2021年8月28日~9月3日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)などが配信したプレスリリースの中から、注目のニュースをピックアップしました。

■埋め込み式神経刺激装置がFDA承認、脳卒中後の上肢リハビリに有効

  • (出所:米MicroTransponder社プレスリリース)
    (出所:米MicroTransponder社プレスリリース)

     脳卒中発症後6カ月の中等度から重度の上肢機能障害を抱える患者のリハビリ治療を大幅に向上させる、埋め込み式の神経刺激装置「Vivistim Paired VNSシステム」が、FDA(米国食品医薬品局)に承認された。開発したのは米MicroTransponder社。同社はこれまでに難治性てんかんや耳鳴りなど、様々な神経疾患を治療するために、複数のVNS(迷走神経刺激)プラットフォームを開発してきた。Vivistim神経刺激装置は、VNSとリハビリ療法を組み合わせることで、脳卒中によって発症した腕や手の障害の改善に効果がある。

     Vivistim装置は簡単な外科処置で、患者の胸と首の皮下に埋め込むことができる。クリニックなどでいつものリハビリ治療を行う際に、VNSの穏やかな刺激と組み合わせて使うことが可能だ。VNSは神経調節物質の放出を誘発し、リハビリ運動中の神経接続を強化することで、リハビリ治療効果を増大することが実証されている。自宅でのリハビリ運動や、日常生活の中でもシステムを作動させることが可能だ。

     米国で毎年約80万人が罹患する脳卒中。うち60%が脳卒中後約6カ月間、上肢機能障害に苦しんでいる。テキサス大学ヘルスサイエンスセンターのマクガバン医科大学教授であるジェラルド・フランシスコ医学博士は、「脳卒中を発症した患者にとって最も辛いのは、上肢が弱くなり、日常生活の活動ができなくなることだ。しかも、治療法は限られてしまっている。回復には神経可塑性の変化を誘発する必要があるが、従来の治療法の多くは効果が低い。これからVivistimシステムを使用することで、回復効果が大きく高まることに期待できる」と述べる。

     現在、脳卒中後の上肢機能の改善には、集中的なリハビリ療法が最善の治療法とされている。Lancet誌に掲載された試験では108名の被検者に対しVivistimを使用したところ、集中的なリハビリ療法と比較し、上肢の機能に有意な改善が示された。QOL(生活の質)データではVivistim使用者65%が、日常生活の動作に臨床的な改善が見られた。

     MicroTransponder社のCSO(チーフ・サイエンティフィック・オフィサー)のナブザー・エンジニア医学博士は「迷走神経刺激とリハビリを組み合わせることで、神経接続が強化されて運動機能が向上することが、10年以上に渡る前臨床研究で明らかになっている。Vivistimを使用した患者は、集中的なリハビリと比較し、腕と手の両方の機能に3倍の改善が見られた。今後、他の慢性神経疾患患者を助けるためにVivistimプラットフォームを拡大する研究を進めていきたい」と熱意を語る。

     Vivistimシステムは米国で2021年後半から販売を開始し、2022年末までに全米に拡大する予定だ。VNSの埋め込みは、他の治療分野ですでに20年以上行われている施術法を採用しており、安全かつ有効であるとしてFDAに承認されている。現在欧州CEマーク申請中だ。
    MicroTransponder® Receives FDA Approval for Breakthrough Device Benefiting Stroke Survivors

■診察予約をするとスマホに医師の自己紹介動画が自動表示、米VREasyWait社

  • (出所:米VREasyWait社プレスリリース)
    (出所:米VREasyWait社プレスリリース)

     医師が診察前に、患者に録画動画で自己紹介できるツールの人気が高まっている。「VREasyWait」と呼ばれるこの無料ツールは、電子医療記録システム(HER)とシームレスに統合され、HIPAA法に準拠している。患者は診察を予約すると、スマホ画面に医師の動画が自動的に表示される仕組みだ。また、診察前にスマホで簡単に入力できる問診票も用意されており、患者の入力データに基づいて、AIが診察を最適化する。患者体験を向上させるツールとして医師の間でも評判だ。

     1億回にも及ぶ数の診察を対象に行われた最近の調査によると、医師は患者の診察に平均16分14秒を費やしており、そのうちカルテの確認(33%)、書類作成(24%)、説明(17%)が大半を占めていることがわかった。患者は、医師がどんな人かを知る時間がほとんどないままに、診察が終了するケースがほとんどだ。Washington Heightsの泌尿器科のロバート・バレンチェラ医師は「患者が来院前に私の動画を観ることで、親しみを持ってもらっているように感じる。また、組み込まれたAIが、患者の受け入れやワークフローを最適化し、生産性が上がった」と述べる。

     VREasyWaitのAIアルゴリズムは、患者が問診票に記載した病歴に関する情報を分析し、医師に結果を提供する。例えば、咳の症状で診察を希望する患者が過去に乳がんで化学療法を受けていた場合、慢性疾患のない患者に比べて免疫力が低下しているため、より多くの検査を必要とすることがわかる。本ツールを開発した米VREasyWait社のCEOであるジェシカ・ウェイカスター氏は「以前は診療所の管理をしていた。そこで、患者と医師が良好な関係を築くことで、患者の体験が大幅に向上することを実感した。プロ仕様の動画を制作し、VREasyWaitの機能を活用することで、医師は患者と良い関係を構築しながら、生産性を高く維持できる」と語る。
    Doctors are using VREasyWait to introduce themselves to their patients

■喘息ホームモニタリング技術「NuvoAir Home」の効果、米国胸部学会2021で話題

  • (出所:米NuvoAir社プレスリリース)
    (出所:米NuvoAir社プレスリリース)

     大人と子供の喘息の治療と管理に使用する、米NuvoAir社が開発したホームモニタリング技術「NuvoAir Home」の高い臨床効果について、3つの新たな研究結果が米国胸部学会(American Thoracic Society)の第20回国際会議で発表された。患者のアドヒアランス(治療遵守)と満足度が高いことも示された。喘息は患者と医療機関だけでなく、社会全体にとって大きな負担となっている。喘息の診断ミスや誤った治療、自己管理不足により、米国では年間819億ドル(約8.9兆円)、英国では年間62億ポンド(約9400億円)の社会的コストがかかっていると推定されている。正しい自己管理により喘息をコントロールし、病院に行かずに済むことが肝心だが、患者の間では日誌をつけるなどの手動の自己管理は人気がなく、敬遠されがちだ。

     NuvoAirは、呼吸器系疾患を持つ患者が自宅で自分の健康状態をモニターし、結果を医師やNuvoAirケアコーディネーターとリアルタイムに共有できる、人間主導のデジタルケアマネジメントプラットフォームだ。提供される接続デバイスには患者用のアプリがインストールされ、自己管理コンテンツとケアコーディネーションサービスが使用できる。医療機関が使用できるポータルからは、医師が患者のデータを遠隔で監視し、呼吸器系の健康状態の悪化をリアルタイムで把握して、迅速な介入を行うことができる。接続デバイスには、遠隔で肺機能をモニターするBluetooth対応のスパイロメーター(肺活量や換気量を測定する装置)、喘息やCOPDの吸入器に装着してアドヒアランスやテクニックをモニターするセンサー、夜間の咳をモニターするアプリ、アクティビティ・トラッカーなどがある。

     米国胸部疾患学会で発表された1つ目の研究は、ギリシャのIoannina大学医学部が実施したものだ。NuvoAir Homeプラットフォームを使用する患者が、医師の監視を受けずに自宅でスパイロメーターを使った呼吸機能測定をどれくらい実行できるかを評価した。NuvoAir Homeアプリは、カスタマイズされたコーチングとフィードバックを提供し、患者の測定技術向上をサポートする。180日間測定したところ、自宅で行われたスパイロメトリーセッションのうち71%は、米国胸部疾患協会のガイドラインに基づく高品質な測定が実施されたことがわかった。成人の喘息患者が長期間自宅でスパイロメーターを使った呼吸機能測定を行うことで、自己管理と治療を最適化できる、と結論づけている。

     2つ目の研究は、喘息の子供たちを対象に行われたロンドンのRoyal Brompton病院の研究だ。90日間に渡って収集された39人の喘息の子供たちのデータを検証し、スパイロメトリーの結果の品質と遵守状況を調べた。結果、子供たちもNuvoAir Homeプラットフォームを使用し、コーチングを受けることで測定技術が向上することがわかった。また、アドヒアランスも高かった。

     3つ目の研究は、小児に対するスパイロメトリーの受容性を評価する研究だ。喘息の子供18人とその保護者がNuvoAirプラットフォームを約200日間使用した後、その使い心地についてアンケートに回答したところ、被験者はNuvoAir Homeのモニタリングを高く評価した。92.3%が「使用を継続する」と回答、80%以上が「設定や使い方が簡単」、70%が「症状の悪化を察知するのに役立つ」と回答した。

     NuvoAir社のCEOであるロレンゾー・コンソリ氏は「デジタルヘルスツールの成功の鍵は2つある。患者が自宅で効果的に使用できるかどうか、そして使用したいかどうかだ。今回の結果は、NuvoAirが患者の自宅における症状の悪化を検知し、品質の高い管理を行いつつ、医師が遠隔から患者の経過をモニタリングできることを証明している」と語る。同社はボストンとストックホルムにオフィスを構え、最近1200万ドル(約13億円)のシリーズA資金を獲得したばかりだ。
    NuvoAir Respiratory Platform Shows Promise for Long-Term Remote Monitoring of Asthma

(タイトル部のImage:Photobank -stock.adobe.com)