、330億ドル(約3兆4800億円)相当の農産物を輸出している。国連は今後10年以内に世界の食糧需要が60%増加すると予測しており、COVID-19の混乱が多くの国で食料不安を増大させる中、タイ政府は技術、イノベーション、ロジスティクスを活用した「タイ4.0」として知られる戦略を推し進めている。キーワードは「未来のための食糧」と「先進農業とバイオロジー」。スマート農業でヘルスケア産業を推進し、王国が革新的な経済への転換を図る。
    Thailand's Eastern Economic Corridor to Become Post-COVID Global Food Innovation Hub

  • ・アプリより便利、除菌タッチパッド式コーヒーサーバー
  • (出所:United Food Group社プレスリリース)
    (出所:United Food Group社プレスリリース)
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     米United Food Group社が、細菌や病原菌の付着を防止する新タッチパッドを、自社の全ての新規・既存コーヒーサーバー「Prefect Servings」に搭載する。Perfect Servingsのタッチパッドは「Stayz Kleen」と呼ばれるポリマーバイオフィルムによって毎回細菌を除去する仕組み。米国中のコーヒー店で使用されている既存のサーバーにも、数秒で後付けできる点が便利だ。

     ここ数カ月の間にウイルス感染防止の観点から様々なタイプの飲料機器が導入されてきており、タッチレスで操作するモバイルアプリもある。United Food Group社のプロダクトエンジニアであるボブ・ロング氏は「アプリなどで操作を複雑にするとサービスの質が低下する上、飲料センターのコーヒーラインの高速化が阻害される」と指摘。確かに、コーヒーを入れるためにわざわざ毎回アプリを立ち上げるのはひと手間だ。この新たなバイオフィルムタッチパッドで利便性を保ちつつ、しっかり除菌して顧客の安全を確保する戦略に軍配が上がりそうだ。
    Perfect Servings® dispensers incorporate Anti-Microbial touch pads.

  • ・米iHerb社がロシアに1億ドル投資、eコマース基盤を拡張
  •  世界の健康と美容のeコマースリーダーである米iHerb社が、今後2年以内に1億ドル(約106億円)を投資し、ロシアのコミュニティにより良いサービスの提供開始を目指す。投資分野はロシア製品の輸出、ロシア物流会社との提携、技術開発センターの拡張、ロボティクス分野など。各分野を強化することで、iHerb社の個人向け製品をより迅速かつ効率的に顧客の自宅に配送することを可能にする。

     iHerb社は米国を拠点とする最大規模のeコマース小売業者の一つ。1200のトップブランドから3万点以上の高品質ナチュラル商品を世界中の何百万人もの顧客に提供している。社長のエムン・ザビヒ氏は「当社は世界中の顧客に、地球上で最高のセレクションのナチュラル製品を、可能な限り最高の価値で、最も便利な体験として提供すること」を使命としている。iHerb社は今後地元の顧客と強固な関係を築き、ロシア経済の活性化に貢献する決意を示す。
    iHerb Commits US $100 Million Investment in Russia to Better Serve Russian Communities

バイオメトリクス×ブロックチェーンで実現する世界

【要素技術】

  • ・バイオメトリクス×ブロックチェーン技術が、パスワードのない世界を作る
  •  安全性と利便性の両立を目指す次世代のパスワードレス認証技術のリーダーである米1Kosmos社が、FIDO アライアンスのFIDO2サーバプロトコルの認証を取得したことを発表した。FIDO2はW3C(WWWで利用される様々な技術の標準化を推進する非営利団体)のWeb認証仕様(WebAuthn)とFIDOアライアンスに対応するCTAPプロトコルを組み合わせたもので、一般的なデバイスが安全かつ容易にモバイルとPC両方の環境で認証できるようにする。

    (出所:1Kosmos社プレスリリース)
    (出所:1Kosmos社プレスリリース)
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     1Kosmos社が開発した認証方式「BlockID」は、先進的なバイオメトリクスとブロックチェーン技術を掛け合わせ、最高レベルの本人確認・認証技術を提供する。世の中のパスワード依存脱却が大きく加速しそうだ。

     BlockIDはなりすましを不可能にし、また2要素認証や多要素認証ソリューションの導入コストを不要とするなど、セキュリティ業界に旋風を巻き起こしそうだ。BlockIDはスマホアプリを使い、認証に成功したユーザーにアクセス権を与える仕組み。ユーザーのID情報は暗号化して分散型台帳に安全に保存されるため、ハッキングに対して強い耐性があり、データ侵害も心配ない。ユーザーネームやパスワードを複数暗記する煩わしさも、パスワードクラッキングによるなりすましの脅威も、過去のものになる。
    1Kosmos BlockID Becomes the First Contact-Free Identity Based Authentication System Powered by Biometrics & Blockchain to Be FIDO2 Certified

  • ・スマホで身近なモノを徹底消毒する、新UV-Cテクノロジー
  •  リモートセンシングサービスに特化する先進的テクノロジーカンパニーである米Galileo Group社。このほど、特許済みの「ARMADA」スマホLEDシステムの試験を行い、ウイルスや病原菌を除菌できることを証明した。普通のスマホやタブレットにGalileo社のセンサーテクノロジーを統合するだけで、物体の表面に付着したウイルスと病原菌を除菌できるようにするという、画期的な試みだ。試験はアリゾナ州立大学(ASU)の環境工学・環境微生物学の教授陣とGalileoグループとで共同で行われ、ARMADAを紫外線殺菌剤に変換する実験が実施された。最初の試験は成功し、11月上旬にはいよいよ生きたヒトコロナウイルスを使った実験を行い、結果は12月に発表予定だ。

     UV-Cの電磁スペクトルの殺菌効果は科学的に証明されており、ここ数カ月のパンデミックの間に、大型で高エネルギーの機械を使用する消毒ツールなどに搭載され、大勢の人が集まる環境で使われるようになってきた。GALILEOが目指すのは、大型の機械では手の届かない近距離の場所を、モバイルデバイスで日常的に、より徹底的に殺菌することだ。まずは旅行・ホスピタリティ・レジャー向けに導入し、その後ARMADAのUV-C技術を第三者にライセンス供与し、モバイルベースの殺菌機能をさらに他の分野へと大幅に拡張・展開する予定だ。低コストで実用的なスマホ技術とオンラインポータルを組み合わせ、新たな消毒法を実現する構想が進む。
    Galileo Group develops and demonstrates experimental smartphone technology for virtual disinfection of viruses and bacteria, next step plans for human coronavirus testing

  • ・英国初COVID-19ワクチンのチャレンジスタディ
  •  新型コロナウイルスワクチンのチャレンジスタディ(ヒトへの臨床試験)「1DaySooner」を呼び掛ける請願書が英国政府に提出された。請願内容には、100人から200人のボランティアの被験者が滞在できる「チャレンジスタディセンター」の設置が含まれる。この活動は、多くの英国知識人(アラ・ダーツィ―卿、ノーベル賞受賞者リチャード・ロバーツ氏、オックスフォード大学のドミニク・ウィルキンソン医療倫理学教授など)から支持され、すでに英国人2500人がワクチンのチャレンジスタディに被検者として名乗り出ている。チャレンジスタディの請願書が正式に政府に提出されたのは今回初めてとなる。

     インペリアル・カレッジ・ロンドンのグローバル・ヘルス・イノベーション研究所所長でもあるアラ・ダーツィ―卿は「COVID-19のチャレンジスタディを行うことで、どのワクチンが効果を発揮するかを迅速に突き止めることができ、ワクチン開発者が製造と流通を最適化する助けとなる。世界中の80億人にワクチンを確実に届けるために、非常に重要なステップだ」と述べる。チャレンジスタディは副作用のリスクも伴うため、賛否両論ある。プロジェクトの「1DaySooner」の名の通り、一日も早くワクチンを世界に届けるための倫理的な判断が迫られる。
    1Day Sooner Petition To Prepare COVID-19 Human Challenge Trial Facilities Gains Support Of Lord, Nobel Laureate, Oxford Professor Of Medical Ethics

  • ・ヨーグルトの「本物の甘味」を実現、新糖分カット技術
  •  減糖技術のリーダー企業であるスイスのFirmenich社が、バイオロジカルソリューションを提供するデンマークのNovozymes社と共同で、新製品「TasteGEM SWL」を発表した。両社の最先端のソリューションを組み合わせ、甘味料を一切使用せずにヨーグルトやその他の乳製品の糖質を最大50%まで低減しつつ、これまでにない自然な味わいを実現する。砂糖が身体に悪いと言われるのには様々な理由があるが、特に体重増加、虫歯、糖尿病、血糖値の急上昇や糖血糖のリスクを高めることが挙げられる。

     糖分やカロリーを抑えた栄養価の高い乳製品を求める健康志向の消費者が増える中、新しい減糖製品開発が求められている。特許出願中のTasteGEM SWLは、糖質を大幅に減らしつつ、牛乳の自然な甘みを引き出し、本物の甘さとクリーミーさを届けることができる点が注目される。「美味しい」を犠牲にすることなく、自然に砂糖をとる回数を減らすことができるのが理想だ。秘密は、画期的なラクターゼソリューション「Saphera」にあるという。Firmenich社は、世界中の顧客が栄養バランスのとれた美味しい製品を消費者に届けることができるよう、減糖技術を提供し続ける。
    Firmenich & Novozymes partner for great-tasting yogurt with unprecedented sugar reduction performance

(タイトル部のImage:Photobank -stock.adobe.com)