セルフメディケーションと遠隔医療を

(3)在宅医療の推進

 トイレットペーパー、マスク、アルコール消毒剤など家庭で備蓄できるものはある程度、各家庭で準備することが望ましい。トイレットペーパーは家庭外利用が一時的に家庭内使用にシフトすることで品薄になるが、それも2カ月程度で解消されることを学習した。マスクもアルコール消毒剤も供給は比較的速やかであり、各家庭がもう少しパンデミックに備えていれば、ここまで品薄が問題にはならなかったであろう。

 風邪などの疾患は平素から家庭でも管理できるようにしてもよい。そもそも米国などは風邪症状だけではまず医療機関を受診しない。インフルエンザすら日本ほどは抗ウイルス薬に頼らないが、決してそれが社会問題にはなっていない。これを機会に風邪などはセルフメディケーションをもっと積極的に利用すればいいと思う。

 インフルエンザでもそうだが、そもそも症状でつらいのに医療機関を受診して、簡易キットで診断されて処方箋をもらい、薬局に行って処方を待つというのは当人にもよくないし、感染者を隔離するという観点からも合理性に欠ける。そこで、自宅であっても唾液採取を用いてPCRや抗原抗体反応キットで診断し、薬も自宅まで届けられるようなインフラをすぐにでも整備すればいい。ここに遠隔医療システムの必要性が顕在化する。

 唾液では感度が低くて問題なら(ここにイノベーションの余地があるのだが)鼻腔であっても、少しトレーニングすれば、ほとんどの家庭で自己責任において実施可能だと思う。リスクも伴うがメリットが上回るという考え方だ。さらに踏み込んで考えると家庭用小型PCRというニーズもあるかもしれない。パンデミックによらず、普段から、インフルエンザやノロだけでなく、子供の発疹や風疹などの感染症、下痢の原因が何かなど、家庭内で簡単にPCR検査ができれば役に立つかもしれない。

 ただし、日本の医療供給体制の優れた点の一つであるアクセシビリティの良さを維持するためには一定数以上の外来患者も必要であるし、安全性確保の観点から診断や治療に医師の介在は必要だろう。セルフメディケーションの広がりで医療費は少し抑制できるかもしれないが、その分はそもそも米国と比べ低く設定している医師の診断料や技術料に充当し、医師の報酬を維持するという方法がある。