新型コロナ感染拡大による景気の減退によって、世界は新しい成長へのきっかけとして、カーボンニュートラルに大きく舵を切った。脱炭素を前提に産業構造を大きく転換し、新たな技術革新やビジネススキームへの投資を生み出して成長路線を描こうとしている。こうした動きを受けてマテリアル分野の革新が不可欠となっており、先進的な開発を進めてきたベンチャー企業に熱い視線が注がれている。
 日経BP総合研究所は、独自のアルゴリズム・人工知能技術を駆使したビッグデータ・予測分析などを手掛けるVALUENEXを著者に迎え、ベンチャーを中心に先端材の最新動向を紹介するレポート「マテリアル革新」を2021年10月に発行した。そのVALUENEXに先端材料分野の最新動向を解説してもらう。

 素材メーカーを取り巻く環境は大きな変革期を迎えようとしている。地球温暖化やカーボンニュートラル対応によってCO2の排出量の少ない材料への本格的な移行をはじめ、輸送機器などでのより軽量な材料に対する需要の増加などが起こりうる。VALUENEXでは、最新動向を把握するために、2015年~2020年における先端的な材料に関する企業の開発動向を調査し、俯瞰図を作成した(図1)。

図1 2015年~2020年における先端的な材料に関する企業開発動向マップ (出所:VALUENEX)

 今回の俯瞰図は、世界最大級のベンチャーデータベースである「Crunch Base」から抽出した7644社の情報にVALUENEXが解析に要するデータを各社の企業サイトより収集追加したデータセットを用いている。  俯瞰図を見ると、「グラフェン生産技術」「環境配慮型量子ドット」「バイオマテリアル」「次世代リチウム電池技術」「次世代複合材」「次世代3Dプリンティング」「半導体や3Dプリンター用の超高純度原料」「金属積層造形用合金技術」といった領域がここ5年で非常に際立っていることが分かった。

 特に、グラフェンに関する開発は世界的に活発化しており、グラフェン生産技術の領域では、グラフェンを費用対効果が高く、環境に優しい方法で大量生産する技術を開発するベンチャーをはじめ、絶縁体や衝撃吸収材として機能するグラフェン強化エアロゲルなどグラフェンベースの複合材料を開発している企業などが登場している。

 環境配慮型量子ドットの領域は、カドミウムを含まない量子ドットなど、毒性のない環境に配慮した先進的なナノ材料を開発しているベンチャーなどが含まれる。バイオマテリアルの領域は、アパレルや自動車、革製品、パッケージ、浄水器などの産業向けにバイオベースの素材を製造している企業が含まれる。これらの企業が製造するバイオマテリアルは、竹やセルロース、植物油、もみ殻、でんぷん、農業廃棄物などさまざまな天然原料を由来としている。

次世代電池や3Dプリンティングが盛況

 次世代リチウム電池技術の領域は、より効率的なイオン交換技術や酸化グラフェンを用いた電池部品など、次世代リチウムイオン電池用のプロセスや材料を開発している企業が多く含まれている。次世代複合材の領域は、高性能な天然繊維複合材料や高度なイオン交換材料、連続繊維3Dプリント用複合材料、高強度複合材料など航空宇宙や自動車、医療用途に向けた先進的な次世代複合材を開発している企業が含まれている。

 次世代3Dプリンティングをはじめ、半導体や3Dプリンター用の超高純度原料、金属積層造形用合金技術といった3つの領域は、3Dプリンティングに関連する材料技術に取り組むベンチャーが急速に増えていることを示唆している。

 ここ最近の企業における開発動向としては、バイオマス由来や生分解性への関心が高く、各材料分野で脱炭素化をターゲットとしたベンチャーが数多く登場してきている傾向にある。

<関連レポート>
マテリアル革新

カーボンニュートラルへの対応などサステナブル時代に向けてマテリアル分野の革新が求められています。本レポートはVALUENEXを著者に迎え、ベンチャーを中心に先端材料の動向を可視化し、産業分野や材料ごとに分析しました。さらに、注目ベンチャーの会社概要や事業内容、技術優位性、競合企業分析などを実施しています。
著者:VALUENEX
マテリアル革新 複合材/繊維/カーボン/セラミック/シリカエアロゲル編:A4判、142ページ
マテリアル革新 樹脂/バイオマス由来/CO2回収/プロセス革新編:A4判、146ページ
2021年10月14日発行

複合材/繊維/カーボン/セラミック/シリカエアロゲル編の詳細はこちら▶
樹脂/バイオマス由来/CO2回収/プロセス革新編の詳細はこちら▶

この記事は無料会員登録で続きをご覧いただけます

日経BP総研 イノベーションリサーチ 登録会員になると…

  • 経営戦略/事業創出に役立つコンテンツが読める
  • イノベーションのための情報やご案内を提供

インサイト会員と登録会員の違い