省エネ型の設備や機器、節水トイレ、電気自動車など、日本企業が環境配慮製品だと自信を持って販売した製品でも、納入先企業や消費者から「ノー」と言われるケースが増えてくる。

 最終製品として環境性能が高くても、そこに使用される部品や部材に違法伐採された木材や児童労働を行っている工場で生産された原料を使っていることが分かれば、納入先企業から警告を受け、場合によっては取引を中止されてしまう。このようにサプライチェーン上流で環境や社会面に配慮していることが調達先として選ばれる条件になってくる。

 2020年に開催が予定されている東京五輪では「持続可能性に配慮した調達基準」を木材や農畜産物、パーム油、紙に対して設け、その他の部材に対しても「持続可能性に配慮した調達コード」の下で環境や人権に配慮したものを使うことを求めている。

 こうした持続可能性に配慮した調達の取り組みで日本企業はまだまだ遅れており、原材料調達のリスクマネジメントが急がれている。

 納入先から選ばれるためには、環境や社会に配慮しているという条件をクリアしていることを第三者によって証明された原材料、すなわち「認証品」を使うのが有効な一つの方法だ。

 環境や社会面の基準を定め、それをクリアしていることを証明する国際的な認証制度はいくつかある。紙や木材などが持続可能な森林経営をしている森から産出されたことを示すFSC(森林管理協議会)認証やPEFC認証、洗剤の界面活性剤や食品に広く使われる植物油脂のパーム油が森林生態系や労働者に配慮して生産されたことを示すRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証などが代表的なものだ。水産資源では海の生態系に配慮して漁獲されたことを示すMSC(海洋管理協議会)認証、農作物ではレインフォレスト・アライアンス認証や有機JAS認証などがある。

 こうした認証品は数が限られ、争奪戦になりつつある。持続可能性を重視した経営を進める欧米企業は早くから認証品を囲い込んでいる。そもそも認証品は欧米企業がNGOなどと協力して作った基準に基づいていることが多い。その結果、日本市場に環境・社会面で問題がある原材料が出回る危険性が増している。

 木材の場合、林野庁の平成28年木材需給表によれば日本の木材自給率は現在35パーセント程度に落ち込み、市場の多くを占める外材にはガバナンスの低い国からの木材も混入している。環境NGO(非政府組織)の地球・人間環境フォーラムは「1割強は違法材」と指摘している。日本には合法伐採木材利用促進法があり、合法材を利用する企業にお墨付きを与える登録制度があるものの、登録はあくまで任意であり、国内で違法材が流通する恐れを排除しきれていない。

 世界で出回っているパーム油のうち、RSPO認証のパーム油はわずか20%強しかなく、欧米の食品メーカーや化成品メーカーが大量に調達している。日本企業は化成品メーカーを中心に認証油を調達してきたが、食品メーカーは出遅れてしまった。調達ルートを確保したとしても、使用量がまだ少ないために価格交渉力がなく、コスト高に悩まされるという問題も起きている。

 水産資源では、世界の漁獲量の13〜31パーセントをIUU(違法・無報告・無規制)漁業による魚が占めるという調査結果を英インペリアルカレッジが発表している。その一部は日本の市場にも流れ込んでいる。

 対象となるのは農畜水産物だけではない。紛争鉱物規制に見られるように電子製品やアパレル製品などすべての産業で環境・社会面に配慮した部品や部材の調達が求められている。紛争鉱物規制とは、コンゴ民主共和国とその周辺国で産出した金、スズ、タングステン、タンタルが人権侵害や武装勢力の資金源になっているとして、これらの鉱物の使用の開示を求める規制である。リスクを回避するため欧米の電気電子企業やアパレル企業は委託工場やサプライヤー工場の情報を収集して、環境や社会面の監査に力を入れている。

 認証品を調達できず、環境や人権問題など社会面の問題がある原材料を使った場合は、法律違反のリスクが残り、納入先から取引を停止されるばかりでなく、消費者からの不買運動や、NGOからのネガティブ・キャンペーンに見舞われ、企業のブランド価値を毀損する危険がある。これまでも大手食品メーカーや大手消費財メーカーが、持続可能なパーム油を使用していないとして、消費者から抗議の電子メールを送られたり、クレームの電話を受けたりした。NGOから批判の横断幕を社屋に掲げられた事件もあった。

 さらに年金基金など、「ESG(環境・社会・ガバナンス)投資家」からの評価も下がり、投資を呼び込みにくくなる。場合によっては投資引き上げ(ダイベストメント)にもつながりかねない。2012年には欧州の政府年金基金が森林伐採リスクの高いパーム油を生産・調達していると判断し、パーム油関連企業23社からダイベストした例もある。

 

 もちろん、認証の取得がすべてではない。認証品ではなくても、環境や社会面に配慮した原材料であることを、しかるべき自社基準を定めて担保していることを示し、取引先や消費者、投資家に開示すればよい。