今年の「618商戦」では、宅配業界の「物流クライシス」がほぼ発生せず、「前の晩に注文すれば、今日の朝届く」のが普通だったと人民日報が伝えた。618商戦は、中国ネット企業の最大手である京東商城(JD.com/ジンドン)が毎年開催する中国最大のECセールのひとつ。アリババが11月11日に開催する「ダブルイレブン(独身の日)」と双璧を成すもので、セール期間が6月1日から同18日までと長いのが特徴。今年の宅配便件数は65億9千万件を超え、1日の最高処理数は4億件を超えたという。背景にはデジタル技術を駆使するスマート物流がある。ダブルイレブンが基本的にはアリババ単体で開催されるのに対し、618商戦には他社のECサイトが続々参入している。スマート物流が、中国全土に行き渡ったことを象徴する出来ごとだったと言えそうだ。(日経BP 総合研究所)

 全国宅配業界の宅配便取扱件数は65億9千万件を超え、1日あたりの最高処理件数は4億件を超えた――今年の年に一度のショッピングイベント「618」で、再び消費ラッシュが起こった。大勢の消費者が気づいてうれしく思ったのは、以前のような注文件数の急増による宅配業界の「物流クライシス」が今回はほぼ発生せず、「前の晩に注文すれば、今日の朝届く」のが普通になったことだった。人民日報が伝えた。

 宅配便の処理件数は膨大だが、一体どうやって迅速に送り届けているのだろうか。その背後では、スマート物流の役割が欠かせない。

複数の段階が徐々にスマート化を実現

 いわゆるスマート物流とは、一連のスマート化技術を利用して、物流システムが人の知能を模倣し、思考、感知、学習、推理、判断能力をもち、物流の中で生じた一部の問題を自ら解決する力を備えるようにしたものだ。

 中国科学院微電子研究所の研究員で中科微至智能製造科技江蘇股份有限公司の代表を務める李功燕氏は、「簡単に言えば、スマート物流とはスマート化された設備とシステムを利用して、人の手に代わり物流サイクルの各段階を完了させるものだ」と述べた。

 ここ数年、人工知能(AI)、ビッグデータ、クラウドコンピューティング、モノのインターネット(IoT)などの技術が発展するにつれ、物流業界の複数の段階も徐々にスマート化を実現している。

 李氏は、「スマート仕分けシステムの画像高速識別技術は、1秒間に100以上のバーコードを識別することができ、センシング、処理、コントロールなど一連の先進的スマート技術と結びつけ、梱包された物品を指定されたエリアまで輸送し、物品の正確な仕分けを実現できる」と説明した。

 李氏の研究チームが開発した最新のスマート物流仕分けシステムでは、1時間に処理できる荷物は平均で10数万個に達し、1つのシステムで人による作業の70%以上をカットできるという。

 物流業界がスマート化発展を遂げれば、消費者のオンラインショッピング体験を向上させられるだけでなく、生産と生活にさまざまな便利さをもたらすことができる。

 浙江省の慈渓浜海経済開発区にある公牛集団のスマート倉庫では、4人で1つのシフトを組み、荷物1万2千個を仕分けしていた。一方で、従来の方法では同じ量をこなすのに20人の人手が必要だった。

 公牛のスマート物流業務の関係責任者は、「元々、1日の作業で発送できる荷物の量は3千個から4千個にとどまり、この量を超えると翌日に持ち越さなければならず、一月あたりのエラー回数は20-30回だった。スマート物流が導入されると、最大で1日に6万個を発送できるようになり、エラー回数が一年あたり1-2回に下がった」と述べた。

 民用航空の空港では、スマート荷物仕分けマシンが、荷物の預かり、輸送、仕分け、引き取りなど一連のプロセスの無人化を自律的に行い、空港の作業効率を最大限に高めた。

 スマート物流は効率を高めただけでなく、コストを大幅に引き下げ、安全保障面も増強した。

次世代情報技術を深く応用

 湖北省にある京東アジア1号武漢物流パークの最新の次世代スマートコントロールシステムは、この巨大な物流センターのスマートブレーンだ。0.2秒間に、ロボット300体以上の運行可能なルートを680億通り計算するとともに、最良のルートを選択することができる。仕分けスマート輸送ロボットシステム「小紅人」はスマートブレーンの調整の下、どんなに忙しくても車にぶつかったり、「小紅人」同士がぶつかったりせず、「渋滞」に遭遇すると自動的に運行ルートを再設定し、バッテリーがなくなると自動的に充電スポットに戻って自分で充電する。

 こうした場面は中国国内の各種物流業界でますます多く見られるようになった。センサーと識別、ビッグデータ、AI、位置情報システムなど複数の先進的技術に支えられて、スマート物流が物流業界と人々の生産や暮らしにかつてないほど大きな変化をもたらした。

 李氏は、「スマート物流は戦略的新興技術に対して、特に次世代情報技術の応用に対して、広さと深さという点で多くの人の想像を超えている」と述べた。

 ここ数年、ビッグデータ、IoT、クラウドコンピューティング、ロボット、ブロックチェーンなどの新技術が物流を駆動し、モジュール化、自動化、情報化の方向へ持続的かつ急速に変化させた。

 京東物流スマートパークイノベーション責任者の者文明氏によると、こうした新技術が駆動する物流の変化の結果は、主に次の3点に表れている。1つ目は感応で、物流シーンを全体的にデジタル化した。2つ目は相互接続で、サプライチェーン全体の中のすべての要素を相互に接続した。3つ目はスマートで、サプライチェーンに関する決定がより自主的でスマートになるという。

 専門家は、「自動化技術とスマート化技術が物流の作業効率を高め、コストを引き下げることが、スマート物流がより大規模に応用されるようになった主な要因だ。このほか新興技術が物流シーンとどうやって十分に融合するか、物流がどうやって最先端の科学技術の最良の応用シーンになるかも、中国の物流産業が努力を続けるべき方向性だ」との見方を示した。

スマート物流の市場規模が急増

 専門家の説明では、スマート物流は20世紀中頃にスタートし、数十年の発展期間を経て、専門化、技術化、情報化のレベルが日に日に上昇しているという。

 先進国は産業発展の時期が早かったため、スマート物流分野で一定の優位性を備える。世界トップクラスのスマート物流設備企業の多くは欧州、米国、日本などの先進国に分布し、たとえば日本のダイフク、米国のSSIシェーファー、ドイツのビューマグループ、オランダのファンダーランデなどがある。

 中国のスマート物流はスタートが遅かったが、発展ペースは非常に速い。ここ数年は、市場規模が階段式の成長を遂げ、2020年は5千億元(1元は約17.1円)を突破した。同時に、AIやビッグデータなどの次世代情報技術に依拠して、後発組の中国の物流技術・設備が先発組に追いつき追い越す可能性は非常に高い。

 スマート物流の発展は社会全体の物流効率の向上をサポートし、物流コストを節約することができる。中国物流・調達連合会がこのほど発表したデータ報告では、25年にはスマート物流により毎年1兆元に上る物流コストが節約できるという。

 前出の者氏は、「新技術、新スタイル、新業態が次々登場するのに伴い、物流業界とインターネットが深く融合し、スマート物流は徐々に物流業界の発展を推進する主要な原動力と主要なルートになり、また経済構造の最適化・レベルアップ、質と効率の向上に極めて強い原動力を注入することになるだろう」と述べた。(出所:人民網日本語版)