未来に向けてテクノロジーをサービスや製品に結びつけ、新たな価値をどう生み出していくか。多くの企業の課題である。そのために欠かせない作業が技術予測ということになる。

 誤れば機会を逸し、結果として主幹事業を失い、市場からの退場を余儀なくされることすらあり得る。「自動運転という技術革新を目前に控える自動車関連企業」といった具体的な状況を想像してみれば、ことの重大さを生々しく理解できるだろう。

 技術予測にはいくつもの落とし穴がある。まず、従来型の「各分野の技術専門家が集まって作成した予測」にどれほど信頼が置けるかという点だ。

 それらの多くは、技術の潜在能力を示すものであっても、実際にいつどれほど進化するかを示すものではない。欠けているのは、「燃料なくして技術の進化はない」という認識であろう。燃料とは研究開発に投入される人的、金銭的リソースを指す。

 リソースを投入することで技術は進化するのであり、進化の速度は投入量に依存する。投入量は「その技術を開発すればどれだけの利益が得られそうか」ということによって決まる。

 つまり、技術進化の速度と投入量には強い相関があり、その投入量は市場規模や利益の大きさと極めて密接な関係にある。だから、技術の進化を予測しようとするなら、技術がどのような市場を生み、それがどれほど拡大していくかについて予測しなければならない。その作業は技術の専門家だけで成し得ることではない。

 関連して言えることがもう一つある。技術はしばしば、突如として指数関数的に進化し始める。多くの場合、技術進化を牽引するのは市場だが、その成長過程は直線的ではない。経験的に商品の普及や市場の成長が「ロジスティック曲線」と呼ばれるS字曲線に似たパターンで進行することが知られている。S字曲線は立ち上がり部分において「指数関数的な伸び」を示す。

 市場の拡大がそうであれば、それに連動する技術進化もまた指数関数的なものになる可能性が極めて高い。だが、世にあまたある市場予測や技術予測の多くは「年率xxパーセント」といったリニアな伸びを想定する。このことが、技術進化の速度を見誤る落とし穴になる。

 人には「こうあって欲しい」「こうあるべき」という思いを予測に刷り込んでしまう悪癖がある。だから、既存事業の破壊要因となる技術の進化に関して、どうしても保守的に見積もってしまう。逆にその技術で既存事業に切り込みたいと思っている企業は前のめりに進化を予測し、それに基づいた事業計画を立てがちだ。

 先の例に当てはめていえば、自動運転車の実用時期に関して、必ずしもそれを歓迎すべき事態ととらえられない「守る」立場の自動車業界と、それを好機とみる新たにその分野に参入しようとする異業種企業では違った見解を抱き、違った行動に出る可能性が高い。

 技術が変われば、ときとしてプレーヤーもがらりと変わる。カメラが銀塩方式からデジタルに移行したとき何が起きたかを思い出してみれば分かるだろう。消費者から見れば歓迎すべき光景であっても「先が読めなかった」企業からすれば悪夢以外の何ものでもない。