「中国のディスプレイ産業の関係者はマイクロLEDを非常に重視しており、量産化を迅速に目指そうとしている。ただ、そこに行き付くには、乗り越えるべき壁が多くあることも認識している──。中国光学光電子行業協会液晶分会(以下、CODA)の常務副理事長兼秘書長である梁新清氏は、2月4日に開催されたオンラインセミナー「中国ディスプレイ産業の展望」で、中国ディスプレイ産業の動向についてこう述べた。中国ディスプレイ産業の業界団体であるCODAと日経BPは2010年からディスプレイ産業の専門カンファレンスである「Display Innovation China」を中国で共催してきたが、同セミナーは本年の開催説明会を兼ねて開催したものである。

 セミナーのオープニングで、「中国ディスプレイ産業の現状と今後の展望」というタイトルで講演を行った梁氏は、まず2016年から2020年までの世界のディスプレイ市場について説明した。2020年の出荷面積は2億5420万平方メートルとなり2016年比で36.5%の伸びとなった(図1)。一方、金額ベースでみると2016年の約2268億米ドルから2020年は約2173億米ドルへと減少している(図2)。これらの結果を見ると、この4年間でディスプレイの単価は、ほぼ30%下がったことになる。図2ではパネル、材料、装置というセクターごとの金額も表示されているが、この内訳をみると2020年は材料が2016年比で微減、パネルが同4.8%減となっている。

世界におけるディスプレイの出荷面積の推移(2020年は推定)。4年間で36.5%の伸びを見せている
(出所:CODA)
世界におけるディスプレイ市場の推移(2020年は推定)。金額ベースでは、市場は減少している。なお、水色はパネル、桃色は材料、緑色は装置を表す
(出所:CODA)

 このような状況について梁氏は、「出荷面積に金額が追いついていないのは、技術の進歩と市場競争によるものである」としたうえで、「このような状況下でも中国のパネルメーカーは健全な経営を続けることができている」と解説した。また、日本をはじめとする材料メーカーも低コストでの材料供給が求められているわけだが、「ここ数年の徹底したコストダウンにより、中国でも十分に戦える価格競争力を持てている」(日本の材料メーカーのマーケティング担当者)と言うように、ディスプレイ産業全体が激しい市場競争の中で間断なくコスト削減努力を続けている様子が伺える。

 ディスプレイ産業の今後について梁氏は、注目すべき技術としてマイクロLEDを挙げた。CODAは中国国内でマイクロLEDに関する専門フォーラムを昨年何度も開催していると言う。「量産化プロセスにおいては非常に複雑で乗り越えなければならない問題がある」としながらも、「マイクロLEDに重きを置いて推進し、迅速に産業化を実現すべきという共通認識が業界全体でできている」と述べた。

 乗り越えなければならない問題として、梁氏は2点を挙げた。1つは、ほかのディスプレイに比べてサプライチェーンが長く複雑になっていること。そしてもう1つは、液晶やOLEDに代わってマイクロLEDを使うべき応用機器の市場があるかどうかである。昨年の春ごろからコロナの感染拡大に伴うテレワークの広がりや巣ごもり需要の高まりでパソコンやテレビの販売が伸びており、ディスプレイの単価は上昇を続けている。これらは短期間に大型パネルを量産できる液晶が中心である。

 こういった用途にまだまだ高価なマイクロLEDが取って代わるまでには相当の年月がかかるであろうが、先に述べた「共通認識」のもと中国では積極的な投資がすでに始まっている。梁氏によれば、「Visionoxは建設中のテストラインに20億人民元を投資すると発表し、端末メーカーの康佳は重慶にマイクロLEDのサプライチェーンを打ち立てるため総額300億人民元を投資すると発表した。TCL華星光電と三安光電もマイクロLEDとLEDへの研究開発投資を決定し、最大手の京東方科技集団(BOE)はRohinniと合弁会社を設立。いずれも現実的なマイクロLEDプロジェクトを推進している」という。

 また梁氏は中国政府の政策がディスプレイ産業へ与える影響について、「2021年は第14次五カ年計画の始まった年になる。この5年間において新型ディスプレイ産業に関する政策は国として重きを置き国家的にサポートする重点産業と位置づけられた」とした。さらに、「2020年に国から発表された新インフラ建設計画(新基建)には8つの分野が含まれており、そのうち5つは5G基地局の整備やビッグデータ、AIなどを含む情報技術と通信技術分野であった。新基建の目標投資額はおおよそ2.11兆人民元(約33兆円)で、情報通信技術のすべてを後押しするのに十分な額であり、大きなビジネスチャンスだ」とも語った。

 世界の生産シェア55%という圧倒的な生産規模を競争力の源泉とし、世界中から関連企業を引き寄せる中国ディスプレイ産業。今後は「材料から応用機器までの垂直のつながりと、業界や国を越えた水平のつながりがますます活発になっていく。そういった中で、高い技術力を持ち、また隣国でもある日本企業への期待は、中国においてこれまでにも増して大きくなっている」という。

 梁氏は「CODAは世界のディスプレイ産業をつなげる架け橋になりたい」とこれからの意気込みを語り、同氏の講演を締めくくった。

※【Display Innovation China 2021】は、6月29日(火)~7月2日(金)、中国・上海で開催いたします。詳しい企画書はこちらからダウンロードできます。