中国・地方政府(開発区)の日系企業誘致熱は、今のところ冷める気配はない。米中関係悪化に伴う、産業サプライチェーン寸断のリスク。このリスク回避のためにも、中国にとって日系企業の重要性は増している。

 日経BP 総合研究所や日経BP 中国社(上海市)には、中国・地方政府などから「日系企業の誘致活動を手伝ってほしい」という要請が数多く寄せられる。具体的には誘致説明会(セミナー)の企画協力だ。講演プログラムを組み、関心のありそうな日系企業に告知するものである。

 ただし、少し難しい。“日本流”が通じづらいのだ。日本流の企業誘致といえば、その都市の産業発展の歴史や経緯、気候・風土、人口構成など様々な要素を考えて、その都市に適した産業や企業を呼び込むことに注力する。誘致説明会のプログラム企画でも、できるだけ地域特性を考えて提案するのが日本流だ。

 ところが中国では、国土が東西南北に桁違いに広いにもかかわらず、誘致したい産業がほぼ同じなのである。「半導体」「5G」「水素」「AI(人工知能)」「バイオ」「スマート製造」……。さらには「炭中和」「新基建」など、中国政府が打ち出す産業振興の新しいキーワードにも敏感に反応する。全国的にこれらのキーワードに沿った企業誘致の獲得合戦が激化しているのだ。

 それはそれで、中国的には理にかなっている。何しろ競争社会の中国だけに、地方政府もまた同じである。

 しかし、一方で、中国への進出や再投資を検討している日系企業にとっては、都市の選択肢が多すぎる。もちろん、投資優遇策を競争してもらい、有利な条件を引き出すのも一手だが、目先の有利さだけでは、なかなか投資に踏み切れないのも確かだろう。果たして、その都市は自社の産業に関連したサプライチェーンの将来性はどうか、自社の産業発展に適した人材を獲得し続けられるのか、等々、心配は尽きない。

 そこで、日経BP 総合研究所や日経BP 中国社は、地方政府(開発区)などに対して、「地域の特性や産業発展の将来像をもっと打ち出しましょう」と提案しはじめている。例えば、今年4月に上海で開催した、浙江省・嘉興市の投資説明会。ここでのテーマを「食品産業」に絞った。嘉興市は、上海や杭州、蘇州といった大都市から高速鉄道で30分程度。巨大消費地の近くというロジスティクス面での有利さもあって、中国ローカルメーカーはもちろん、世界的な食品企業が集まりつつある。一方で、日系食品メーカーの進出事例は少なく、食品産業の都市というイメージも日系企業には浸透していない。

 そこで、中国に既に進出している日系の食品関連企業を集めた説明会を開くことを提案、嘉興側も賛同してくれた。規模は30人程度と、通常の投資説明会よりも小さいが、小規模だからこそ交流しやすいという利点を訴えた。説明会の名称も「嘉興未来会」と名付け、勉強会的な要素を強めることにした。4月に開催した上海での説明会では、嘉興市による投資環境の説明のほか、中国の食品産業の将来について詳しいコンサルタントが食品産業の未来を解説。また、食品関連の公的研究機関の所長による講演や、実際に嘉興に進出した世界的な食品メーカーの幹部も登壇し、嘉興に拠点を設けた狙いなどを語ってもらった。

4月に上海で開催した「嘉興未来会」の様子

 参加した日系企業からは、「これまでいろいろな投資説明会に参加してきたが、これほどまでに具体的な話が聞けて、身近に交流できる会はあまりなかった。とても有意義だった」との声が多く聞かれ、嘉興市側の評価も高かった。この未来会は、中国国内で年に4回開催し、それぞれテーマを絞ることにしている。次回は7月に北京で「ものづくりイノベーションの新潮流」を計画している。

 嘉興市のように、地域の産業特性をもっと訴えていくことが、日系企業の関心の高さにつながる、という認識は徐々にだが広まりつつある。

日経BP 総合研究所や日経BP 中国社では、こうした中国の地方政府のニーズを顕在化させるサービスを行っています。また、中国に進出を検討している日本企業に向けて、自社にとってふさわしい都市を決めるうえで参考となる調査なども行っています。ご興味のある方は下記のお問い合わせフォームからご連絡ください。