2021年1月29日~2021年2月4日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)などが配信したプレスリリースの中から、注目のニュースをピックアップしました。

■米トーマス・ジェファーソン大で次世代脳卒中治療の臨床試験スタート

  •  インプラント(体内に埋め込んだ医療機器)を介し、脳をコンピューターにつなぐことによって、脳卒中患者の運動機能を回復させることはできるのか? 米トーマス・ジェファーソン大学は、脳卒中の後遺症を抱える患者の脳に電極インプラントを埋め込み、麻痺が残る患者の腕に装着したロボット装具へ神経信号を送信する臨床試験を開始した。近い将来、脳卒中による後遺症患者の有力な治療法の1つになる可能性が期待されている。

    BCI(出所:米トーマス・ジェファーソン大学)

     本試験の主任研究者であるミジェイル・セルーヤ医学博士は、15年前に初めて人間の脳の電極インプラントの施術を行った研究員の1人だ。

     過去に行われた臨床試験では、首から下が麻痺した脳幹脳梗塞や脊髄損傷、あるいはロックイン症候群などといった、重篤で稀な症状の患者が対象となっていた。今回のように、歩行などある程度自分で身体を動かすことができる患者が被検者になるのは初の試み。セルーヤ博士は「脳卒中の患者は失われた機能を補うため、予想のつかない動きをすることがある。麻痺の残る身体を動かすためには学ばなくてはならないことが多い」と話す。

     実際の試験では、患者の脳組織に脳信号を記録するための電極を埋め込み、頭蓋骨からワイヤーを介してコンピューターに接続。患者が身体を動かそうとする意思、すなわちニューロン信号をAIのアルゴリズムが解読し、ロボットアームや筋肉刺激装置を動かす仕組みだ。運動機能が失われた患者でも、訓練を受けることで、自分の意思で信号を発することができるようになるという。

     ただし現状では、米食品医薬品局(FDA)により、脳に埋め込む電極インプラントの使用が認められているのは、研究目的のみ。また、ワイヤーを介しての接続は、利便性に課題がある。複数の企業がBCIインプラント(ブレイン・コンピューター・インタフェース)を開発中ではあるものの、現時点ではワイヤレス電極のヒトへの使用は承認されていない。

     米国では40秒に1人が脳卒中を発症し、約4分に1人が死亡している。脳卒中が起きると、血栓や出血により脳機能の一部が停止してしまい、身体の制御が困難になる。現在も、後遺症に対する治療法は存在するものの、脳卒中発生から短期間で行わないと効果が少ないなど、課題が多い。本臨床試験は、こうした脳卒中による長期的な後遺症を抱える患者が、より短期で、より高水準の回復ができるようになることを目指す。
    Can Brain Implants Improve Mobility After Stroke?