「CRF」(cancer-related fatigue)と呼ばれる、がん患者の症状をご存じでしょうか。「がんまたはがんに関連した、つらさを伴う持続的、主観的な疲労感または消耗感」のことで、がん治療中やがん治療終了後の患者が経験する最も頻度の高い症状だといいます。

 このCRFを改善するためのアプリとして、オランダTired of Cancer社が開発したのが「Untire」。このほど、同アプリを用いた臨床試験が実施され、結果が発表されました。果たして…。

2020年10月19~23日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)などが配信したプレスリリースの中から、注目のニュースをピックアップしました。

■がん患者の倦怠感に寄り添うアプリ、12週間で効果

  •  がん患者の「倦怠感」はCRFと呼ばれ、私たちが一般的に日常生活において経験する疲労感とは異なり、がんの治療やがんそのものに伴う症状である。

    (出所:グローニンゲン大学プレスリリース)

     安静や睡眠によって症状が軽減されないことが特徴で、米国ではがんの治療開始後1年以内の患者において発現率が80%を超え、治療後何年も倦怠感が続く患者は30%にのぼると言われる。患者の主観的な感覚に頼る部分が大きいため、症状の評価が非常に難しく、気づかれずに放置されることも多い。

     オランダで最も古い研究大学であるグローニンゲン大学は、CRF改善に向けたモバイルアプリ「Untire」(オランダTired of Cancer社が開発)を使用した臨床試験を行ったことを、学術雑誌Psycho-Oncologyに発表した。試験には、中程度から重度の疲労を持つがん患者やがんサバイバー799人が参加し、Untireを使用したところ12週間の間にCRFが大きく減少したことが確認された。特にアプリを定期的に使用した患者は効果が高く、アプリを3回使用後に効果が現れた患者もいた。

     Untireのコンテンツは認知行動療法、マインドフルネスに基づく認知療法、身体的・心理的リハビリテーションを組み合わせ、教育と継続的なエネルギー測定、ストレスを軽減する瞑想、ビデオとオーディオガイドによるエクササイズで構成されている。CRF改善への効果が実証されたことについて、Untireを開発したドア・ヴォンク氏は「使いやすさが症状の改善効果を高める鍵」と語る。
    Randomized Control Trial Demonstrates Untire is an Effective Digital Therapeutic Against Cancer Fatigue

■毎日2分の呼吸器モニタリング、介護施設の試み

  •  高齢者介護施設にとって、新型コロナは大きな脅威だ。高齢者の中には既往症を抱える人も多く、ウイルス感染による重症化や死亡の可能性が高いからだ。そんな課題に対応するため、呼吸器医療機器開発会社である米MediPines社が、介護施設における呼吸器のモニタリングに関する科学論文を発表した。

    (出所:MediPines社プレスリリース)

     同社が開発した「AGM100」と呼ばれる携帯式の非侵襲性呼吸器モニタリングシステムを使用して、介護施設の入居者の呼吸器モニタリングを定期的に行うことで、呼吸状態に変化があればすぐに気づき、COVID-19による低酸素血症のような隠れた肺の損傷を早期発見する助けとなる、というものだ。

     米疾病対策センター(CDC)も、新型コロナの影響を受けやすい高齢者の呼吸器モニタリングを頻繁に行うことを推奨しており、たったの2分で手軽に呼吸器の測定ができるAGM100を取り入れる施設が、今後増えそうだ。
    COVID-19 Respiratory Monitoring with MediPines AGM100® in Long-Term Care Facilities

■こどものメンタルヘルスについて、家族でオープンに話そう

  •  メンタルヘルスを向上させるアプリや、精神疾患を特定するAIなど、様々なソリューションが開発される中、こどもの心の健康を理解し、コミュニケーションを通して症状を改善する手助けをする絵本が作成された。絵本作家マヤ・ジョンソン氏のデビュー作である「It’s Okay」(2020年11月23日発売)では、主人公のアイビーが両親の助けを借りながら「大丈夫だよ」というシンプルな言葉を教えてもらいながら、うつ病がどのように自分の心と身体に影響を与えているかを、自分で表現する方法を学ぶ。

     「It’s Okay」は自分自身だけでなく、他社とのコミュニケーションを学ぶ物語だ。保護者側も、幼い子供たちにうつ病の感情についてどうやって話したらよいかを理解する助けとなる一冊だ。本に書かれているのは、子供と親共に、自分が経験する感情はすべて重要であり、注意を向ける価値があるということだ。

     うつ病の初期の感情を読み解き、感情を表現することについて家族がオープンな対話を始める方法を子供と親に伝えることが、3児の母でもあるジョンソン氏の目標だという。「大丈夫じゃなくても、大丈夫なんだ」という家族のメッセージを、膝に乗せた絵本が優しく語りかける。
    New Children's Book "It's Okay" by Maya Johnson Helps Parents and Children Talk About Mental Health

■がん診断に革命を起こすシンガポールのスタートアップ企業に投資家の応募殺到

  •  シンガポールのスタートアップ企業X-ZELL社に対し、ドイツ産業サービスグループDeutsche Industrieanlagen(DIAG)主導のシード投資ラウンドにおいて応募が殺到した。革新的な技術を持つスタートアップ企業リストにしっかりとランクインしているこのX-ZELL社とは、一体何をする会社なのかを説明すると、「次世代マルチプレックスと人工知能を組み合わせた特許取得済みのプラットフォーム技術を使用し、少量の血液サンプルから早期のがんを検出する」技術開発会社だ。

    (出所:X-ZELL社プレスリリース)

     本投資ラウンドは当初300万米ドル(約3億1400万円)を上限としていたが、新型コロナの影響により、2020年の初めに400万米ドル(約4億1900万円)まで延長することとなった。投資家が高く評価したのは、X-ZELL社の臨床能力と急速に拡大するネットワーク、チームの高い熱意と、特にこの2年で1日5万件に近い新たながん診断が行われるようになった成果だ。

     「がん診断に革命を起こす」と言われる高い診断技術を、強力な商業化計画に落とし込む能力もあり、まさに技術革新と実行力を持ち合わせた将来有望な企業だ。創始者兼CEOのセバスチャン・バクディ博士は「最も不安定な時期にもタイ、シンガポール、欧州の各チームが冷静かつ積極的に行動し、再調整を繰り返しながら集中力を保持した。このチームが、世界を変える」と意気込む。
    X-ZELL closes oversubscribed Seed+ round

■コロナ後の人材戦略、企業の免疫力を高める6つのヒント

  •  世界的なコロナ危機を乗り越えるため、企業に求められるのは現状を迅速に評価して変更を実施し、リモートワークを推進することだ。組織の人材管理戦略を再調整して、コロナによるビジネスへの影響を最小限に食い止めるにはどうしたら良いか、オーストラリアServcorp社がヒントを紹介する。

     Servcorp社はワークスペースのプロバイダーであり、拡張可能なプラグアンドプレイ(周辺機器を自動設定できる)サービスオフィスやコワーキング、バーチャルオフィスソリューションを提供している。それ以外にもチームサポートやIT・電話インフラを月単位で即日稼働させるサービス支援も行っている。

    (出所:Servcorp社プレスリリース)

     では、コロナ時代を切り抜けるためにServcorp社が提示する6つのヒントを簡単に紹介する。

    1)再考と再起動。組織がどう変化に対応していくのか、今回のパンデミックの例を基に、将来のいかなる変化にも対応できる、柔軟な組織を再編成する。

    2)安全性の確保。従業員の身体・精神面の健康を守るための新技術の導入。ノータッチドア、手指消毒器、リモートログイン、デスクシールドなど。

    3)機能性の拡充。在宅勤務がニューノーマルになりつつある中、従業員をリモートで管理するための講習会の実施など、企業にとっては慣れない点も多い。しかし、良い点としては紙資料を大幅に節約できるようになったこと等、コストの削減が挙げられる。コワーキングスペースを導入すれば、必要な時だけ必要なツールにアクセスできる環境が整い、高額な間接費をかけずに利用できる。

    4)一人ひとりのリーダーシップの醸成。物理的に離れた従業員同士のつながりや連携を促進するために、どのようなポリシーやコミュニケーションをとっているかを確認。

    5)ギャップの特定。従業員が急に病気になった場合に備え、コンティンジェンシープランはあるか。

    6)将来の仕事の訓練。パンデミックにより、デジタルトランスフォメ―ションやリモートワークは急速に加速したが、コロナ後も従業員1人ひとりが粘り強い「レジリエンス(回復力)」を維持するために、再スキルアップを図ることが重要だ。

     まとめると、「予期せぬ事態を想定し、可能な限りの可能性を包含した人材計画を策定すること」か。企業の免疫力の強化が求められる。
    Servcorp shares 6 steps to a productive workforce management strategy

(タイトル部のImage:Photobank -stock.adobe.com)