新型コロナ禍の先行きが不透明ななか、持続的成長を続けるためデジタルトランスフォーメーション(DX)に着手する企業が増えている。今後の課題はDXで成果を上げること。そのために必要なこととは何か。独自調査で明らかにする。

 2割——。「デジタルトランスフォーメーション(DX)で成果を上げている」という国内企業の割合である。これは、日経BP総研 イノベーションICTラボが2020年7〜8月に実施した独自調査「デジタル化実態調査(DXサーベイ)2020年版」(関連レポート)の結果だ。

 この数字について、悲観する必要はないだろう。DXを地道に続けて、成果を着実に出していけばいいからだ。とはいえ、成果を上げるための勘所を押さえておいたほうが賢明である。

 DXで成果を上げている会社とそうでない会社との差異はどこにあるのだろうか。それを探るために、日経BP総研 イノベーションICTラボはデジタル化実態調査(DXサーベイ)2020年版の一環として、「DX推進度調査」を実施した(有効回答数は865社)。

 DXを推進するうえで特に重要な「ビジョン」、「推進体制」、「人材」、「SoR(System of Record、既存の基幹系システム)」、「SoE(System of Engagement、いわゆる「攻めのIT」)」、「With/アフターコロナ対応」の6領域について、計28項目のDX推進指標を定め、「DX推進度スコア」を算出。この結果、DX推進度スコアとDXの成果との間には相関関係があり、DX推進度スコアが高いほどDXで成果を上げる割合が高くなることが判明した。

 この観点から、PoC段階を含めて「まだ成果を上げていない企業」と「成果を上げている企業」のDX推進度スコアを比べて、差の大きい順に「DXで成果を上げるための重要項目」ランキングとしてまとめた。ここではトップ5を紹介する。

DXで成果を出すために重要な項目ランキング
出所:日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ『DXサーベイ2』の調査データを基に作成

現場の力量不足や人材不足を嘆く前にやるべきこと

 1位は「経営戦略に基づくDX推進計画書の作成状況」である。DXで既に成果を上げている企業と成果を上げていない企業を比べて、本調査で算出した「DX推進度スコア」に最も大きな差があった項目は、これだった。

 DXで成果を上げるには、まずDXの目的や実現方法を「DX推進計画書」として明確に定義し、社内外に周知徹底していくことが重要というわけだ。デジタル技術の導入・活用は手段である。経営目標を達成するためのDX戦略を分かりやすく、簡潔にまとめることが肝要だ。先進企業はDX戦略を、経営戦略の内容に基づいて1枚の図にまとめていることが多い。

 2番目にスコア差が大きかった項目は、「DXを推進しているリーダークラスの力量や役職」。これがDXで成果を上げるための重要項目の2位である。変革リーダーの条件について、「失敗を許されるほどの権限やパワーを持った人でないと、DXを進められない」(大手サービス企業の幹部)との指摘がある。DXを着実に進めている企業の変革リーダーは、経営トップと密に対話し、信頼関係を築いている執行役員クラス以上であることが少なくない。

 そもそも変革というものは、総論賛成・各論反対になりやすい。抵抗勢力がつきものである。部課長クラスの権限では、様々な部門を巻き込むDXの推進は難しい。

 変革リーダーに求められるスキルとしては、構想力、統率力、実行力の3つが重要である。DXで成果が上がっていない場合、現場の力量不足や人材不足を嘆く前に、経営陣や変革リーダーに構想力、統率力、実行力のいずれかが欠けていないかどうかを検証すべきではないだろうか。

 3位は「データとデジタル技術を使って、変化に迅速に対応しつつ、顧客視点で価値創出するビジョンを社内外で共有」だった。1位(DX推進計画書の作成)と同様、ビジョン領域の項目である。データやデジタル技術の活用ありきではなく、顧客サービス強化のためにDX施策を定めて、実行する。その施策の達成度を社内外で共有することが理想的な姿である。

 4位は「DX推進をミッションとする部門・役割の明確化と、必要な権限の付与」、5位に「『挑戦を促し失敗から学ぶプロセス』を迅速に実行する仕組み(アジャイル手法やデザイン思考など)」となった。これらトップ5を含む上位10項目には、「ビジョン」「推進体制」「人材」という経営領域の項目ばかりがランクインした。

 DXで成果を上げるためには、「SoR」や「SoE」というIT領域よりも、経営面のケイパビリティー(能力)に磨きをかけるべき——。独自調査「DXサーベイ」の結果は、このことを示して
いる。

<関連レポート>
DXサーベイ2

新型コロナ危機でDXに関心を持つ企業が増えるなか、改めてDXの本質を明らかにし、企業がやるべきことの指針を示します。内容は大きく、①Withコロナ時代の865社デジタル化実態調査、②コロナ以前/コロナ以後のDX推進度、③先進22社のDX戦略レポート、④アフターコロナ時代を見据えたDX方法論の4部で構成しています。
日経BP総研 イノベーションICTラボ 所長 戸川尚樹、上席研究員 渡辺享靖
A4判、456ページ、2020年11月25日発行

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