2020年12月、政府は人工知能(AI)やビッグデータといった先端技術を活用した「スーパーシティ」の実現に向けて、全国の自治体から対象エリアの公募を始める。2021年の春をめどに、エリアを選定する予定だ。

 スーパーシティは改正国家戦略特区法で実現が可能になった。対象エリアになると交通や医療、教育、行政手続きなど幅広い分野間でのデータ連携が規制緩和によって認められ、社会課題の解決につながる様々なサービスが生まれることが期待される。

 スーパーシティ構想の登場によって、「最新技術の実装によって社会課題を解決し、生活者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を向上する」というスマートシティが目指す世界の実現がより勢いを増していると言える。

地域金融機関の役割も、より重要に

 人口減少や高齢化、インフラ老朽化などの様々な社会課題を抱える日本において、先端技術の活用によって課題解決を目指すスマートシティへの取り組みは全国で増加している。日経グローカルが全国の自治体を対象に実施したアンケートによると、実に500を超える自治体がスマートシティ導入事業を「実施」「検討」していた(日経グローカル特集「スマートシティーの整備本格化」389号)。

 国内のスマートシティ計画のなかには、技術の「実証実験」の段階にあるものから、喫緊の課題を前に早期に「実装」を図ろうとするものもある。実装段階においては、技術導入を図りながら、その試みを持続可能な取り組みへと推し進めるために、いかに資金調達するかが重要になってくる。いまや、スマートシティを推進する主体(自治体、民間企業、地域協議会など)、エリア特性、展開するスマート事業の内容といった個別の事情に応じて、様々な資金調達手法を検討する時期に来ている。

 そもそも自治体や民間企業のスマートシティへの関わり方には、都市の「統括組織」を担う場合と、都市内で展開する「個別事業」に特化する場合の2つのパターンがある(厳密に言えば、その両方に携わる場合もある)。前者は、まちづくりの全体計画やマネジメントなどを手がけ、後者は交通、物流といった個別サービス事業に携わる。両社が明確に区別されないケースもあるが、おおむねこうした2層構造になっていることが多い(図)。

スマートシティのビジネス構造
スマートシティのビジネス構造
(資料:「スマートシティ2025 ビジネスモデル/ ファイナンス編」から抜粋。三井住友トラスト基礎研究所作成)

 三井住友トラスト基礎研究所PPP・インフラ投資調査部長の福島隆則氏は、2層構造を前提にした場合、「統括組織」へのファイナンスは「コーポレートファイナンス」的なもの、「個別事業」へのファイナンスは「プロジェクトファイナンス」的なものが主流になるのではないかと指摘している。

 また、「統括組織」へのファイナンスは、その街に特化したものとなるため、地域金融機関の役割がより重要になるかもしれない。スマートシティが各地にできるようになると、 各地の「個別事業」を選別して投資する「スマートシティ・ファンド」が登場するかもしれない。ここでは、全国やグローバルに展開する金融機関などが役割を果たせるとも福島氏は指摘する。

国内のスマートサービス事業を調査

 スマートシティにおいて展開されている個別のサービス事業では、幅広い分野のプレーヤーがスマートシティに参加し、新しい事業の創造、新しいビジネスモデル・マネタイズ手法の構築を模索し始めている。自社が持つ技術やサービスを活用して、スマートシティへの参入を試みる企業も増えている。

 実際に国内のスマートシティでは、具体的にどのようなサービス事業が展開されようとしているのか。その実態はあまり見えていない。そこで日経BP総合研究所では、国内のスマートシティ計画を洗い出し、どのようなビジネスが構想されているかを調べた。

 「スマートシティ」についての厳密な定義は存在しないため、調査にあたっては、内閣府「未来技術等社会実装事業」、総務省「データ利活用型スマートシティ推進事業」、国土交通省「スマートシティモデルプロジェクト」「新モビリティサービス推進事業」「日本版MaaS推進・支援事業」、経済産業省「地域新MaaS創出推進事業」に選定された計画を中心としながら、各種報道からスマートシティと称した計画を対象とした。

 国内のスマートシティ計画のなかで展開されている「ビジネス(先端技術を活用したサービス事業)」をピックアップしたうえで、 そのビジネスにおいて活用する「スマート技術」やキーワードも整理している。

 例えば、自動運転やMaaSといった、都市のスマート化を支える技術や仕組みの開発が進む「モビリティ関連事業」をとっても、移動手段を主軸に都市の活性化を狙うケースや、観光、買い物・レジャーの促進、不動産価値の向上など、様々な分野と連携しながら、多くのバリエーションが見られる。

多様なファイナンス手法が試される

 この調査結果は、三井住友トラスト基礎研究所と日経BP総合研究所の共著によって、 2020年12月発行のレポート「スマートシティ2025ビジネスモデル/ファイナンス編」に掲載している。

 このレポートでは、スマートシティで活用されるファイナンス(資金調達)手法も整理した。手法としては、銀行など金融機関からの借入や社債、地方債をはじめ、プロジェクトボンド、グリーンボンド、TIF(Tax Increment Financing)、ソーシャルインパクトボンド(Social Impact Bond)などが挙げられる。海外では自治体のインフラ整備において「アセット・リサイクリング・イニシアティブ(Asset Recycling Initiative)」という手法も生まれている。また、スマートシティに特化したファンドも登場しており、光ファイバー網設備やスマートライティング事業などに投資実績がある。

 国内のスマートシティのファイナンス、ビジネスモデルについては、まだ手法が確立されたわけではなく、模索を始めた段階にある。今後、海外での先行例も参照しながら、多様な手法・モデルが試されることになる。

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著者:三井住友トラスト基礎研究所、日経BP総研
A4判、204ページ、 2020年12月14日発行

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