2020年11月21~27日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)などが配信したプレスリリースの中から、注目のニュースをピックアップしました。

■米Braid Health社の画像診断モバイルアプリがFDA承認

  •  医師が自分のデバイス上のモバイルアプリから医療用画像を診断できる、米Braid Health社のAI診断連携ソフトウエアが、米国食品医薬品局(FDA)に承認された。医師や放射線技師が、診断用画像にどこからでもリアルタイムにアクセスし、注釈を加えて迅速に診断結果を患者と共有できるようになる。大手医療施設や緊急治療クリニック、街中のスーパーにあるクリニックなど、どこからでもすぐに診断連携できるようになり、コスト削減にもつながるとしている。

    (出所:Braid Health社プレスリリース)

     Braid Health社は2018年、Apple WatchやiPhone、Siri開発を手掛けたケビン・ケネソン氏とアレサンドロ・サバテリ氏が共同で創立。同社を投資面で支えるのは、米VCのLux Capital社、Twitter社の元CEOのディック・コストロ氏や元COOのアダム・べイン氏だ。Braid Health社CEOのケネソン氏は「モバイル機器の技術革新のペースは驚異的だ。今のスマホは数年前に購入した放射線技師用ワークステーションの4倍のトランジスタ数を持つ。画面の解像度は一般的な視距離でも6Mピクセルの医療用ディスプレイの解像度を超え、コントラスト比は1000倍だ」とモバイル機器の可能性を語る。

     Braid Health社のプラットフォームはアプリをインストールしなくても、QRコードをスキャンするだけでデバイスからアクセスできる。また、既存のPACS(医療用画像管理システム)や画像ストレージシステム上に重ねることができるため、医療機関は高価なソリューションを追加で購入する必要がない。エッジコンピューティングとGPU(グラフィックスプロセッサ)ベースのDICOMGSDFキャリブレーション(グレースケール標準表示関数に沿った校正)の研究により、レガシーソリューションの10倍の速度でDICOM画像を提供し、米国家安全保障局(NSA)が承認した暗号化技術を使用して常時PHI(個人健康情報)を保護する。

     ソフトウエアに搭載した品質保証のためのAIがエラーを回避し、医師による解釈の精度を高める。従来、診断のための画像処理プロセスは遅延が多く、医師と患者間のコミュニケーションの障害となっていた。これからは、医師がどこにいても、どのデバイスからでも、今までにない方法で高品質のフル画像を簡単に確認し、迅速な診断が提供可能になる。
    Braid Health granted FDA clearance for AI-powered diagnostic collaboration platform

■眼の画像から初期のパーキンソン病を検知、北米放射線学会(RSNA)

  •  北米放射線学会(RSNA)の年次総会において、「眼の検査でパーキンソン病の兆候を早期に検知する技術」が発表された。眼の画像にAI機械学習技術を組み合わせる検査だ。パーキンソン病の特徴として、神経細胞が衰退することで網膜の壁と眼球の裏側を覆う組織の層が薄くなること、また網膜の微小血管系にも影響が生じることがわかっている。こういった特徴を眼の画像からAIで解析することで、パーキンソン病の兆候を検知できるようになるかもしれないという。

     研究には1989年頃に開発されたサポートベクターマシン(SVM)学習と呼ばれるAIを導入している。SVMを訓練することで、パーキンソン病患者の眼の背面の画像から病気の兆候を検出し、機械学習ネットワークが網膜の小さな血管を手掛かりに、パーキンソン病を分類できることが示された。これにより、眼の画像から脳の病期が診断できることがわかった。眼の画像は眼科クリニックで一般的に使用されている機器で撮影することができ、特殊なレンズをつけたスマートフォンでも撮影可能だという。

     これまでパーキンソン病の診断は、主に震えや筋肉の硬直、バランス感覚の障害などの症状に基づいて行われてきた。しかし、こういった症状が発症するのは既に患者のドーパミン神経が大きな損傷を受けた後であり、病気が進行してから初めて診断できるという課題があった。簡単な眼の画像から病気が診断できるようになれば、MRIやCTなどに高額を費やすことなく、年次の健康診断でパーキンソン病の兆候を検知することが可能になるかもしれない。

     本研究の主著者、フロリダ大学ゲインズビル校の生物医学工学博士課程の学生であるマクシミリアン・ディアス氏は「将来的には、眼の画像診断をパーキンソン病だけでなく、アルツハイマー病や多発性硬化症にも応用できるのではないか」と期待を滲ませる。
    Eye Exam Could Lead to Early Parkinson's Disease Diagnosis

■英社の神経筋電気刺激パッド、Most Innovative MedTech Company2020を受賞

  •  英国の医療デバイス企業Sky Medical Technology社の神経筋電気刺激パッド「geko」が、International Life Science AwardsのMost Innovative Medtech Company2020を受賞した。この賞はライフサイエンス業界に最も貢献したイノベーターを表彰するもので、医療、予防接種、農業、感染制御、水質浄化、医療技術などの分野でイノベーションを起こした人を称える。COVID-19パンデミックの中、医療業界を革新すべく尽力する企業の動向に対し、今年は特に注目が集まっている。

    (出所:Sky Medical Technology社プレスリリース)

     gekoは膝に付けて神経筋を電気刺激する、使い捨てパッドだ。骨髄神経を刺激することで足とふくらはぎの筋肉のポンプを活性化し、ふくらはぎの深部静脈の血栓を予防する。重さわずか10gで静音、ワイヤーもリード線もない電池式のgekoパッドは、自己接着性があり、快適な装着感だ。血栓の予防、整形外科手術後の腫れに関連した合併症、創傷治癒に関連した血管疾患に効果がある。英国国立医療技術評価機構(NICE)のガイダンス(MTG19)では、標準的な予防治療が行えない全ての入院患者に、VTE(静脈血栓塞栓症)を予防するためにgekoの使用を推奨している。

     受賞を受け、同社CEOのバーナード・ロス氏は「gekoが様々な病状の治療に役立っている実績を、イノベーションとして認められた。新型コロナに直面する中、医療分野の臨床医が様々な課題を克服するために医療機器のイノベーションに頼ることは不可欠だ」と述べた。
    Sky Medical Technology Ltd named Most Innovative MedTech Company 2020

(タイトル部のImage:Photobank -stock.adobe.com)