IoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、AI(人工知能)、デジタルツインなどのデジタル技術を活用したスマートシティプロジェクトが世界各国の各都市で活発化している(表1)。背景には、深刻化してきた都市問題と地球温暖化問題がある。世界の共通課題は、交通渋滞・交通事故などの交通問題、大気汚染、洪水や森林火災などの災害、新型コロナウイルス感染症などであり、これらをデジタル技術の活用で解決することが狙いだ。

表1 世界各地域・国のスマートシティプロジェクトの特徴・傾向
(出所:日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ)

再エネの有効活用や省エネ化を急ピッチで

 欧州は、EU(欧州連合)が域内のカーボンニュートラル化を目標に掲げており、スマートシティの中で再生可能エネルギーの有効活用や省エネルギー化を進める試みが増えている。欧米・中国・シンガポールでは、新デジタル技術の開発を進め、都市をリビングラボとするプロジェクトが始まっており、実証成果を生かして海外展開する戦略をとっている。欧米では、自治体政府が有するさまざまな行政データをオープン化する動きも活発化している。

 アジア・アフリカ諸国の新興国では、人口増大と共に大都市への人口流入が急速に進んでおり、インフラや住宅の不足によるスラム化、犯罪多発などの問題が深刻化している。そこで、基本的なインフラ建設と共に、デジタル技術を搭載して一足飛びにスマートシティ化しようという構想を打ち出している。中東各国では特に、これまでの化石燃料に依存した経済体制からの脱却を目指して、スマートシティプロジェクトの中で再エネやICT 産業の成長を狙っている。アフリカ諸国では大都市近傍に衛星都市を建設し、スマートシティソリューションを導入しようとしている。

カタール・ドーハにおけるスマートシティプロジェクト「Msheireb Downtown Doha」のマスタープランイメージ
(出所:Msheireb Properties)

コロナ対策で新局面

 新型コロナウイルス感染症対策も急務になってきており、スマートシティ向けに設置した統合管理センターをコロナ対策向けに活用し、医療・ワクチン、食料確保、ロックダウン規制など市民生活全般をサポートする拠点とするケースが登場している。そこでは、行政・保健担当者、警察当局、食糧当局などの関係部局が同一のダッシュボード上で連携しながら対策を進める仕組みを構築している。
 施設レベルでも、カメラや人流センサーにより混雑状況を監視し、3密(密集、密接、密閉)状況を回避するプロジェクトが登場している。大規模施設の多くは閉鎖を余儀なくされているが、対策を施すことで再開に漕ぎつけた施設も出てきた。人流シミュレーション技術で、より適切な施設運営につなげる実証もスタートしている。

プラットフォーム事業者が登場

 スマートシティ構築のために、データを利活用するプラットフォーム(基盤)の重要性が増し、IoTやICT、通信インフラに強みを持つ企業がプラットフォームを開発、ビジネスモデルを構築しつつある(図1)。

図1 スマートシティ向けプラットフォーム事業者を中核にしたサービス・ビジネスの概要
デジタル技術を活用してビッグデータを処理分析するプラットフォーム事業者はセンサー・ネットワーク事業者やアプリケーション開発者を巻き込んでエコシステムを構築。クラウドベースのPaaSで提供(出所:日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ)

 スマートシティ向けプラットフォームの基本機能は、街中に張り巡らした各種センサーからの情報や都市活動で生じるさまざまなビッグデータを通信ネットワークで集約し、処理・分析して、都市インフラを最適管理して住環境を改善し、観光客向けのデジタルツールなどの各種アプリケーションを開発することである。

 ビジネスモデルとしては、管理・制御するインフラや設備を保有するオーナー向けにプラットフォームをクラウドサービスとして提供するPaaS(Platform as a Service)またはSaaS(Software as a Service)型を採用するケースが多い。自治体は、このプラットフォームを都市全体のデータを利活用する都市OSとして位置付けて導入、行政サービスの向上、住民のQOL(生活の質)の向上、旅行者向けサービスの充実による観光産業の発展を期待している。

エコシステムの構築がカギ握る

 プラットフォームビジネス成功のカギは、スマートシティを構成するセンサー・センサーネットワーク事業者やオープンデータを基にしてさまざまなサービスを実現するアプリケーションを開発する事業者がパートナーとなって集まり、エコシステムを構成することである。アプリケーションを開発する各事業者は、エコシステムの一角を担うと共に、スマート街灯、環境モニタリング、人流監視・可視化、エネルギー管理といった個々のソリューションを自治体やインフラ・設備のオーナー向けに提供している。

 最近では、スマートシティ向けに開発したソリューションに改良を加えて、新型コロナウイルス感染症対策センター用のダッシュボードや3密の監視、人流シミュレーションによる施設の感染防止運用の検討などに活用されつつある。例えば、3密を発見してアラートを出したり、ロックダウン規制の違反者を摘発して警察に通報するなどの機能も果たしている。

<関連レポート>
世界デジタル・スマートシティ総覧

欧州、北米、アジア・アフリカ、日本におけるデジタル技術を活用した代表的なスマートシティ・プロジェクトに関して、プロジェクトの狙い、進行状況、今後の計画などを現地取材も含めて徹底調査しました。さらに、これらの都市にデジタルソリューションを提供しているIoT・ITプラットフォーム、センサー・スマートアプリケーション、モビリティソリューションなどのベンダーの戦略を明らかにします。
調査・編集:日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
A4判、236ページ、2021年9月30日発行

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