コロナ禍が続く中、人々は様々な方法で日々のストレスを解消しようとしている。その1つが、「ベランダ菜園」。中国では、ベランダ菜園が予想外のブームになっているという。野菜作りをめぐり、種、土壌、ノウハウ伝授、情報共有などを網羅する複雑な産業チェーンが形成されており、統計によると、中国国内のベランダ菜園産業の市場規模は100億元に達する。ベランダ菜園の消費者は、一線都市、二線都市、三線都市の人が70%以上を占め、そのうち上海、東莞、北京、蘇州、杭州がベランダ菜園を最も好む上位5都市だ。年代では「85後(1985年から1989年生まれ)」「95後(1995年から1999年生まれ)」と比較的若い人が多い。こういった「シティ・ファーマー」は、SNS上で新たな社交チャンネルを切り開いている。(日経BP 総合研究所)

 新型コロナウイルス感染症の中、「野菜栽培経済」が予想外のブームになっている。ますます多くの「シティ・ファーマー」が野菜作りの仲間に加わり、ベランダに菜園を作り出している。ベランダ菜園は日頃のストレスを解消できるだけでなく、成果を食卓に上らせることもできる。

 実際には新型コロナウイルス感染症が発生する前から、ベランダ菜園はブームだった。野菜作りをめぐり、種、土壌、ノウハウ伝授、情報共有などを網羅する複雑な産業チェーンが形成されていた。統計によると、中国国内のベランダ菜園産業の市場規模は100億元(1元は約19.0円)に達するという。

「シティ・ファーマー」が静かなブーム

 統計によれば、現在のベランダ菜園の消費者は、一線都市、二線都市、三線都市の人が70%以上を占め、そのうち上海、東莞、北京、蘇州、杭州がベランダ菜園を最も好む上位5都市だ。年代では「85後(1985年から1989年生まれ)」と「95後(1995年から1999年生まれ)」が多い。

 どの野菜を育てるかを決める時、すぐに育つ、背が低い、病気に強い、見た目のよい野菜を好む人が多い。ショート動画アプリ「快手」が発表したベランダ菜園業界図鑑によれば、最も人気がある野菜はスプラウト類で、キュウリとニラの人気も高い。果物の人気ベスト3はイチゴ、スイカ、トマトだ。気候の違いにより、南方と北方では「快手」ユーザーの好みに違いがあり、北ではトマトが最も好まれ、南ではカボチャが特に好まれる。

ベランダ菜園はなぜ人気なのか?

 若い人が熱心に野菜作りをするようになった原因としては、インターネットによる牽引の功績が欠かせない。ソーシャルコマースプラットフォーム「小紅書」で「ベランダ菜園」を検索すると、野菜作りの知識、攻略法、ツールに関する文章が6万本以上ある。新浪微博(ウェイボー)では「ベランダ菜園」の関連ページの閲覧数が7300万回を超える。

 ベランダ菜園をする人は昔の自給自足の生活スタイルに戻りたいわけではなく、ベランダに「桃源郷」を作って暮らしを少しだけ「グレードアップ」しようとしている。育てるのが楽しい、新鮮さを味わいたいという人もいれば、ベランダで育つ野菜の鑑賞的価値と実用的価値を重んじる人もおり、子どもに働くことの大切さや科学の知識を教えたいという人、野菜作りを通して暮らしの中のストレスを解消し、イライラを緩和したいという人もいる。それぞれ出発点は異なるが、実際に行動を起こしてベランダでの野菜作りにエネルギーを注いでいる点はみんな同じだ。

「シティ・ファーマー」ブームが新たなビジネスチャンスを生む

 淘宝(タオバオ)のプラットフォームでは、この趣味偏向型経済の市場が、今や新たな100億元市場を形成し、野菜作りの全サイクルをカバーしており、これには野菜・果物の種、鉢・プランター、培養土、肥料、ガーデニングツールなどが含まれる。今年第1四半期(1-3月)には、同プラットフォームで各種の野菜の種の売り上げが前年同期比100%以上増加し、コリアンダー、ニラ、唐辛子、トマトの種が最もよく売れた。淘宝では春の農作業シーズンに、大量のガーデニングツールがネットで人気が出て、虫取りシートの売上高は同52.7%増加した。

 ベランダ菜園が流行するにつれ、ECプラットフォームでもたくさんの新しいブランドやビジネスチャンスが誕生した。今や淘宝や京東などのECプラットフォームで「ベランダ菜園」と検索すると、多くの農業用品店及び種、肥料、用具、スマート栽培機など産業チェーン全体にまたがるさまざまな商品がヒットする。

育種市場に新たな可能性を切り開く

 ベランダ菜園がECプラットフォームで「新たな100億元市場」を形成したことは、現代の消費における新たな変化であり、従来の種や農具など農業資本市場にチャンスをもたらすことになった。

 ベランダ菜園市場では、種に対するニーズが非常に多様になっている。トマトの種を例にすると、「トマトのブラインドボックス」1袋を買えば、スウィートミリオン、黒トマトの黒丸くん、ミレニアルフルーツ、ドイツ系ハート型ミニトマト、サンライズバンブルビートマト、チョコレートチェリーなど20-30品種を育てられるという具合だ。

 江蘇省農業科学院野菜研究所の?衛平副所長は、「農業+EC融合の趣味市場は、育種に多くの可能性をもたらした。ベランダ菜園の果物や野菜の種に関しては、速成か、観賞に向いているか、病虫害に強いか、品種は何かが、種を選び、育てる時の重要な基準だ。そのため現在、ベランダ菜園で背が低いトマトを育てる時には、大規模農地の口当たりのよいトマトの遺伝子を組み込んで、大規模農地で育てる品種とベランダで育てる品種の間で交配を行う研究もしている」と述べた。

 ECプラットフォームもベランダ菜園の業態の育成に全力を挙げている。天猫(Tmall)淘宝はこれからも家庭での栽培環境に適した野菜の品種を引き続き導入し、より見た目がよく、実用的で、スマートなガーデニンググッズを開発し、複数のチャンネルで「シティ・ファーマー」の野菜作りの全サイクルに関するワンストップ式のマッチングサービス・攻略法を提供し、育種成果である品種の知的財産権の保護も行っていくという。

ポストコロナ時代、野菜栽培が新たな社交チャンネルに

 中国農業大学国家農業市場研究センターの韓一軍センター長は、「現在のベランダ菜園の急速な発展トレンドは、主に中国経済社会の発展段階と特徴によって決定づけられたことだ。中国は昨年の1人当たり国内総生産(GDP)が1万2千ドルを超え、すでに高中所得国の仲間入りをしている。経済の法則に従えば、消費は絶えず高度化することになる。その主な特徴の一つは、消費の新たなニーズが急速に拡大することだ。ベランダ菜園は若者の新しい生活消費スタイルにおけるニーズにぴたりとはまった」と述べた。

 SNSに最近育てている大きなトマトの写真をアップし、グループ内で種を交換し、栽培のポイントの情報を交換する……。こうした野菜作りでつながった人々が新たな社交のチャンネルを切り開き、ショート動画共有アプリ「抖音(TikTok)」や小紅書で人と経験を共有する。こうしたことが新たなトレンドになり、ベランダ菜園により多くの社交的価値を与えることにもなった。

 従来のキャンプやスケートボード、グラフィティアートのほか、ベランダ菜園も今や若者のライフスタイルの1つになっている。(出所:人民網日本語版)