2020年11月28日~12月4日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)などが配信したプレスリリースの中から、注目のニュースをピックアップしました。

■「ポイントオブケア超音波」、米Clarius社が最新アプリ

  •  米Clarius Mobile Health社は2020年11月25日、最新版アプリ「Clarius Ultrasound App7.3.0」をリリースした。同社のポータブルワイヤレス超音波スキャナー「Clarius PA HD」と一緒に使うことで、医師は患者のベッドサイドで高解像度の心臓画像診断ができるという。

    (出所:Clarius Mobile Health社プレスリリース)

     世界的なパンデミックの中、隔離された病室から病室へと持ち運び可能な、高精度のポータブル超音波スキャナーの需要が高まっている。Clariusのデバイスはワイヤーがなくコンパクトで消毒も簡単。アプリはiOSとAndroidに対応している。

     Clarius社がポータブルスキャナーを開発したのは2016年。以降、米国、欧州、豪州、香港、インドネシア、韓国など50カ国以上で2万7000人のユーザーが、75万回以上スキャンに利用してきたという。リリースされた最新版アプリは最新式の8ビームフォーミングと呼ばれる技術により鮮明な心臓超音波画像を提供し、その画像品質は従来の病院の大型の超音波診断システムに匹敵するという。

     Clariusスキャナーは米HIPPA法に準拠したClariusクラウドに無料でアクセスでき、ビルトインのPDFツールを使用して医療レポートを印刷、保存、共有できる。ユーザーはデバイスやクラウドに画像を保存して管理することも可能だ。

     心臓や胸部、血管を患者のベッドサイドで迅速に診断・評価する技術は、「ポイントオブケア超音波(POCUS)」と呼ばれ、米国心エコー図学会(ASE)にも認められている。
    High-Definition Handheld Ultrasound Scanner Available Now for Rapid Bedside Cardiac Exams

■「ノーコンタクト緊急治療キット」、米ThereCare社

  •  新型コロナウィルスの影響で病院へ行くのを避ける人が増える中、米ThereCare社は在宅診療をより受けやすくする「ノーコンタクト緊急治療キット」を発表した。箱の中身には、米Eko Devices社のBluetooth聴診器と心電図、ワイヤレス耳鏡カメラ、血圧計(リストカフ)、血中酸素濃度計、使い捨て体温計、そしてこれらの機器に接続して、医師の遠隔医療訪問を可能にするiPhoneが備えられている。

    (出所:ThereCare社プレスリリース)

     このキットを使用して、専門医が患者の心臓や腹部、肺の状態、喉や耳のバーチャル診察を行い、喉の痛み、咳、インフルエンザの症状、発熱、悪寒、発疹などの病状を評価。緊急医療機関を受診する必要性を確認しながら、患者に合った個別の治療プランを策定できる。

     キットは、ThereCare社のWebサイトで注文するか、薬局にあるThereCareロッカーで受け取ることができる。キットを受け取ったら、医師のバーチャル診察を予約・受診し、治療計画を策定する。診察が完了したら、キットは注文した時と同じ方法で返却する、という仕組みだ。
    No Contact Urgent Care Revolutionizes Telemedicine As Pandemic Continues Into 2021

■お腹周りの内蔵脂肪から心臓発作と脳卒中を予測、RSNA

  •  お腹周りの内蔵脂肪のCT画像を解析するAIにより、心臓発作や脳卒中を正確に予測する研究が、北米放射線学会(RSNA)の学術集会で発表された。従来、心血管のリスク測定は、BMIに基づいて行われてきたが、ボストンのブリガム・アンド・ウィメンズ病院の研究者チームによると、実はBMIは心臓発作や脳卒中と関連しておらず、関連しているのは、お腹周りの「内蔵脂肪面積」だということが分かったという。

     同じBMIの人でも筋肉と脂肪の割合には著しい違いがみられる。内蔵脂肪面積を算出するには、腹部のCTスライス画像から皮下脂肪・内蔵脂肪・骨格筋の堆積を測定して割合を算出する必要がある。医師や医療スタッフが手動で一つひとつ調べるとなると、コストも時間もかかる。そこで、解決策として、AIによるディープラーニングを用いてCT画像から体組成の指標を自動的に解析する手法が開発された。

     今回の研究を行ったのは、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院の放射線科医、データサイエンティスト、生物統計学者を含む研究者チーム。研究には、2012年にボストンの旧Partners HealthCare(現Mass General Brigham)で実施した2万3136人分の腹部CT外来検査3万3182件のデータが使用された。そのうち1万2128人の患者は撮影時に心血管系やがんの診断を受けておらず、その後5年以内に心筋梗塞(心臓発作)を起こした患者は1560人、脳卒中を起こした患者は938人であった。

     研究者グループはCTスライス画像の「L3」位置(第3腰椎)を用いて各患者の体組成の統計解析を行ったところ、内蔵脂肪面積のみがその後の心臓発作や脳卒中と関連していることが示された。内蔵脂肪面積の割合が高い患者グループは心臓発作を起こす可能性が高く、内蔵脂肪面積が最も少ないグループは、腹部CT検査後数年間発作を起こしていなかった。つまり、BMIは心臓発作や脳卒中とは関連しておらず、CT画像による内蔵脂肪面積の測定が将来的な心血管リスク予測に有効に働くことがわかった。

     今回の研究に参加したカリフォルニア大学サンフランシスコ校の腹部画像・超音波研究員であるキルティ・マグディア博士は「AIを活用し、既存のCT画像データから新たな情報を抽出することで、臨床ケアの向上につながる」としている。
    AI Abdominal Fat Measure Predicts Heart Attack and Stroke

(タイトル部のImage:Photobank -stock.adobe.com)