2021年2月26日~2021年3月4日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)などが配信したプレスリリースの中から、注目のニュースをピックアップしました。

■アスリートの脳を衝撃から守る「Q-Collar」がFDA承認

  • (出所:Q-CollarのHP= https://qcollar.ca/

     スポーツ選手(13歳以上)の首に装着、頭部に繰り返し受ける衝撃から脳を保護する新しい装置が、このほど米国食品医薬品局(FDA)に承認され、発売が開始される。米Q30 Sports Science社が開発した「Q-Collar」と呼ばれるこの装置は、C字型で首輪のような形をしている。内頸静脈に圧力を加え、血液量を増やすことで衝撃時の脳の振動を減らし、脳損傷を防ぐというものだ。

     一般的に、事故で頭部が衝撃を受けると、頭蓋内で脳が激しく揺れたり、周囲の組織に接触したりするなど「スロッシュ」と呼ばれる状態が起きる。Q-Collarは血管中の血液量を増やして頭蓋内の脳の動きを抑制し、スロッシュを軽減して衝撃から脳を保護する。今回のFDA承認で、スポーツ選手が普段使用している保護用品にQ-Collarを加えることによって、脳をより安全に保護できるようになる。

     外傷性脳損傷(TBI)は、頭部や身体への強い打撃や衝撃により、頭蓋骨を突き破って脳内に侵入した物体により引き起こされる。米疾病予防管理センター(CDC)によると、2006年から2014年までの間、TBIに関連した救急部門の受診数、入院数、死亡数は53%増加している。特にスポーツ関連の負傷によるものが多く、米国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)は、米国では毎年160万~380万人がスポーツ・レクリエーションによりTBIを発生しているとしている。

     FDAは、Q-Collarの安全性と有効性を評価する複数の研究を検証した。米国の高校サッカーチームに所属する13歳以上の284人を対象とした縦断的研究では、139人の選手がQ-Collarを装着、145人の選手が装着しないでシーズンに参加。シーズンの前後に選手のMRI(磁気共鳴画像検査)を行い、特殊なMRI画像である脳の拡散テンソル画像(DTI)を使用して、脳の構造的な変化を比較した。

     この研究の結果、Q-Collarを装着しなかった145人のうち106人(73%)は、電気神経信号の伝達に関与する脳の深部組織(白質領域)に有意な変化が認められた。一方、Q-Collarを装着した139人のうち107人(77%)に有意な変化は認められず、Q-Collarの使用によって脳が保護されたことが分かった(装置の使用が原因と見られる有害事象は認められなかった)。

     今のところ、Q-Collarの装着だけで脳震盪や重度の頭部損傷を防げるというデータはない。Q-Collarはヘルメットや肩パッドなど、保護用品と一緒に着用することで効果が期待できる。同装置は連続で最大4時間まで装着可能で、使用開始後2年で交換する必要がある。装置着用の処方箋は不要だが、使用に際しては医療専門家に相談することが望ましいとされる。

     Q-Collarは、リスクが低度から中度の新しい医療機器を対象としたFDAのDeNovo市販前申請に基づいて審査された。FDAはこうした装置用の新たな分類を設け、今後このような安全性と性能を示す機器の開発を後押ししようとしている。
    FDA Authorizes Marketing of Novel Device to Help Protect Athletes' Brains During Head Impacts