6月25日に、中国・国家級漢中経済技術開発区の主催、日中経済協会の後援の下で「漢中市 日中介護・健康ビジネスカンファレンス2021」が開催された。同セミナーは、ポストコロナ時代において健康医療産業の発展が重要であることから、日中に対して同分野の最新の情報を発信することともに、日中企業の協業を促進することを目的としたもの。その背景には、中国政府が中医学(東洋医学)の積極活用を奨励する政策を押し進めていることもある。日経BP 総合研究所は立先投資資詢、「中日産業界」と共に同セミナーの開催にあたって、プログラム企画や日本市場への告知などの協力を行った。

 中国北西部にある陝西省漢中市では、これまで注力してきた生薬の生産・栽培をさらに発展させ、現代医薬の産業チェーンの構築に積極的に乗り出している。同市は、漢方薬の原料となる生薬の資源を豊富に持っており、販売高は中国全体の47%を占めている。漢江製薬や漢王製薬などの大手製薬企業がある一方で、商品化や加工能力の面では改善の余地があることも認識されており、日本企業との協業を望んでいる。

 セミナーの冒頭、漢中市人民政府副市長の王浩氏が、日本企業に対する期待などのメッセージを伝えた。漢中市は文化が栄え原料に恵まれていることに加え、特に中国の中心位置にあるためビジネスを進めるにあたって地の利があることを強調した。続いて、漢中経済開発区管理委員会副主任の尹月新氏が、漢中経済開発区の紹介を行うと共に、漢中において建設を計画されている「中日現代中医薬産業パーク」について紹介した。同パークにおいては、日中の企業や学校などと協力して、漢方薬のブランド化や介護機器の開発など、特徴のある介護・健康ビジネスの構築を目指す。本セミナーにおいては、同パークのキックオフ式も行われた。

漢中市人民政府副市長の王浩氏
漢中経済開発区管理委員会副主任の尹月新氏

 続いて、中国の健康医療業界に詳しい識者2名から、基調講演が行われた。上海市老齢化サービス協会コンサルティング専門家委員会主任の殷志剛氏は、「中国健康医療養老産業の発展傾向及び中日連携のチャンス」というタイトルで、健康医療産業における日中の連携の重要性について訴えた。現在、中国は65歳以上の人口が13.5%と高齢化社会を迎えており、介護サービスの充実が望まれている。そのためには、理念を共にできる日中の企業が連携する必要があると述べた。九州通医薬集団ベンチャーキャピタル事業部常務副総経理の殷涛氏は、「中国におけるヘルスケア投資の魅力と実例紹介」というタイトルの講演の中で、同社が実際に投資を行ってきた事例を紹介しながら、漢方薬をはじめとする医療業界への投資が魅力的であることを述べた。

上海市老齢化サービス協会コンサルティング専門家委員会主任の殷志剛氏
九州通医薬集団ベンチャーキャピタル事業部常務副総経理の殷涛氏

 特別講演として、日本企業2社も登壇した。上海津村製薬副総経理の仙波君彦氏は、「漢方バリューチェーンの一翼を担う製造について」というタイトルで、漢方薬を100年以上手掛けているツムラの紹介と、その中において生薬の製造などを手掛ける上海津村製薬の位置づけなどについて紹介した。ツムラは日本での漢方薬のシェアは8割以上を誇るものの、同社の売上に占める中国の割合はまだ5%ほど。今後は、中国への貢献も増やしていきたいと抱負を述べた。オムロンヘルスケア(中国)副総経理の土倉一範氏は、「オムロンヘルスケア スマート健康エコシステムを構築」というタイトルで、中国で「脳・心血管疾患発症ゼロ」を実現するための取り組みについて説明した。同社は1993年から中国で事業を行っているが、現在では中国の350都市でビジネスを展開し、7万8000の薬局でオムロン製品の扱いがあるという。こういったネットワークを生かし、家庭で各種の健康データを扱える通信ボックスを中心として、そのデータを薬局や病院と共有することで、健康を管理するサービスを提供している。

上海津村製薬副総経理の仙波君彦氏
オムロンヘルスケア(中国)副総経理の土倉一範氏

 続く特別講演では、上海鋭品投資管理諮詢総経理の黄紹軍氏が「『地域的な包括的経済連携協定(RCEP)』の枠組みにおける中日経済貿易連携の新たなハイライト」というタイトルで、RCEPが健康業界をはじめ日中にどのような影響があるかについて説明した。RCEPは、世界のGDPの1/3が関連する巨大な経済連携。これが成立することで、中国と日本で一部自由貿易ができることになり、また今後の両国の自由貿易の可能性も広がるのではないかと、私見を述べた。漢王薬業チーフエンジニアの田慧玲氏は、「中国の中医薬と日本の漢方薬の相互補完について」というタイトルで、同じルーツを持つ中医薬と漢方薬の連携の重要性について述べた。両者には、特許の取得数などに大きな差が生じているが、こうした差を連携して埋めることで、日中で大きな産業チェーンが構築できるとした。

上海鋭品投資管理諮詢総経理の黄紹軍氏
漢王薬業チーフエンジニアの田慧玲氏

 同セミナーは、オークラガーデンホテル上海(花園飯店上海)をメイン会場として開催され、100人を超える関係者が集まった。また、セミナーの様子は同時刻に中国語と日本語の両言語でオンライン配信も行った。

メイン会場となったオークラガーデンホテル上海には100人以上の関係者が集まった

 デジタル経済への移行を加速させ、低炭素社会実現に向けたロードマップ作りにも積極的に取り組む中国政府や中国企業は何を考え、日本企業に何を期待しているのか。日経BP総合研究所では、中国の都市ごとの産業構造や発展計画に基づいたより効果的、効率的な日本企業との産業協力実現に向け、情報提供活動とビジネス機会を提供している。具体的には、本セミナーのようなイベントをはじめとするさまざまな手法で情報提供を行っている。世界情勢の急変で中国の日本企業への期待も変化している。中国への進出、事業拡大を計画中の日本企業の方には、今後も有益な情報の提供を継続していくので、ご注目いただきたい。

日経BP総合研究所では、中国企業とのマッチングや、中国国内での情報発信などのご相談も承っております。ご興味のある方は下記のお問い合わせフォームからご連絡ください。