市場の概要
・昼の短時間仮眠で仕事の効率アップ
・質のいい睡眠が認知症リスクを減らす

攻略のポイント
・仮眠をとる昼寝デバイス
・仮眠スペースなど環境改善

 スリープマネジメントについて間違いなく拡大するのが、夜のための新市場に加えて、昼に利用される仮眠の市場だ。米国では積極的な短時間の仮眠をNAPと呼んでいる。

 米国スタンフォード大学などの研究で、6日間連続5時間睡眠の睡眠不足による眠気と注意力の欠如を45分間のNAPで一時的ではあるが回復させられることが2017年に報告されている。

 積極的な仮眠をとるための昼寝機器も開発されている。昼寝の質を高めるテクノロジーがさらに見つかり、昼の仮眠を許す環境がオフィスに整えば、生産性改善には期待大だ。

 スリープマネジメントは経済効率の改善だけを目指すものではない。働き手のQoLの面からも、それを企業が意識する健康経営の面からも、睡眠の質が見直されつつある。

 ここ10年ほどで睡眠中に脳が行っている新たな働きが続々と見つかってきたことが背景にある。

 まず、十分な睡眠はメンタルヘルスに不可欠だ。カリフォルニア大学バークレー校と東京医科歯科大学の共同研究では、夢をみるとされるREM睡眠の前後の感情比較をした結果、「恐れ」「悲しみ」「怒り」「幸福」の四感情のうち、「恐れ」「悲しみ」は著しく減少し、「幸福」が著しく高まることが分かった。この結果は夜の睡眠ではなく90分間の昼寝から分析された。

 人生100年時代といわれる現在、睡眠は脳の生涯の健康とも密接な関係がある。就寝時間中にぐっすり眠り続ける睡眠の質が高い人はアルツハイマー型認知症の原因物質であるアミロイドβの脳内蓄積の割合が低い。断眠がある睡眠の質が低い人はアミロイドβの脳内蓄積が多い。こうしたことがワシントン大学などの研究で明らかになった。

 英国ロチェスター大学の別の研究で睡眠中は脳の神経細胞に栄養を補給するグリア細胞が収縮し、アミロイドβなどの脳の老廃物を排泄していることが分かった。マウスを使って断眠の実験をしたところアミロイドβの排出が阻害されたという。

 睡眠の質をセンシングすることが、認知症リスクが高い人を見つけることにつながるともいえる。睡眠の質の改善が認知症の予防につながる可能性もある。記憶の定着、免疫力の向上、血圧の安定にも睡眠は寄与する。学習した記憶は睡眠中に短期記憶から長期記憶に変換される。学習後、早く眠ったほうが記憶の定着率は高い。

 かぜの引きやすさで比較すると、睡眠が十分な状態に対して、6時間未満で4.2倍、5時間未満の睡眠不足で4.5倍かぜをひく率が高くなる。さらに睡眠不足があると肥満や高血圧のリスクが高まる。特に60歳未満の人では、睡眠時間と肥満、高血圧の相関関係が高くなる。