2020年12月3~9日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)などが配信したプレスリリースの中から、注目のニュースをピックアップしました。

■ゲノム配列解析アプリ「iGenomics」を開発、米Cold Spring Harbor研究所

  •  米Cold Spring Harbor研究所(CSHL)が、ゲノム配列を解析するiPhoneアプリ「iGenomics」を開発した。iPhoneとポータブルなDNAシーケンサーをペアリングすると、どんな場所も遺伝学研究室に変身する。アプリはiOSデバイス上で動作するため、現場でノートPCや大型機器を使用する必要がない。

     iGenomicsをプログラミングしたのは、Facebook社のソフトウエアエンジニアであるアスピン・パラトニク氏。パラトニク氏は14歳のインターン時代から8年間に渡りCSHLのマイケル・シャッツ准教授の研究室でiGenomicsの開発に携わり、このたびついに完成版を発表した。

    (出所:Cold Spring Harbor研究所プレスリリース)

     iGenomicsアプリと一緒に使用するのは、英Oxford Nanopore社の小型DNAシーケンシング装置だ。従来、DNAの研究はアラインメント(調整)や分析などを大がかりなサーバ・クラスタや高性能のPCで行ってきた。そのため、遠隔地で分析を行う場合は研究者がスーツケースにたくさんの装置を詰め込んで移動する必要があった。

     iGenomicsがあれば、ゲノム研究がどこでも手軽に、費用をかけずに行うことが可能になる。また、ユーザー同士でシーケンシングデータをAirDropで共有することで、リモートからのDNA解析もできるようになる。シャッツ准教授は「宇宙で行うDNAシークエンシングに関心が高まっている。何とかしてiGenomicsを宇宙で使えるようにする方法がないか、模索中だ」と語る。

     パラトニク氏とシャッツ准教授は、バイオメディカル情報誌「Gigascience」に、iGenomicsのアルゴリズムを使ってインフルエンザウイルスやジカウイルスなどのウイルス性病原体のDNA配列を迅速にマッピングし、診断や治療に重要な変異を特定できることを報告している。また、オンライン講座を提供し、SARS-CoV-2患者から採取したウイルスゲノムの解析について解説している。

     シャッツ准教授は「誰もがプロ用のカメラをポケットに持ち歩く時代になった。数年後には、スマホのDNAシーケンサーを持ち歩くようになるかも知れない。この装置が、環境を測定したり、病原体を発見したり、自分の身体をスキャンしたりする一助となることを願っている」と述べた。
    The world's first DNA "tricorder" in your pocket

■スマホで30分のCOVID-19検査、米Gladstone研究所などが開発

  •  綿棒で鼻の検体を採取し、デバイスに入れて15~30分後にスマホが検査結果を読み上げる――。米Gladstone研究所、カリフォルニア大学バークレー校・サンフランシスコ校の研究チームが、「CRISPR」を使った新たなCOVID-19検査法を開発し、科学誌「Cell」に発表した。この技術を共同開発した1人、Gladstone研究所上級研究員のジェニファー・ダウドナ博士は、本研究の鍵となる「CRISPR-Cas」ゲノム編集技術の発見により、2020年のノーベル化学賞を受賞した人物だ。

    (出所:Gladstone研究所プレスリリース)

     新型コロナ感染の特徴は、感染者の多くが軽症か無症状のまま、気づかないうちにウイルスを拡散している点にある。パンデミックを収束させ、世界中のコミュニティを完全に再開するには、無自覚の感染者を特定して隔離し、ウイルスの潜在的な広がりと脅威を抑え込むことが求められる。課題は、大規模な迅速検査の欠如だ。

     これまでのCRISPR検査は、ウイルスRNAをDNAに変換してから増幅させるという2段階のステップが必要であり、検査結果が出るまでに時間と高度な技術を要する。検査結果が出るまでに数日、あるいは検査処理が滞っている場合は、それ以上待たなければならない。一方、今回開発された新検査では、この2段階の処理をスキップし、ウイルスRNAを直接検出することができるため、迅速な診断が可能となる。

     さらに、この新たな検査は、陽性か陰性の結果を生成するだけでなく、検体の中のウイルス負荷(SARS-CoV-2濃度)を測定することができるという。つまり、検査を繰り返すことで、感染が増加しているか減少しているかが判断できる。患者の感染後の経過を観察することで、回復に必要な期間をリアルタイムで正確に予測することができる。

     スマホを使った検査では、かさばる検査機器が不要なため、将来的には家庭でも使用できる可能性を秘める。スマホから即座にクラウドベースのシステムにアップロードすれば、追跡確認や疫学的研究にも活用できるかもしれない。
    New CRISPR-Based Test for COVID-19 Uses a Smartphone Camera

■クライミングマシンで自宅トレーニング、米CLMBR社

  •  米CLMBR社がスタイリッシュなクライミングマシン「CLMBR」シリーズ(家庭用とスポーツジム用)を発売する。2021年から順次出荷を開始するという。

    (出所:CLMBR社プレスリリース)

     CLMBRマシンは、視界を遮らない開放的な構造で、ユーザーの自然な運動姿勢をサポートする。大型のタッチ画面が搭載され、オンデマンドでインストラクターの指導を受けられる。クライミングクラスを受講すると、標高やパワー、テンポ、目標達成値などを確認しながら自宅でトレーニングに邁進できる。マシンの移動も簡単、衝撃ゼロのため、年齢や経験を問わず、幅広い人が安全に利用可能だ。
    CLMBR, Maker of the World's First Connected Vertical Climbing Machine, Taps space150 as Digital and Creative Agency of Record

(タイトル部のImage:Photobank -stock.adobe.com)