2020年12月31日~2021年1月6日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)などが配信したプレスリリースの中から、注目のニュースをピックアップしました。

■冠動脈疾患のわずかな兆候を自動判別するAI、FDA承認を取得

  •  狭心症や心筋梗塞といった冠動脈疾患(CAD)の兆候を自動判別するAIツール「EchoGo Pro」が、米食品医薬品局(FDA)の承認を得て、米国で発売を開始する。ツールを開発したのは英Ultromics社。臨床医がEchoGo Proを使って冠動脈疾患を迅速に診断し、早期に適切な治療を行えるようになる。

    (出所:Ultromics社プレスリリース)

     米国では毎年80万人以上が心臓病で亡くなっており、これは全死亡者数の3分の1に上る。冠動脈疾患の罹患者は心臓病の中でも特に多く、20歳以上で1650万人以上を数える。その経済的負担は、2035年までに米国だけで7490億米ドル(約77兆円)に達すると予測されており、心エコー(心臓超音波)検査の変革が急務だ。

     冠動脈疾患の兆候の見極めは難しく、臨床医の主観的な解釈によって5人に1人の割合で誤診が発生するなど、治療に支障をきたしている。EchoGo ProのAIモデルは英オックスフォードの大規模なデータセットにより開発されたもので、疾患の判定や病気の予測など、医師の正確な診断をサポートする。治療の早期介入により、心臓発作の減少と患者ケアの改善を目指す。

     EchoGo Proはクラウドによるサービスであり、医師は専用のソフトウエアがなくても瞬時にレポートを受け取れる。心エコー図の解析をクラウドにより自動化することで、臨床医の作業時間は大きく短縮されることになる。Ultromics社の創設者兼CEOのロス・ウプトン博士は「診断にかかる時間短縮および患者ケアの改善のため、もっと医療にAIを活用し、迅速かつ自動化へ移行する必要がある」と語っている。
    Ultromics receives FDA Clearance for a first-of-kind solution in Echocardiography to help clinicians diagnose disease

■使い捨て患者隔離ユニット、FDAが緊急使用許可

  •  米SCONE Medical Solutions社と米Mayo Clinic総合病院は、病院内の感染症を封じ込める新技術「負圧隔離装置(SCONE)」を共同開発した。2020年12月18日に米食品医薬品局(FDA)の緊急使用許可がおり、2020年末より全米にSCONEの配布が開始された。

    (出所:SCONE Medical Solutions社プレスリリース)

     SCONEは、病院のベッドに取り付ける使い捨ての患者隔離ユニットで、ベッドを安全かつポータブルな空間とすることができる。救命救急部門(ER)のトリアージ(治療優先度の判定)、患者の搬送、AGP(飛沫などエアロゾルが発生する医療措置)、家族の面会、終末期ケアなどでの使用が想定されており、繰り返し使用することができる。

     コロナ禍において、患者から医療従事者への感染が起きるリスクとして懸念されるのが、AGPの最中である。SCONEは患者の頭部から首付近までのエアロゾル粒子(空気中を漂う微粒子)を負圧により吸引、拡散を抑制して、医療スタッフや他の患者を院内感染から守る。使用後はベッドから外し、そのまま廃棄することが可能だ。

     救急救命部門の医師であり、SCONEのチーフメディカルオフィサーであるブランダン・ロレンス博士は、COVID-19患者をパンデミックの初期の頃から治療している。

     ロレンス博士は「医療機関において、感染を防ぐデバイスの需要はひっ迫している。保護デバイスに負圧技術を搭載しているSCONEを活用することで、医師はCPAP治療(持続陽圧呼吸療法)やBIPAP治療(マスクなどを使用する人工呼吸器)、ネブライザー治療などをより安全に行えると共に、終末期には家族の看取りも可能となる」と語る。
    SCONE Medical Receives FDA Emergency Use Authorization for Novel Aerosol Infection Containment Device

■Alexaの活用で病室をスマートルームに変える

  •  病室をスマートルームに変える「Aiva」技術が、フロリダのタンパベイ地域の14の病院、2500の病室に導入される。米国の非営利組織BayCareが開発した医療サービスシステムであるAivaは、現在St. Joseph’s Hospital(北)に実装されている。2021年末までに他の病院へ順次展開される予定だ。

     Aivaは、スマートスピーカーを介して、患者がリクエストを医療スタッフなどに伝える音声システムだ。患者は病室に設置されたAlexaデバイスを通して、スタッフに毛布や水など必要なものを伝えたり、テレビや音楽、ニュース情報などを「ハンズフリー」で操作することが可能。入院生活をより快適にするためのサポートを受けられる。

     患者からの要望は、適任とされる医療スタッフに送信される。医療担当者はコミュニケーション用のBayCare iPhoneで患者からのリクエストを受け取り、シームレスな接続が実現する。Aivaは2019年にSt. Joseph’s Hospital(北)とWinter Haven病院で試験運用され、患者はAivaの技術に高い満足度を示したという。

     Aivaの導入は、既に大勢が利用しているAlexaの音声アシスタント技術を病室に取り入れることで、患者の回復を支援することが狙い。今後、BayCareでは、病室の電気や温度の調整、窓のカーテンの開閉など、部屋全体の操作を音声で管理できるようにする計画だ。

     Winter Haven病院の看護師は「幅広い選択肢の中から好きな音楽やゲームを自由に選べるようになるなど、病院における患者の生活の向質は歓迎すべきこと」と、Aivaが提供するスマートルームのサービスに好意的だ。Aivaの普及は、コンシューマーフレンドリーな技術を医療分野で活用する一例となる。
    BayCare Harnesses Alexa Technology for Better Patient Experience

(タイトル部のImage:Photobank -stock.adobe.com)