テクノロジーが人間に与える影響の良し悪しは喫緊の問題になっている。超人化ほど過激ではないものの、スマートドラッグやバーチャル中毒の例がすでにある。
スマートドラッグは通称だが、もともと睡眠障害などの治療に使う医薬品を記憶力や集中力を高めるために服用することを指す場合が多い。脳の中枢神経を刺激する成分があるが、健康な受験生が飲むことは本来の用途ではないし、副作用や依存性の危険があるという。
医師の処方箋が必要になるが個人使用であれば1カ月分程度を輸入できる。インターネットの通販サイトを見ると「海外直送品」として、そうした薬がずらりと並ぶ。厚生労働省は薬監証明を受けないと個人で輸入はできないようにしていく方針である。
一方、バーチャル中毒とは常時ネットにつながっていないと不安になることをそう呼ぶ。以前からあったネット依存、ビデオゲーム依存の最新版といえる。VR(仮想現実)などゲームの技術が高度になり、リアルなものでは満足しなくなる人が出てくるという。
テクノロジーと人間の健康との関係は古くからのテーマである。今後、ゲームを変えるテクノロジーが見えてきた際、人への副作用を常に考えなければならない。だが、開発独裁国家や自分の力を拡大したいと思う個人がリスクをとって採用に踏み切るかもしれない。
日経BP総研2030展望 ビジネスを揺るがす100のリスク(2018年10月発行)から抜粋