2021年6月19~25日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)などが配信したプレスリリースの中から、注目のニュースをピックアップしました。

■1回の血液サンプルから命の残り時間を予測、アイスランドdeCODE genetics社

  • (出所:deCODE genetics社プレスリリース)

     米Amgen社の子会社deCODE genetics社の研究者らが、Communications Biology誌に掲載された論文の中で、血液中のたんぱく質データを用いて人の寿命を正確に予測する方法を開発したと発表した。deCODE社はアイスランドのレイキャビクを拠点に、ヒトゲノムの研究・解析において世界をリードする企業だ。独自のヒト遺伝子解析技術に加え、トランスクリプトミクスやプロテオミクス、膨大なデータを駆使し、数十種類の疾患の危険因子を発見し、発症メカニズムに関する重要な知見を提供している。

     研究者らは、2万2913人のアイスランド人(うち、調査中に7061人が死亡)を対象に約5000件の血液中のたんぱく質データを収集し、これまで使われてきた危険因子に基づく予測よりも優れた方法で、「人の命の残り時間」を正確に予測する技術を開発した。この予測法を使うと、60歳〜80歳のグループの中で最も高リスクの5%の層(10年以内に88%の人が死亡)と、最も低リスクの5%の層(10年以内に1%の人が死亡)を特定することができる。

     科学者らは個々のたんぱく質と死亡率の関連を調査し、ほとんどの死因に対し、類似したたんぱく質プロファイルがあることを発見した。中でも、以前から死亡率や老化との関連が指摘されていた成長・分化因子15(GDF15)が、死亡率を予測する重要な因子であることがわかった。また、短期間で死亡するリスクが高いと予測された人はリスクの低い人に比べて平均して握力が弱く、運動耐容能テストと認知機能テストの成績も悪いことがわかった。

     論文の最終著者であるカリ・ステファンソン氏は、「優れた方法であるとともに、恐ろしさもある。人の健康状態は血漿プロテオームに反映されるため、一人につきたった1つの血液サンプルを使うだけで、大規模なグループを簡単に比較することが可能となる。これは、臨床試験における治療効果を推定するのに役立つだろう」と説明する。
    deCODE genetics: Predicting the probability of death

■プロ仕様の呼吸トラッキング&カロリー測定デバイス発売、米Calibre Biometrics社

  • (出所:米Calibre Biometrics社プレスリリース)

     米Calibre Biometrics社が、これまで一般の人の手には届かなかった呼吸測定ウエアラブルデバイス「Calibre」の販売を開始する。呼吸測定に基づく代謝モニタリングは、既に1世紀以上前からスポーツ医学で活用されてきた手法であり、医師やスポーツトレーナーの究極のツールとされてきた。呼吸測定はカロリー消費量、脂肪燃焼、酸素利用率、有酸素性フィットネスなどの代謝パラメータをリアルタイムかつ正確に測定する方法として、信頼度が高い。

     Calibreは息の量と成分を継続的かつ正確に測定する。つまり、身体の動きや脈拍を測定する一般的なモニタリングデバイスとは異なるアプローチをとる。これまで病院でしか得られなかった医療レベルの生体情報が、今後アプリを介してリアルタイムに提供できる。Calibreの売りは精密なモニタリングアプリ機能、50g以下の超軽量デバイス、14時間以上のバッテリー寿命、装着しやすさと清潔さ、小型でポータブルなフォルム、呼吸のしやすさだ。

     「メタボリックカート」を超軽量のウエアラブル装置に組み込み、生体データをスマホに送信する仕組み。アプリは、酸素の使用量やCO2の生成量、呼吸量や速度などすべてのデータを分析する。カロリー、脂肪、炭水化物の総燃焼量を化学的な精度で測定するほか、ケトーシス(エネルギー源が糖質からケトン体に切り替わった状態)や過呼吸などの呼吸器系、代謝系のパラメータも確認できる。

     Calibreは運動をしている時だけでなく、イスに座って休んでいる時もデータを測定、保存、表示する。こうすることで、長期的な身体の状態の変化や外的要因による影響を比較・評価できる。ユーザーは身体の代謝やパフォーマンスへの影響を、カスタマイズ可能なダッシュボードを使ってより深く理解し、運動効果や健康状態の向上に役立てることができる。

     MITで学んだ物理学者であり、Calibreの生みの親であるウディ・メイラフ博士は「Calibreを発売することで、長年プロフェッショナルが使ってきたメソッドを一般の人も使えるようになる。手頃な価格で快適に使用できるウエアラブルデバイスからは、驚くほど正確なデータを取得できる」と説明する。現在 https://calibrebio.com/ にて事前注文を受け付けており、発売日は40%の割引が適用される。
    Calibre: The World's Most Accurate Real-Time Calorie and Fitness Tracker

■遠隔地で視力矯正メガネ処方、米PlenOptika社の携帯視力測定装置「QuickSee」

  • (出所:米PlenOptika社プレスリリース)

     携帯性、耐久性、使いやすさ、手頃な価格、高品質を全て実現する視力測定装置「QuickSee」の有効性が、インドのアラビンド眼科研究所、ジョンズ・ホプキンス大学、マサチューセッツ眼耳鼻咽喉科医院の研究者らの論文で発表された。QuickSeeの測定値は従来の検査方法と同じくらい高い有効性があり、専門家や医療機器が不足する地域にQuickSeeを導入することで、眼鏡の処方の拡大が期待できるという。

     QuickSeeの目標は、視力矯正を通じたグローバルヘルスの改善だ。屈折異常は世界的に注目を集めている。Lancet誌が2021年2月に発表した報告書によると、全世界で10億人以上が遠視または近視の障害を抱えており、少なくとも年間4100億ドル(約45兆円)の生産性損失をもたらしているという。また、視力低下が生活の質、教育、労働力の機会に与える影響を強調し、視力矯正が国連の持続可能な開発目標(SDGs)の多くを支えると指摘している。

     米PlenOptika社のCEOであり、QuickSee開発者の一人であるシヴァング・デイヴ博士は、「QuickSeeの目標は、全ての人がどこでも正確な視力検査をできるようにし、患者の生活を変えることだ。この技術は中低所得国だけでなく、視力ケアの格差が残る米国のような裕福な国でも役立つだろう」と期待を寄せる。患者が医療機関を利用できる裕福な国でも、QuickSeeの技術は老人ホーム、地域保健センター、眼科医療センターなどで医師が現地でケアを提供し、多くの患者を効率的に管理するのに役立つという。

     QuickSeeの開発には米国立衛生研究所の眼科研究所からの助成金が使用され、これまで45カ国で300万人以上の視力測定に使用されている。
    QuickSee handheld autorefractor can dramatically increase access to eyeglasses, study finds

(タイトル部のImage:Photobank -stock.adobe.com)