植物由来の細胞や動物の幹細胞を培養して食肉そっくりの味がする食品を作り出す「代替肉」が熱い視線を集めている、

  米調査会社のアライドマーケットリサーチは肉の代替品の世界市場は2018年〜2025年に平均7.7パーセントで成長を続け、2025年には75億ドルに達すると予測している。

 2013年にオランダにあるマーストリヒト大学教授のマーク・ポスト博士が世界初の培養肉で作ったハンバーガーの試食会をロンドンで開き、注目を集めた。その後、人工肉の開発が動き出し、アメリカやイスラエルを中心にフードテック・ベンチャーが次々と登場してきた。

 すでに植物由来のひき肉やソーセージ、鶏肉の代替肉がハンバーガーチェーンやレストランなどに提供されている。中には全米のスーパー2万店以上で販売されているヒット商品もある。これは植物性タンパク質で作られたハンバーガー用パティで、日本の大手商社が日本国内での販売を検討している。

 代替肉の開発が短期間に進み、次々と実用化されるに至ったのは、大手企業や投資家が軒並み、有望なテクノロジーとみなし、投資を惜しまないからだ。マクドナルドの元社長のドン・トンプソン氏は代替肉ベンチャーの取締役に転身、マイクロソフトの創業者のビル・ゲイツ氏はこの技術に多額の投資をしている。

 代替肉はいいことずくめのように見える。非効率な食肉生産・流通システムを合理化でき、コストを削減できそうだ。生産工程が衛生的で、狂牛病や鳥インフルエンザのような感染症に冒される危険を減らせる。

 細胞の培養は土壌の影響を受けないため、飼料の育成や糞尿処理なども不要で環境負荷が小さい。動物を殺さずに済む。植物由来の肉の方が豚肉や牛肉よりもカロリーや脂肪分が低く健康によいという指摘もある。

 これだけ代替肉が有望な理由が揃えば、食品メーカーや外食チェーンを中心に導入したいと考える企業は多いだろう。だが、テクノロジーである以上、代替肉にはリスクがある。

 リスクの一つはコストと質の兼ね合いだ。現在、米国内のレストランで提供されている植物肉のパティを使ったハンバーガーの価格は一食当たり20ドル前後。需要が伸びることで10ドル付近まで下げられるとみられているが、シナリオ通りにいくかどうか。

 ベジタリアンの支持が今後も伸びる、ヘルシーブームに頼る、ということで需要を安定させられるか。生産コストを抑えながら動物肉に負けないくらい美味しい植物肉を開発することが重要な課題になる。

 もう一つのリスクは細胞培養という技術によってつくられる「代替肉」に懸念を持つ消費者への対応である。

 「遺伝子組み換え食品ではありません」という表示はスーパーなどで日常的に見かけるようになった。技術と生産工程の透明性を高め、消費者に対して正しく説明できるかどうか、それが代替肉のさらなる普及にとって鍵になる。

 食品安全面で確立された指標がまだない、生産・流通システムの構築にあたり既存の食肉業界との調整が必要、といったハードルもある。代替肉の将来を冷静に見極める必要があるだろう。