2020年、中国ディスプレー産業の売上高は世界の40.3%を占め、産業規模は世界一になった。液晶ディスプレーの産業化は日本で始まり、OLEDディスプレーの産業化は韓国で始まった。中国は先頭を走るようになり、今後は市場開拓という責を負う。DXの進展に伴い、自動車エレクトロニクス、遠隔医療、インダストリアルコントロールシステムなどの分野の成長が期待され、マンマシンインタフェースデバイスとしてのディスプレーには大きなチャンスが広がる。同時に中国では産業全体の自国内完結を目指しており、ドイツ企業などは工場だけではなく研究開発機能の現地化を加速させている。(日経BP 総合研究所)

 2020年の中国新型ディスプレー産業の直接的な売上高は4460億元(1元は約17.1円)に達し、世界の40.3%を占め、産業規模は世界一になった。現在、中国大陸部には第6世代以降のパネル生産ラインが35本あり、投資額は1兆2400億元、生産能力は2億2200万平方メートルに達した。

 20年近い発展期を経て、中国のディスプレー産業は他国に追いつき追い越そうとしていたのが、先頭を走るようになり、逆転を果たした。しかし将来に目を向けてみると、中国のディスプレー産業の目の前に横たわる試練はより大きくなっている。

新製品が登場

 中国の新型ディスプレー産業の規模は世界1位だ。中国は8K超高精細、ナローフレーム、フルスクリーン、折りたたみ式ディスプレー、透明ディスプレーなど、複数のイノベーション製品を世界で初めて発表した。現地化された関連技術の水準が目に見えて向上したと同時に、世界の産業チェーンの企業との協力・ウィンウィン関係も築きつつある。こうした中、18日に安徽省合肥市で閉幕した2021年世界ディスプレー産業大会で、中国ディスプレー産業の発展の鼓動が改めて世界中の目を釘付けにした。この大会で、多くの新製品や新たな応用が集中的に発表された。たとえば5メートルのワイドLEDディスプレーは、前に立つと没入式のバーチャル体験ができる。裸眼3D大型ディスプレーは、画面の中の宇宙船がまるで今にも飛び出してきそうだ。8.03インチのフレキシブルアモールドディスプレーは、携帯電話のディスプレーの表示サイズを6-8インチの間で自由に切り替えられる。マイクロLEDディスプレーシステムの応用は、XR(仮想世界と現実世界を融合させる技術)眼鏡をますます身近なものにしている。

「自国製ディスプレー不足時代」に別れを告げ、中国のディスプレー産業が世界の先頭グループに躍進

 過去20年間、中国の電子情報産業には2つの悩みがあった。それは「自国製チップ不足」と「自国製ディスプレー不足」。チップ産業とディスプレー産業が苦境に直面していたことを指している。中国科学院の欧陽鍾燦院士をはじめとする専門家たちも、ディスプレー産業がかつて直面した困難を直接経験してきた。欧陽氏はかつてを思い出して、「中国初の大型ディスプレー製造ラインが完成するまで、海外企業は中国市場でディスプレー価格をつり上げていた。それでも大勢の消費者が争うように海外製品を購入していた。当時は32インチのディスプレーが1千ドル(1ドルは約110.9円)から2千ドル以上ということもあった」と述べた。

 工業・情報化部(省)がまとめたデータでは、第13次五カ年計画(2016-2020年)期間に、中国のディスプレー生産ラインの建設に計8千億元が投入され、20年末の時点で、生産能力は15年末に比べて140.9%増加した。20年の大陸部ディスプレー産業の年間複合成長率は22.1%に達し、TFT液晶とLCD(液晶ディスプレー)を中心としたディスプレーの出荷面積は1億3200万平方メートルに到達した。

 新型コロナウイルス感染症の流行中にも、ディスプレー産業は流れに逆らって上昇し発展する勢いを見せた。同部電子情報司(局)の喬躍山司長は、「感染症がオンライン会議や遠隔教育、自宅でのエンターテインメントの世界的なニーズを全面的に押し上げた。世界のディスプレー出荷面積がさらに増加し、フレキシブルディスプレーや折りたためるディスプレーなどの製品の市場への投入が加速した」と述べた。

中国産ディスプレーが世界のディスプレー産業にチャンスもたらす

 欧陽氏は今年の世界ディスプレー産業大会で、「世界のディスプレー産業の規模は1千億ドルを超え、中国は世界のディスプレー産業の発展における中堅パワーになった。中国の有機ELディスプレー(OLED)、LCDの産業規模は世界一で、OLEDとマイクロLEDなどの新型ディスプレーが勢いよく発展し、世界のディスプレー端末応用の形態を拡大・発展させ、より広大な新市場を切り開きつつある」と述べた。

 同大会に参加した世界的ディスプレー企業や、産業チェーンの川上から川下に至る企業の交流・情報共有の中から、中国のディスプレー産業の日進月歩の進展が世界のディスプレー産業にチャンスをもたらしていることがうかがえた。

 ドイツのメルク社の取締役会メンバーであるメルクエレクトロニクス・ビジネスセクターのカイ・ベックマン最高経営責任者(CEO)は同大会の開幕式であいさつし、「ここ数年で、当社の累計投資額は10億元に迫り、中国市場での研究開発、テスト、生産能力の開拓・増強を進めてきた」と述べた。

 昨年11月、中国国際輸入博覧会の会期中、メルク社は1億4千万元を投入してメルク電子科学技術中国センターを設立した。中国初のOLED材料を生産する新工場の建設も急ピッチで進めており、来年に生産をスタートする予定だ。

 「現地化」と「研究開発の重視」が、多くの国際的企業にとって、中国のディスプレー産業高度化の大きな流れの中のキーワードになった。

 独ヒュティンガ社の社長は、「中国のディスプレー産業は持続的に発展しており、当社も中国での現地化した発展をより重視している。現在、顧客と市場のニーズにより近づき、これに基づいて研究開発チームと製品の更新をペースアップしようとしている。ここ数年、中国では一連のディスプレー産業関連企業が誕生し、当社に学びと発展の機会を与えてくれた」と述べた。

川上に配置し、短所を補う

 半導体分野がディスプレー産業に与える影響が非常に重視され、材料設備分野が発展のまたとないチャンスを迎えている。

 ディスプレー産業の川上の関連プロジェクトが投資の注目点になった。大まかな統計によれば、この1年間に建設が計画されたか建設中の川上関連生産プロジェクトは20件近くあり、投資総額は300億元を超えた。このうちガラス基板分野の投資が多く、61%を占めた。

 寧波杉杉股份有限公司は、7億7千万ドルを投じて韓国のLG化学傘下の偏光板事業と関連資産を買収。また、中国国内のフラットパネルディスプレー産業の持続的成長という状況を踏まえ、その子会社である杉金光電技術(張家港)有限公司が張家港経済技術開発区(江蘇省)に投資し、LCD用偏光板生産ラインを2本建設した。計画では生産能力が年間約4千万平方メートル、固定資産投資額は約21億8700万元に上り、生産規模の拡大を目指すとしている。

 産業チェーンとサプライチェーンの安定と最適化をはかるため、20年には中国の現地化関連技術の水準が目に見えて向上し、鍵となる材料の国内調達率が54%に達し、ディスプレー装置は非中核的分野から中核的分野へと拡大・発展を続け、一部の中核的装備ではブレークスルーを達成した。

 産業チェーン・サプライチェーン構築の重要性がますます顕在化するにつれ、今後は材料と装備などのハード部分が大きく発展するだけでなく、投融資プラットフォーム、業界団体、研究機関といったソフト部分も発展していくとみられる。

 現在、新型ディスプレー製品と5G通信、超高精細動画、人工知能(AI)、仮想現実(VR)、モノのインターネット(IoT)などの新しい産業が融合とイノベーションを加速させ、自動車エレクトロニクス、遠隔医療、インダストリアルコントロールシステムなどの分野が大きな成果を上げており、産業成長の新たな原動力を形成した。

将来のディスプレー産業はどこへ向かうのか?

 中国のディスプレー産業はすでに世界トップクラスの仲間入りを果たしたが、欧陽氏は「どうやってトップクラスの優位性を保つか」というこれからの問題により関心を寄せる。「液晶ディスプレー技術の産業化は日本で始まり、OLEDディスプレー技術の産業化は韓国で始まった。私たちには、より先進的なディスプレー技術、たとえばマイクロLEDなどは中国で初めて産業化が実現する可能性があると確信する十分な理由がある」としている。

 華南理工大学の彭俊彪教授は、「将来のディスプレー技術がどこへ向かうのか、私たちも非常に興味がある。産業の高度化に伴い、大面積、軽量、薄型、フレキシブル、低コストを特徴とした印刷方式のディスプレーが発展しつつあり、特に量子ドット材料に基づいた高性能の印刷方式のディスプレーに注目が集まっている」と述べた。

 技術イノベーションの方向性はさまざまだが、実現に至るのは決して簡単なことではない。欧陽氏は、「液晶ディスプレーの分野で、中国はより多くの技術・製品のイノベーションをはかり、優位を保つ必要がある。OLEDとフレキシブルディスプレーについては、技術イノベーションにおける企業の主体的地位を強化し、産業チェーンの川上・川中・川下、大手企業・中小企業の融合とイノベーションを推進し、できるだけ早く独自かつ安全に制御可能な産業チェーンを構築しなければならない」とした。

 起業家の張徳強氏は、中国のディスプレー産業が弱者から強者に変わり、小規模から大規模へと発展する過程を身をもって体験してきた。張氏によると、「企業クラスターがなければ、産業を強くすることはできない。全産業チェーンが一丸となって協力しなければ、ディスプレー産業がより高いレベルへ発展するよう着実に後押しすることはできない。維信諾公司は目下、清華大学と協力して第4世代TAFS材料を開発中で、さらに川上の原材料メーカーや設備メーカー、川下のディスプレー企業などと協同協力を進める」としている。

 中国光学光電子業界協会液晶分科会の梁新清常務副理事長は、「目下のディスプレー産業の基礎研究のペースと産業発展のペースは釣り合いが取れていない。鍵となる装備や材料など基礎工業が弱いという問題に対して、産学研協力を強化し、協同イノベーションを誘導し、能力のある企業が重点的に難関を攻略してブレークスルーを達成するよう組織・支援し、産業チェーンの配置をさらに整備することが必要だ。また産業を大きく強くすると同時に、発展プランをしっかり策定して、無秩序な競争に陥るのを避ける必要もある」と述べた。(出所:人民網日本語版)